「行動」ってなんだろう
行動療法や認知行動療法、行動分析などを学ぼうとするとき、最初に考える必要があるのが「行動」です。この「行動」がなんなのかが曖昧になると、実際に活用する時に混乱したり、誤ったりしてしまうので、まずは「行動」とはなんなのかについて知っていきましょう。
そもそも行動って?
「行動」とは何なのか。普段わたしたちが「行動」というときには、実際に何かをしていることを指し示すと思いますが、ここではもっと広い意味で、生きている人間がしている全てを「行動」と表現します。もちろん、実際に体を動かして行うこともそうですし、それだけでなく頭の中で考えること、情動反応、さらには生理的反応をも含んでいます。こうしたわたしたちがしている全てを「行動」と表すのです。
もちろん、全てといわれてもなかなかイメージがしにくいですよね。それでは、もう少し詳しく「行動」についてみていきましょう。実は「行動」として捉えるには2つのルールがあるのです。このルールに当てはめて考えれば何が「行動」なのかがわかるようになります。
1つ目は「死人テスト」。ネーミングセンスはさておき、死んでいる人ができることを「行動」ということはできません。例えば、静かにしている。死んでいる人も静かですよね。だから「静かにしている」は行動ではありません。「動かない」、これも行動ではありません。これも死んでいる人にもできます。このように死んでいる人にもできるのか、できないのかを基準に「行動」かそうでないかを考えます。これが一つ目のルールです。
2つ目は「具体性テスト」。その言葉を聞いて、何をしているのか鮮明に目に浮かぶように考える必要があります。例えば、「勉強する」という行動。もちろん「死体テスト」は通過します。しかし、「勉強する」と聞いて、みんなが同じシーンをイメージするでしょうか。机に向かって何かの書き取りをしているのかもしれないし、寝転がって本を読んでいるのかもしれない。算数の問題を解いているかもしれないし、プログラミングをするためにパソコンを触っているかもしれない。「勉強する」と一言でいっても様々なシーンが思い浮かんでしまいます。これでは具体的だとはいえません。そうすると、支援や介入の仕方も変わってきてしまいます。だからこそ、「行動」はできるだけ誰が聞いても同じシーンを思い浮かぶことができるような、具体的なものでなくてはなりません。例えば、「朝ごはんのあとに、自分の歯ブラシで歯磨きをする」これだと具体的ですよね。誰が聞いても何をしているのかがわかるはずです。
今回は「行動」についてお話してきました。「死人テスト」と「具体性テスト」。最初は難しいかもしれませんが、「行動」を考えるうえでとても大切なルールですので、少しずつ慣れて使いこなせるようになっていきたいですね。
参考文献
奥田健次(2012) メリットの法則 行動分析学・実践編 集英社
鈴木伸一・神村栄一(2005) 実践家のための認知行動療法テクニックガイド 行動変容と認知変容のためのキーポイント 坂野雄二監修 北大路書房
自分にできることが何かを模索しながら、とりあえずできること、発信できることから始めようと思います。少しでもリアクション頂ければ励みになりますので、よろしくお願いいたします。