花降らし_

感想:花降らし



花降らし / 初音ミクオリジナル

(画像はこちらの動画からお借りしました)


ご存知ナブナさんの楽曲だ。

私は最初にこれを聴いた時、「本当にナブナさんの曲か?」と思ったものだ。いや、高音を巧みに使ったギターや印象的な歌詞などから窺えるナブナ節はもちろん健在だ。

では何がそう思わせたのかというと、ドラムだ。私は普段から曲を聴く時にドラムを意識的に聴いてしまうのだが、このドラムが普段のナブナさんと様子が違う。


従来のナブナ楽曲のドラムは端的に言うならば打ち込み感全開といったもので、人が叩くことを想定していないゆえに、ともすると違和感のある配置のフレーズが多く見られた。

しかしこの曲に関してはそれが一切ない。生のドラムを録音したものではないかと思うほどだ(たしかに音も生音に近い。しかしこの曲はアルバム「月を歩いている」の収録曲なのだが、他の曲はそういったものは感じないため、この曲だけ生でレコーディングしたとは考えにくい)。

そうでなくても「誰かに編曲、あるいはドラムを監修してもらったのだろうか?」と勘繰ってしまう。

動画ページのクレジットにそのような表記は見当たらないのでそういったこともないのだろうが、私にとってそれくらいの驚きだったということだ。



そのあたりを話すにはまず打ち込みについてある程度説明していく必要があるだろう。

打ち込みは録音ではないため一音一音パソコンで音を並べていくことになるのだが、そのうちドラムで打ち込み感が出る最たる例がハイハットだ。


ところで、打ち込みはバスドラの音、スネアの音、シンバルの音といったそれぞれを一つずつ録音した”音源ソフト”を用いて曲を作り上げていく方式なのはご存知だろうか。

「あ」「い」「う」といった一音一音が録音されているVOCALOIDの楽器バージョンと考えればしっくりくるかもしれない。


スネアやバスドラなどは基本的に音が2種類はあるものだが、ハイハットは1つしかないことが多い。

なぜかというと、ハイハットは「ハイハットを開いて鳴らした音」「ハイハットを閉じて鳴らした音」「ハイハットを閉じた時に鳴る音」といった3種類もの音が最低限必要なためだ。

他の音と比べてハイハットだけで既に3倍の種類を用意しなければならないので、そのひとつひとつの音を増やすにはさらにコストがかかる。もちろん有料の音源などを購入すれば複数種類の音があるだろうが、無料で配布されている音源やDAW(作曲に使うソフト)付属の音源には最低限の3種類だけのことが多い。

そのうえ、ハイハットは「開閉によって音を変えられる」という性質のため、他の楽器より音が”ばらつく”ことになる。打ち込みでは限りある数の音源からフレーズを作るため、人と比べるとどうしても機械的になってしまうのだ。

これこそがよく言われる「打ち込みっぽい」の正体だ。


※ハイハットの部分の説明が若干わかりにくかったかもしれないが、この動画をご覧いただければハイハットの音のばらつきがわかるかもしれない(これはシライミュージック様のハイハットの商品紹介動画です)。




話が大分逸れてしまった、ではAメロを聴いてほしい。できればハイハットを意識しながら。

ハイハットの音に細かな強弱がついているのがわかるだろうか。この繊細なハイハット運びが何より生音っぽさを強調しているのだ。これは同氏の他の曲には(少なくとも私が知っている限りでは)見られないものだ。

そういう意味での、冒頭の「本当にナブナさんの曲か?」となるわけだ。ここまでくるのに随分長いこと話してしまった。


またAメロ以外にも、全体を通してシンプルなフレーズを使っているというのもある。氏の他の曲では人が叩くには少々無理があるというのは先に触れたとおりだが、この曲はフレーズを簡潔なものにすることでそれを緩和、というかなくしている。そこも曲の打ち込み感を消している要因のひとつだ。



同じく「月を歩いている」から投稿されている「白ゆき」はいつも通りのナブナさんなのだが、この曲を聴くと「もしかしたらアルバムに入ってる未投稿の曲もこんな感じのドラムなのでは?」と気になってしまう。

それくらいこのドラムが好きだし、こういったものをこれからもぜひ見せていただきたい。アルバム欲しい




#vocanote #感想 #VOCALOID

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?