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詩集 死に向かう二十歳のうた

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自分の死の供養のため
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#言葉

詩 『死に向かう二十歳のうた』 5

「夜に爪を切ったら親の死に目に遭えない。」 そう言われて育ってきた。 私は親の死に目になんて遭いたくない。 親は自分のこの世からの旅立ちを我が子に見てもらいたいものなのだろうか。 私は誰の死に目も見たくないし 私の死に目は誰にも見られたくない。 誰かをこの世から見届けるなんて そんな崇高なこと私にはできない。 どんな綺麗な涙も感謝の言葉もあげられない。 私はいつもそうだ。 大切な言葉は私の口からは出てこない。 暗いバスタブの底に沈んだかのような空気の中に