2023シナリオ本覚え書き

はじめに

この記事はミズノエが2023年にメメントスモリコーラにて頒布したシナリオ本の装丁まとめです。
特殊装丁をどういう効果を狙って選んだかなどについての覚え書きになります。


『現代異能神話 玉祀三神奇譚』

DX3rdキャンペーンシナリオ/B5/60P/ゲームマーケット2023春

装丁概要
表紙:雲竜紙220kg
遊び紙:越前和紙 雲竜紙 朱
本文紙:コミック紙 クリーム
和綴じ製本
表紙:フルカラー
本文:モノクロ

ミズノエが初めて出したシナリオ本。
玉祀以前から何作か頒布はしていたのですが、今回は本として頒布する想定でいろいろ考えながら制作を進めていきました。
お願いした印刷所はプリントオンさん。初期の段階から和綴じがしたいということが決まっていたのと、表紙に使う紙をシナリオの雰囲気に合わせて和風のものがよかったのとで、印刷所さんはすんなりと決まりました。

裏表紙:シナリオに出てくる3つの神社のマーク。かっこいい。

和綴じする際の紐は色変更が可能で、シナリオのイメージに合わせて遊び紙同様赤にする案もありましたが、実際に昔から引き継がれてきた古書のような雰囲気にしたい、と最終的には着色なしのものにしました。当日会場で実物を見たとき意図通りの本になっていて嬉しかったのを覚えています。

また表紙データを作る際にCMYKに死ぬほど苦しめられたので今後は追加料金払ってでもRGB入稿したい所存……

◆コメント byミズノエ
 玉祀三神奇譚は頒布の事を考え出した瞬間から「和綴じだな」という確信があったように記憶している。今思っても、本を見返しても、「そりゃそうだよな」と思う。初めて出した本だから、とってもお気に入り。
 表紙のデザインとタイトルロゴはミズノエが作成。ほぼ触ったことのないクリスタの、知らない機能を全部無視してポチポチ作った。なんとなく表紙に女の子が並んで可愛い感じになってしまうのが嫌だったため、イラストを担当してもらったシユさんにシルエットも貰い、それを使用(自分で加工したんだっけ?忘れた)。表紙は滅茶苦茶フリー素材にお世話になっている。七宝(丸いデザインの伝統模様)や家紋みたいなデザイン、カッコイイ明朝体、これらは全てミズノエの憧れの塊である。
 表紙の黄色でよしおと苦戦した思い出は印象深い。ミズノエは絵を描かないので本当によくわかって無いのだが、RGBとかそういう色の兼ね合いで出力される色味が変わってしまうことがあるらしい。変わってしまってはダメだろ。結局試行錯誤を繰り返して今の形へ。確か一回抹茶みたいな緑挟んだ気がする。大変だった。

 出した後の感想。めちゃめちゃテンション上がった。もうめちゃめちゃよ。和綴じだし、雲龍紙の浮き方最高だったし。どう考えてもミズノエの出す本のデザインの方向性はこの時の経験で決まってしまったように思える。周りからも、ゲムマで見てくれたお客さんからも好評だった。嬉し~~~~~。全部売れてしまったのでこの和綴じ本はもう手に入れることができないのが少し悲しい。別の和綴じ本も作ってみようかな。和綴じ本って2回以上擦ってもいいの?いいよね。

『葬〔frəʊde〕』

DX3rdシナリオ集/B5/62P/ゲームマーケット2023秋

装丁概要
表紙:羊皮紙 白160kg
遊び紙:なし
本文紙:コミック紙 ホワイト
特殊加工:デボス加工
表紙:モノクロ
本文:モノクロ

二冊目。またプリントオンさんにお願いしました。前回ミスチェックが丁寧で助かったのと、特殊装丁しようとするとやっぱりプリントオンさんが頼もしすぎました。その分ミズノエには執筆作業を頑張ってもらう必要がありますが……
また、今回初めてロゴや表紙データを身内に外注(?)しました。たいのやさんにはデザイン面以外にも加工案などで大変お世話になりました。感謝。

表紙:デポス加工のタイトルロゴ

シナリオ集のタイトルにもなっている掲載シナリオ「葬〔frəʊde〕」を表現したかった装丁です。
「葬〔frəʊde〕」は文字のない島が舞台なので、本自体もなるべく文字を排除したデザインにしたい、と言われた気がします。
そのため表紙のロゴは印刷なしで加工だけ。制作チームで何度も会議を重ねて最終的にデボス加工に決まりました。他にエンボスニス加工という案も出ていたんですが、加工部分がつやつやになるのでちょっとイメージと違うかも、ということで却下に。(加工自体はかわいいし、全面にしてもお値段が変わらないのでいつか使ってみたいです)
羊皮紙のちょっとざらっとした感じも雰囲気があって良いです。
遊び紙は後述のオープニングストーリーがあるのでなしになりました。

