見出し画像

世界はなぜ地獄になるのか

先日職場で雑談していた際にジェンダーと性自認がわかりにくいという話を聞いてモヤっと感じ、ほぼ同じタイミングで本書『世界はなぜ地獄になるのか』を知り、読み終えました。

あとがきを入れても280ページにいかない上、初版が昨年2023年。内容自体も記憶に新しい事例を挙げているので、スラスラと読めるものでした。

タイトルからして絶望感があるけれど、事実から導き出される人間の行動(国や地域性の違い等含め)を解説し、それがどうして今のような世の中になったのか?理解し合えない人がいるのは何故か?そんな彼らはどう感じ世界を見ているのか?等も広い意味で説明している本書。

差別として一般的に分かりやすい人種差別が主として挙げられているし、欧米社会を例に挙げていることもあって、白人と黒人間による差別に対するお互いの主張や認識、トランプ氏が大統領に当選した背景なども薄らと理解でき、かなり面白かったです。

また一女性として身近な事例だと、トランスジェンダーに対しての課題でした。作家のJ.K.ローリング氏が愚かにも地雷を踏んでしまった件は記憶にも新しいし、トランスジェンダー移行した選手についての競技での対応をどうするか問題も見聞きしていました。それに加えて、日本で公共トイレ(や更衣室、公衆浴場等)を男女で分ける事に対してトランスジェンダーの方々が体か心かのどちらで使用するのかという議論が色々な場所で声が上がっています。
正直、小学生の頃から痴漢や変質者、変態に遭遇していた身としては体が男のままであるのなら、公共の場を使用するのは体で判断して欲しいの一択です。そもそも心が女性だと主張するのなら、女性の身体である以上力では敵わず、抵抗すると傷つけられるかもしれないという恐怖感は想像して欲しいものです。

トランスジェンダー問題について著者の指摘3点の内、モヤッとした1点を抜粋

異性愛者の男がジェンダー移行することで女性の脅威になるとの一部のラディカルフェミニストの主張は、すべての男が性犯罪者だという前提に立っている。当然の事ながら、ほとんどの男性は性暴力など犯さない。これはジェンダー移行した男性も同じだ。

確かに著者の書かれているようにほとんどの男性は性暴力(この方の言われる性暴力が具体的に何を指しているのかは不明ですが)など犯さないのかもしれません。それでも、この日本で暮らしてきた女性の7〜8割は痴漢等の性暴力には遭っていると思います。そして、トイレや公衆浴場で女性側は無防備な状態となります。そんな中で心は女と主張しつつ、体が男である人が入ってこられたら、警戒や不安を感じるのは当然ではないでしょうか?

そんなわけで、著者の指摘がいかにも男性目線だな…と感じた次第です。

さて、冒頭の話に戻りまして、わかりにくいと言われた方はジェンダーの区分けと性自認とを同一視されていたようで、そこの理解が薄く混乱されていたものの、「人に嫌なことをしなければいいんだよね」という締めをされました。
そう発言された人は男性で離婚歴のある方。男性+異性愛者というマジョリティのため、マイノリティ側の本質的な理解は難しいように思えます。実際はバイセクシャルやゲイであるかもしれないので、決めつけはしたくないもののご自身がマジョリティに傾倒しているのは確かでしょう。
彼が締めの発言をした際には「嫌な事の感じ方は人それぞれなので、そこが難しいですよね」と周りの人に返され、そこで話題は変わっていきました。

これを聞いた時の双方に対するモヤモヤの一部は本書の中で著者が書いてくれていました。

「リベラル」(=それぞれが自分らしく生きたいという価値観)が広まった世界では、格差が拡大し、社会が複雑化し生きづらくなっている

本書では現在の世界がどのような問題・課題が根本にあるのかを知る導入の一冊としては良いと思います。解決策らしいものがないのは残念ですが、それだけ世界が複雑化してしまったという事でしょう。それでも、地獄と天国が一体してしまったこの世界では事実を知り理解することでうまく対応するのが一番の近道かもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?