アンハッピー

感想:プリズムキューブ



『何もないよな気がしてた』


プリズムキューブ/wowaka

(ヘッダー画像はリンク先の動画のスクリーンショットになります)


この曲は一曲通してシンプルな構成ですが、Aメロ、Bメロ、サビが全て親和性が高く、各個で見てもメロディアスなため、そのシンプルさが十二分に発揮されています。wowakaさんのバラード曲はあまりないためその分目新しさもあり、それでいて1番2番で2サビがラスサビという氏おなじみの構成に安心感があります。

またこの曲、Aメロがどちらもドラム入ってないんですよね。1番でも2番でも同じフレーズだったり、ハイハットとバスドラだけだったりということは珍しくもないと思うのですが、両方ドラムなしというのはあまりないんじゃないかと思います。
1番ではそこから間奏を挟んでハイハット、バスドラ、そしてクローズリムを絡めて静かに立ち上がります。そしてサビで今曲が始まったかのような開放感!『痛いくらいの始まり』です。
しかし、サビの開放感も一瞬。通常の1回しより0.5拍食って、1サビはあっけなく終わります。このあっけなさに物足りなさを感じたらもう手のひらの上です。なぜならこの1サビの短さは、2回しとってたっぷり聴かせてくれるラスサビに向けての布石だからです。カタルシスってやつよ!



―――ここから自分語り―――



wowakaさんは私の中で特別なボカロPです。私をVOCALOIDへ誘ったのがsupercellなら、私がボカロにハマった直接のきっかけがwowakaさんだからです。前にも言ったように私ははじめ”ぼからん”を見ることでのみボカロ曲を知っていったのですが、リアルタイムでボカロシーンを追うようになったのは、wowakaさんが一年の沈黙を破って新曲「アンハッピーリフレイン」を投稿したからです。
堂々と言うようなことでもないですが、当時完全にwowakaさんの信者と化していた私は毎日「ワールズエンド・ダンスホール」を再生していたし、アンハッピーリフレインももちろん毎日聴いていました。wowakaさんの曲が少しでもぼからんで良いポイントがとれるように。少しでもぼからんで上の順位をとれるように。長い間ぼからんで過ごしていた私にとっての価値観はすべてランキングが基準だったのです。

裏表ラバーズでwowakaさんを知り、またたく間にハマっていきました。カバーや派生作品がぼからんにランクインするたびに「wowakaさんってやっぱりすげえや」と喜び、「積み木の人形」がTOP3を逃したことに納得がいかず、日刊ぼからんの方で「グレーゾーンにて。」が不具合で4秒しか紹介されなかったというエピソードを聞いて見に行って笑い、テノヒラが伝説入りしていないことに「みんなわかってない」と毒づき、ローリンガールが「ホール・ニュー・ワールド」のKAITO、MEIKOカバー曲に阻まれてぼからん制覇できなかったことを悔しがり、その後のランキング乱高下、かと思えば中上位まで上り詰める順位の読めなさに一喜一憂し、wowakaさんが好きすぎるあまり肩を並べてくるDECOさんハチさんを敵視し、ワールズエンド・ダンスホールがぼからん史上最高ポイントを叩き出した時はすごく嬉しくて、その記録をアンハッピーリフレインで自ら塗り替えたのはさらに嬉しくて、でも門番化することなくすぐに圏外に落ちたのが不満で、月刊ニコランではアンハッピーリフレインが一位をとるも「無冠の帝王」タグがあるのが悔しくて、でもなんだか嬉しくて・・・。


はい。そんなwowakaさんが”ヒトリエ”として動画を投稿したのが2013年。アンハッピーリフレインの投稿から2年です。その間、私はアルバム「アンハッピーリフレイン」を手に取ることはありませんでした。「アンハッピーリフレインはwowakaさんなりのVOCALOIDとの別れの曲だ」という説がけっこうな説得力を持って流布しているなか、”wowakaの最後のアルバム”として聴くのをどこかで拒んでいたのかもしれません。でも、買いました。聴きました。

率直に言いますが、このアルバムはそれほど好きではありませんでした。リードシンセの音や、ドラムの籠もったような響きが好きじゃなくて。wowakaさんが私の好みから離れたのか、私のほうがwowakaさんから離れたのか、そんなことを当時考えていた気がします(非難されてしまいそうな誤解を孕んだ表現だとは思いますが、端的に言えばこんな感じです)。
これが最後のアルバムだと考えると悲しいという気持ちと、そうだとは信じられない、信じたくないという思いが渦巻いていました。そして、プリズムキューブ。Disc1最後のトラック。1番Aメロ2回し目のフレーズ。


『伝えなきゃいけないことが まだまだあるって思うんだ』


この歌詞を聴いた時、ああ、と思いました。やっぱりこれが最後なんだな、と。何度も言っているように私は歌詞の考察などをしない人間なので、ここからプリズムキューブがこんな曲だと主張できたりはしません。ですが私にとってこの曲は、私とwowakaさんの別れを象徴する曲なんです。何言ってんだこいつ気持ち悪いなって感じですね。もう少しだけ気持ち悪い文章にお付き合いください。

wowakaとして新曲を投稿しなくなってから随分たちました。その間にも私はボカロシーンの荒波に揉まれ続け、好みもスタンスも変わりました。wowaka信者だったあの頃の私はきっともういないのでしょう。今の私はもう、ワールズエンド・ダンスホールの再生数を伸ばすためにF5連打することも、wowakaさんのすごさを再認識するためにぼからんでwowaka曲の登場する部分を繰り返し見ることもありません。

「もうwowakaがいなくても生きていける」。そのことになんだか罪悪感があって、ずっと目を逸らし続けてきました。だから、お別れをしなければなりません。個人的なけじめをつけなければ。それでも、どうしても立ち止まってしまうんです。アルバム「アンハッピーリフレイン」は好きでなくても、この曲は大好きだから。

お別れができるのはもう少し後になりそうです。




P.S. wowakaさんの新曲が投稿されましたね。


wowaka『アンノウン・マザーグース』feat. 初音ミク


ありがとう、wowakaさん。

そしてやっぱり、私はプリズムキューブが大好きです。


※P.S.以前の文章は2017年の7月あたりで書かれた文章になります。




#vocanote #感想 #VOCALOID

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