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【ボカロ中心に解説】「半テン」ってなに?



こんにちは。


最近Kiite Cafeが始動したため、慌ててプレイリストを整備しているのですが。(よかったら見ていってください)


その中で「半テン・PPPH」「倍テン」という項目を作ったのですが、この「半テン」「倍テン」ってなんのことだよと言われそうだなと。
どこかのタイミングでこの話をしようとは思っていたので、いい機会ですし今やっちゃおう!という趣旨のnoteです。

今回は半テンがどういうものかについて書いていきます。
あ、PPPHについてもこの先説明しますのでそのまま読み進めてください。




こほん。では


半テンとは。


最初に、「半テン」の日本語の意味から。

半テンの”半”は半分、”テン”はテンポの略です。
じゃあ半テンは「テンポが半分になること」なのか?というと、ちょ~っと違うんです。

テンポっていうのは曲の速度のことで、それを「1分間にどれくらい」という基準を設けて数値化したのがBPM(Beats Per Minute)です。
しかし半テンが使われているからと言って曲の速度が変わっているわけではありません。
このへんの音楽用語ほんとうにややこしいんですよね。テンポとかBPMとかリズムとかビートとか。私もよくわからないのでフィーリングで使ってます。上の説明もWiki見ながら書いた。
そして、半テンはこのどれとも違う考え方なんです。テンポを略して言ってるのに!!


ここでは半テンの別の言い方を伝えると理解しやすいかもしれません。半テンには他に「ハーフ・タイム」「ハーフ・タイム・フィール」「ハーフ・タイム・グルーブ」などの言い方があるようです。この真ん中の「ハーフ・タイム・フィール」に注目してください。

ハーフ・タイム・フィール。それぞれ日本語訳すると「半分」「時間」「感じる」です。つまり、”半分の時間に感じる”ってこと!

暴論のように聞こえますがこれが正解です。
半テンとは、「半分のテンポになったかのように感じること」。
ここ一番大事。



例によって半テンになる前後をドラムのみ抽出してみました。これで言うと0:04~ が半テンです。
こうしてドラムだけを聴いてみると、最初の説明で言ったように半テンに入ってから「半分のテンポになったかのように」ゆっくり感じませんか?




では次。


半テンってどの部分なの?


私の体感でかなりわかりやすいと思う曲がこれ。



Bメロの『またやっちゃった』~『フリをして僕は』の部分、ここが半テンになります。

どうでしょう、聴いててテンポが半分になったかのように感じませんか?
実際にはテンポは変わっていません。
じゃあ何が変わっているのかというとスネアドラムという楽器の音数なんですが、音の話とかは難しいし私自身も感覚で把握してる部分が大きいので、このへんで切り上げておきます......。





この曲なんかもわかりやすいかもです。半テンしてるのは2番の最初。



なんとなくどういう感じがつかめましたか?他にも具体例を出しますね。
(別タブで曲を聴きたいというPC勢の人は、右下のniconicoって書いてある部分をクリックすればリンク先に飛べます。)


(ヘッダー画像はこちらのスクリーンショットになります。)

Bメロの最初からサビちょっと前まで。
歌詞だと『追い越してく 戻れない憧憬』の部分です。



Bメロ全部が半テン。
(タムが多く聴こえますが、大事なのはスネアのタイミングです)


Bメロの前半部分が半テンになっています。
歌詞だと『帰り道の途中で 君と出会ってしまった』の部分。
特にボカロ曲ではこの「Bメロ前半だけ半テン」という使われ方が多いように感じます。


こちらもBメロ前半部分・・・よりもうちょい手前かな?が半テン。
歌詞だと『彩って』~『頑張ったって』の部分。


こちらは反対に「Bメロ後半のみ半テン」になっていますね。こういうパターンもあります。
歌詞だと『生まれ変わったら素直に言えるかな』の部分。




インパクト重視で主に有名曲を挙げましたが、実際は有名マイナー問わず多くの曲に使われています。

またこの半テン、ボカロ曲だけでなく邦楽にも多く使われている技法なんです。海外の曲は・・・わかんない!(正直)


思いつきで並べましたが、邦楽メインで聴いてない私でもピンとくる顔ぶれ!
ボカロという枠に収まらず、メジャーシーン全体に浸透している手法だということに納得してもらえるでしょうか。





半テンの特徴って?


曲を聴いてて飽きさせない、好きにさせるうえで大事なのことのひとつに「メリハリがある」というのがあると思うんです。
たとえば曲の中でサビって大体が盛り上がる部分じゃないですか。逆に言えば、盛り上がる部分は大体サビだとも考えられます。
もっと言えば、「作曲家の方々はサビで盛り上げることを意識して曲を書いていることが多い」とも言えるのではないでしょうか。

この盛り上がる部分をメリハリの”ハリ”だとするなら、半テンはメリハリの”メリ”。いうなればタメの役割です。半テンでタメて、サビで開放する。
実際の曲はもっと複雑なつくりをしているかとは思いますが、とりあえずそう考えてみるとちょっとわかったような気がしてきませんか?


