「流浪の月」を薦めた自分は

「好きな本は何?」と聞かれた
久しぶりの帰りの電車 その人とは並んで座っていた
その人が最近読んで面白かった本を薦めてくれたあとだった

「流浪の月。」
と薦めてから、確か好きな空気感だった覚えがあったのに、性暴力の話もあった気がしてそのあとに内容紹介の言葉が続かなかった。

「…バニラアイスが食べたくなるよ」
とだけ覚えている限り付け足しておいた。
反応からしてあまり興味を引く紹介じゃなかったと思う

その人はすぐに読むのだろうか
Amazonのチェックリストにだけ入れていた
たくさんのジャンルの本を読む人だからまぁ忘れられるかもしれないなとそのときは思った。

うちに帰ってあらためて読み直そうと思った
好きな本ってまるで私ってこんな人、まるで名刺のようじゃないかと親友が言ってたくらいだから。

唯一薦めた本なのだから、その人が私の人間性をその本から読み取るかもしれない。
怖い描写だっただろうか、私の好きだと感じた空気感のところを読みとるだろうか、問題ないだろうか。

少し祈るような気持ちで読み直した。
(そしてこのnoteを書いてる途中にも読み直した)

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やっぱり好きだった。心地よい空気だった
もちろん怖い描写もあったけどそこではないのだ
好きなところをただただ綴ってみる

更紗が自分が帰りたくなると思う人を知る
その人の隣にいるだけでいかに自分が回復するか、
呼吸ができていたのかを知っていく

2人の異なる生活が溶け合うところ
新鮮な驚きを受け取り素直に返す姿を
好奇心の気持ちで追ってしまう
同じ世界をその人の目を通して見てみたいと思う
同じ目線の高さで

否定をしない お世辞も言わない 静かな声
お互いに心に土足に入ることなく見守っている
それが心地よい

バニラアイスにピザ 映画を見て寝過ごしてしまう朝
シロップの入ったコーヒーを飲んで溶けるように眠る夜

一緒ならどこにでも行けると思うところ
文と更紗のお互いにしかわからない絆でずっと続いていけばよいと願いたくなる

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その人はほんの少しだけ文に似ている
少しくたびれたスタンドカラーシャツが似合う

私はその人といるといつもより澄んだ呼吸ができて
隣に帰ってきてここで回復したいなと思えた

なんてことだ
ふっと薦めた本には
その人の隣が居心地がよい理由がたくさん詰まっていた

次会う時までに
読んでほしいような 読んでほしくないような。

他の描写でその人を不安にさせることだってあるかもしれない。いやきっとそう。それならば「バニラアイスの本」でAmazonリストで眠っててもらっても構わない。

でも気になる
あなたは何を読み取るんだろう