見出し画像

四つ葉のクローバー|ケニー

なつのある日、
息子と公園へカブトムシを探しに行った。
僕はピクニック程度の感覚で公園内を歩きながら、
木の樹液を探し、周辺を見渡したり、
時々がんばって小枝で根元を掘り返したりして、
カブトムシとの遭遇を待っていた。

午前中といってももう陽が高く上がっていて、
ただでさえ活動時間ではない上に、
そこら中で虫捕り親子が血眼になって探している中、
ピクニック感覚の僕の前にカブトムシが現れる確率はきっと高くなかっただろう。

当然のように時間だけが過ぎていき、
(ついでに蚊にめっちゃ刺され)
お昼近くになってきたので

パ「ゆうしーん!カブトいないみたいだからそろそろ帰ろうぜー!」

ゆ「えー、やだよー」

パ「だめ、お昼ご飯食べなきゃ!帰るよー!」

ゆ「えぇー、まだカブトムシみつけてないのにー。。あ、ちょっとまって!」

ゆ「四つ葉だ!四つ葉のクローバーがあったよー!!」

パ「ほんとだ!よかったじゃん!願いがかなうよ!」

ゆ「え?なんで?」

パ「四つ葉のクローバーみつけると願いがかなうらしいよ」

ゆ「ホント!?やったー!カブト手に入るね!」

ゆ「ねぇいつ?いつ?」

パ「いつ、、なんだろうねぇ。。近いうち、、とかなのかね汗」

ゆ「今日がいい!今日!ぜったい今日!うっれしいなぁー!カブトムシだー!」

モードに入ると手が付けられなくなるタイプなので
仕方なく午後にもう一度探しに行くことを約束し、
一旦お昼を食べに自宅に帰った。

家に帰り食事をしながらぼんやりと考える僕。
(・・・甘かった。半袖半ズボン、武器は虫あみと小枝。・・・確率を高めないと)

パ「ゆうしん!本気モードでいくよ!気合い入れろよ!」

ゆ「うんっっ!」

地図で近所の林をいくつかピックアップし、
虫に刺されないようにGパンに長袖のジャケットを羽織り、
虫除けやスコップをカバンに詰め込み
ポイントを移動しやすいように自転車に乗って出発。

パ「今度こそ必ずみつけるぞ!」

ゆ「みつけるぞー!」

1つ目の林に辿り着き、虫除けスプレーを振りかけると
林の中に入って、一本いっぽん木のくぼみや根を探す。
(・・・いない)

パ「次のポイントを目指すぞー!」

ゆ「おー!」

自転車で移動し2つ目の林に到着
同じようにカブトムシを探していく。

パ「カナブンいたよ!」

ゆ「カナブンはいらないー」

パ「カブトは、ここもいないね。次行こう!」

ゆ「うん!」

探しておいたポイントは5ヶ所。
3つ目の林も4つ目の林も結局みつからなかった。

パ「・・・よし、次行こう!」

ゆ「…うん」

最後のポイントに向かって自転車を漕いでいると、
いつのまにか陽が傾き始めていた。
ゆうしんはボソっと言った。

ゆ「なんか、カブトムシみつからない気がしてきた」

パ「・・・」

ゆ「四つ葉のクローバーなんて、、みつけても意味なかったよ」

パ「・・・」

パ「諦めちゃだめだよ。次のところでみつかるかもしれないから!」

ゆ「…うん」

最後の林に到着し、祈りながらそれぞれカブトムシを探し始めた。
(うわ〜、違う謎の虫はいるんだけど、、、カブトいないかなぁ)

これまでと同様カブトムシは見当たらない。
(ここまでかー、、、ホームセンターとかに売ってるときあるから買いにいくしかないか、、、)

諦めかけてたその時、
(ブーッ、ブーッ、ブーッ)
ママから着信。出てみると、

マ「もしもし!今大丈夫??」

パ「大丈夫だよー」

マ「なんかインターホンが鳴ったんだけど、モニターに顔が映ってないから怖くて出なかったんだけど、、、」

パ「え!?怖いね!」

マ「しばらくしたら玄関先でガサガサ何かをいじってて、、、」

パ「何それ!今は大丈夫!?超怖いね!!」

マ「うん、大丈夫なんだけど、おさまってしばらくしてから外のぞいてみたら、玄関の前に置いてた虫かごに誰かカブトムシを入れていったみたいなの」

パ「カブトムシ?誰だろう?すぐ戻るね!!」

電話を切ると近くに来ていたゆうしんに、

パ「家にカブトムシが届いたんだって!戻ってみよう!」

ゆ「え?だれから?」

パ「それが、、よくわかんないの!苦笑」

ゆ「もどってみる!!」

急いで家に帰ると、
確かに家の前の虫かごに、
カブトムシのオスとメスが一匹ずつスイカと一緒に入っていた。

ゆ「うわぁ!やったー!」

パ「なんかよくわからんけど、願いがかなったね!四つ葉のクローバーってやっぱすごいね!」

(もらっていいのか?ちょっと怖いけど。。。)

このあと、HANNIN(悪い人じゃないからかっこよくローマ字にしてみた)が訪ねてきてくれたので種明かしをすると、
2年前、家の前で子どもたちと遊んでいるときに、おじいちゃんが通りかかり、畑で見つけたというカブトムシをくれたということがあった。
その時ゆうしんがとても喜んでいたことを覚えてくれていて、
またカブトムシをみつけたので、
「あそこの男の子が虫好きだったな」
と持ってきてくれたのだそうだ。

なにわともあれ、ゆうしんが喜んでくれてよかった。
気持ちのいいくらい四つ葉のクローバーが力を発揮してくれた
というお話のお裾分けでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?