また、この半テンの特徴を語るうえで欠かせないものがあります。
そう、それがPPPHです。お待たせしました。

困った時のニコ百。

PPPH(ぱんぱぱんひゅー)とは、ヲタ芸の一種である。
また、そこから逆派生して、楽曲上PPPH可能なパート自体をこう呼ぶ場合もある。

と書いてあります。私の言うPPPHは後者。


記事中で大体の説明がされていますが、こちらでも少し例を挙げてみましょう。

曲は2分あたりから始まります。PPPHは2:58~です。


我らがアイドル、初音ミクのアイドルポップでも半テンは使われています。該当部分は0:45~


ここまでに本記事で貼った曲を聴いていた方はお察しがつくかもしれませんが、このPPPHパート、半テンです。
というか、PPPHしているリズムというのはほとんど半テンのことだと言ってよいでしょう。

理由はリズムがゆったりしているように感じられるから。
上に貼ったニコ百の記事ではPPPHは元々ヲタ芸のことだと書いてありましたね?ヲタ芸は客、つまり素人がするものなので、あまりに速いノリだとついてこれない人も出ると思います。
そこへいくと半テンをすることで、曲のテンポが落ちたように感じられます(何度も言いますが実際には落ちていません)。結果、速いノリのときよりも多くの人がノることができるリズムになるというわけです。


あともうひとつ。
非情に汎用性の高い半テンですが、Bメロで最も多用されています。
ここまでに貼った曲のうち、サマータイムレコード以外のすべての楽曲がBメロで半テンをしています。

これはBメロの役割と、先ほど言った「メリハリ」が関係しています。
Bメロは、Aメロ→Bメロ→サビと移行することの多い邦楽においては、基本的にAメロとサビの間に位置します。悪く言ってしまえば、サビまでの繋ぎのパートです。ここではいかにサビで盛り上げる進行をするかが求められます。
その解決法として、「Bメロをタメとすることでサビで一気に盛り上げる」という考え方があります。曲のテンションをBメロでAメロより下げて、サビでめちゃくちゃ上げることでギャップを狙おうという試みです。
そして、これに該当するパターンのひとつが半テンです。半テンのBメロでの採用率が異常に高いのはこういったカラクリ。いやー作曲者はいろんなこと考えてますね!





Bメロ以外で使われてる半テンは?


もちろんありますよ。いろんなところで使われている半テンを紹介しましょう。

Cメロの2/3で使われています。歌詞だと『隠してきた』~『理由なんてない』の部分。
メリハリの”メリ”として使われるのが重要なので、Bメロでなくてもサゲたい場面なら違和感なく採用することができます。この曲は2番サビという盛り上がりの後に、ラスサビに向ける前に一旦落ち着ける意味合いで使われていますね。


この曲はアウトロで使用されています。3:00~
ラスサビで限界まで盛り上げてからのこの落とし、激エモ。


この曲ではなんとサビで登場。0:56~のサビ後半
サビ前半で盛り上げ、サビ後半から間奏にかけてゆっくりテンションを降下させている進行となっています。


ここで言いたいのは「Bメロで半テンが多く使われてるのは事実だけど、その真価は他の場面でも発揮されてるよ」ってことです。
”Bメロで半テン”もはやテンプレートのひとつとなっているため、個人的にはこちらの意表を突くような差し込み方もとても好きです。





近年の半テン


ここまでいろんな曲を例として挙げていきましたが、貼られている曲を見て「最近の曲あまりなくない?」と思った方は鋭い。
この半テンという技術って、テンポが速い曲との親和性が特に高いんですよ。テンポ感を半分にするため、あまり遅いとただもったりするだけになってしまうからです。たとえばバラードで見かけることはあまり、というかほとんどありません。

ボカロシーンでいえば、最もよく見かけたのは高速VOCAROCK全盛期の頃です。あの時はBPMの平均がかなり高めでしたから。逆に近年はミドルテンポでオシャレな曲が邦楽シーンでもボカロシーンでも流行っているため、前ほど見かけることは少なくなっているんです。
もちろん探せばたくさん出てくると思いますけどね。ロックンロールは死なないし。


”鬼滅の刃”のテーマソングとして話題を呼び紅白での披露にまで至ったLiSAの紅蓮華なんかもBメロ前半で半テンが使われています。
前ほど目立たなくなったとはいえ、今でも曲構成の雛形として強く根付いているのは確かです。





おわりに


動画めちゃめちゃ貼ったので予想以上に長くなってしまいました。。。
前のシャルルビートの時くらいの長さにする予定だったのですが、後から後から書きたいことが出てきてしまって。うまくいかないもんですね。
一応、これでも絞ったつもりなんです。ほんとは倍テンについても書きたかったんだけどな~。もしかしたらそのうち続きを書くかも。

半テンがどれだけ広く使われている技術で、どれくらい曲構成の中で重要な立ち位置なのかを理解していただけたらとても嬉しいです。



では最後に一番言いたいことを。

ボカロPのトーマさんですが、
例外は九龍レトロアザレアの亡霊、そしてバラードのオレンジだけ。バビロン以前でも、黒猫アリスと月光アリスもBメロで半テンしています。

変拍子、BPM変化、難解なリズムパターンと、複雑な曲展開でリスナーを魅了するトーマさんですが、それでもポップの枠に収まっているのはこういった王道のテンプレートにしっかりと乗っているからかもしれません。



あー言いたいこと言えてすっきりした!
では今回はこのへんで。


・・・つづく?



追記:PPPHの補足解説をした記事書きました。
あくまで補足ですのでこの記事ほどのボリュームはなく、気軽にお読みいただけるかと思います。こちらもよろしければぜひ!





#vocanote #感想 #VOCALOID

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