かつて学生インターンとしてホワイトハウスに入り、JFKの寵愛を受けたある女性の手記。
「アメリカ人のメモワール面白過ぎ…」と驚愕した1冊。
彼女は、自分が歴史の一部をなしているとは到底思わない、注釈の注釈でしかない、と言っているけれど、JFKと、当時のジョージタウンの空気を知るのに彼女の証言はとても価値がある。
何しろ、彼女自身が書いているように、「JFKは人間関係を厳密に分けていた。彼の全てを把握している人はいなかった」のだから。
キューバ危機の夜とか、彼の側近たちのあり方などはとてもスリリング。
ミミさんは一度もジャッキーに会ったことがない、というのもすごい話だ。
(彼女たちは同窓生という共通点があった)
ミミさんがJFKを受け入れたときの気持ちは素直で、とても共感できる。
ただ、彼がいかに女性を人間と思っていなかったかがありありと分かる箇所がいくつかあり、(JFKは一切避妊をせず、妊娠の可能性があったときはすぐに当時違法の堕胎の院が手配されたとか、目の前で側近に口で奉仕するように指示されたとか...)そりゃ天罰もくだるわ、逝ってヨシと思ってしまった。
神さまはミミさんには平安を与えてくれたが、そこまでの道のりがいかに苦しかったか、彼女は率直に書いている。
墓まで持って行かれるはずだった秘密は、結婚式の直前、JFKの暗殺に動揺して夫に知られてしまう。
あまりにドラマチックすぎない?こんなことあり得る?
<中略、こんな状況でふたりはトニーの実家へ。義理の家族と過ごし、テレビで大統領暗殺の瞬間を見ることに...>
ミミさんだけでなく、夫のトミー氏もどれだけつらかったことか。
当時、JFKを前に劣等感を感じない男なんていなかっただろう。しかもその時代に、妻が自分と同時期に別の関係ももっていた、というのは。
よく26年間も我慢したよ、トミー氏。
ミミさんは老齢になってやっと与えられた愛し合える伴侶とともにアーリントンを訪れ、JFKの墓石に告げる。
「ありがとう」と。
有名人も含めおびただしい数のガールフレンドがいたJFKだけれど、それでもミミさんは「選ばれた」のだと思う。
それにしても、これほどうまく遊び散らした大統領はちょっといないよね。
邦訳はこちら。邦題ヒドイ。
しかもどっちかって言うと「愛の奴隷」じゃなくて「性の奴隷」のほうが内容に近い。逆に原題の美しすぎることよ。