ただやっぱりどうしても可読性は低いので、次似たような本を作るならパチカ加工とかも使ってみたいです。加工した部分が透ける?らしいのでデポス加工よりはタイトルを認識できるのでは……と。サイトに加工見本を掲載してくれているのでどの加工をするかサイトを見ながら相談する時間はとても楽しいのですが、どれかに決めるというのが難しいですね。

裏表紙:掲載シナリオ一覧

裏表紙です。シナリオ集なのでシナリオ一覧は書きたいが、表紙の加工のこともあり本の雰囲気を邪魔しないように、というオーダーでした。表紙デザイン担当のたいのやさんがとてもいい感じにしてくれました。ゲムマ後の購入報告postでこちら側を表にして写真を撮っている方がいて、これはこれでアリ…!と思ったことを覚えています。

1P目:オープニングストーリー

冒頭数Pにオープニングストーリーを掲載。その文章の中に「落ちていた本を拾った」という描写があり、このシナリオ本自体がその「落ちていた本」であるかのような表現をしたい、と言われた気がします。もう少し文字の大きさや配置などでそういう雰囲気を出せたのではないかと思います。次回に生かしたいです。

◆コメント byミズノエ
 前置きとして、今回は本ないしシナリオを作るにあたり『テーマ性を重視しよう』という個人的な目標があった。全体を通すグランドテーマは『消されてしまった事実』。表現しきれたかの評価は一度置くが、今回の本の装丁はここを起点にしてデザイン作りが為された。

それでは、どうやって『消されてしまった事実』、特に、『消されてしまった』という部分を表現しよう?というのがミズノエにとっての最大のポイントになったワケで。
・黒塗り
・袋文字&線画
・鯨幕みたいな装飾
・トーンのみでの表現
たしか思いついたのはここらへんだった気がする。特に黒塗りと袋文字の2つの候補はどちらも直感的でわかりやすく、結果として袋文字をブラッシュアップしたデボス加工のみの表紙…という風に着地した。

 表紙デザインが半分くらい完成したタイミングで「冒頭にショートストーリーを書きたい!」というアイデアが浮かぶ。これは「テーマ性を重視する」という今回の目標から生まれた試みだ。本としての「フラウデ」そのもののフレーバーストーリーで、最初はあとがきとして奥付の手前にも同様の文章を載せるつもりだった。しっくりくる文章が思いつかなかったので没になってしまったのだが。
 冒頭のショートストーリーには、この本の見た目に言及する箇所がある。初めは真っ白な本を想定していたのだが、この時初めて「拾った本が真っ白なのはおかしい」と気が付き、少しヨゴシを入れたいと感じた。羊皮紙の採用である。(余談:インディゴブルーの紙面になる選択肢もあった。単純にかっこよかったため。)

 裏表紙について。システム(Dx3rd)の明記と収録シナリオの文字を
印刷してある。前回の玉祀でシステム名を入れ忘れたので今回はやりたかった。文庫本の短編集に憧れているので、そういった趣を取り入れたデザインにしてくれた…んだと思う。ここらへんの打ち合わせの内容は忘れてしまったな。
 少し話が逸れるが、装丁とDTPについてはたいのや、よしおの2人が本当に予想の何倍もうまくやってくれたためここで改めてお礼を言いたい。イメージとしては「なんかいい感じで」と言ったらスゲーいい感じのデザインが出てきたそれに近い。説明下手な部分を上手に上手に補完してもらった。本当に次回以降調子に乗ってはいけないなという自戒がある。

 ここから先はゲムマでの初頒布を終えての感想。当日23年12月10日の朝は、一人で先に自分のブースに向かうこととなった。設営道具も無かったので私にできることと言えば会場に搬入されたまだ見ぬ拙書とお見合いすることしかなかった。

正直な第一印象「なんも見えねえ!」

 笑ってしまった。本当に真っ白マーブルなんだもん。ちょっと焦るくらい何も見えなかった。羊皮紙とデボスの相性が悪いとは聞いていたがマジだったな。……とはいったが、今思ってもこの表紙は大好きだ。表紙を傾けるとデボス加工の文字に影が落ち、装丁が姿を現すのがとても素敵に感じた。そうでなくとも、指で表紙を撫でてやると点字のように文字が伝わってくるのが『見えないもの』という角度から「消されてしまったもの」というテーマを想定外に表してくれたことに対して感動したことを今でも覚えている。
 結構すぐにXに投稿したけど写真じゃ伝わり切らなかったと思う。まだ在庫あると思うから買って実際に見て触って欲しい。

あとがき

上記のシナリオは電子版書籍版ともに弊サークルのBOOTHにて頒布しています。(現在「玉祀三神奇譚」が書籍版完売となっておりますご了承ください。)

また、今月末に開催されるゲームマーケット2024春に既刊を持っていくので、気になった方は「4/28 東1ホール N35」に実物を見に来てください。
ミズノエも新刊を出します。システムは「DX3rd」ではなく「幻想ナラトグラフ」のシナリオ集になります。今回は特殊装丁ではないのですが、表紙の紙やデザインにこだわって制作したのでぜひ見に来てほしいです。


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