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アタッチメント障害①ー反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害

第5回公認心理師試験のブループリントの中で、アタッチメント障害の部分に括弧で、反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害、脱抑制型対人交流障害と、追加されました。アタッチメント障害という名称、実はDSM-5には記載されていません。ICD10にもないのです。公認心理師試験のブループリントに括弧で記載されていた名称がDSM-5に記載されている障害名で、ICD10では小児期反応性愛着障(F94.1)、小児期脱抑制性愛着障害(F94.2)と記載されています。アタッチメント障害というのは、これらの障害を含んだアタッチメントの形成になんらかの問題があった場合に引き起こされる様々な症状のことを指すのが一般的なようです(友田,2018)。
それでは今回加えられた反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害の中から、まずは反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害から見ていきたいと思います。

反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害

DSM-5によれば、反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害がある子供は次のような行動を示すそうです。

①苦痛なときでも、その子供は滅多にまたは最小限にしか安楽を求めない
②苦痛なときでも、その子供は滅多にまたは最小限にしか安楽に反応しない
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引(2014)

例え苦痛があったとしても最小限の安楽しか求めず、反応しないとのことです。ちなみに安楽とは「心身の苦痛を除き、楽にすること」などの意味があります(https://kotobank.jp/word/安楽-429820,参照 2022-02-01)。つまり、その人にとって危険な状況や苦しい状態であっても、ほとんど助けを求めらなかったり、手を差し伸べられても反応がなかったりするそうです。
また、人との交流の中で次のような行動や反応があるとされています。

①他者に対する最小限の対人交流と情動の反応
②制限された陽性の感情
③大人の養育者との威嚇的でない交流の間でも、説明できない明らかないらだたしさ、悲しみ、または恐怖のエピソードがある。
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引(2014)

ここでも最小限の交流や情動の反応が挙げられています。特に陽性の感情、つまり楽しさや嬉しさなどの感情は抑制され、反対に苛立ちや悲しさなどの感情が理由もなく表出されるようです。ただこれらの行動や反応は、実際に鑑別しようとすると自閉スペクトラル症との鑑別が非常に難しいことでも知られています。そのため、DSM-5では自閉スペクトラム症の診断基準を満たさないことも、この障害を診断するための条件にしています。

また苦痛なときでも最小限の行動や反応しかしない原因が

①安楽、刺激、および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが持続的に欠落するという形の社会的ネグレクトまたは剥奪
②安定したアタッチメント形成の機会を制限することになる、主たる養育者の頻回な変更
③選択的アタッチメントを形成する機会を極端に制限することになる、普通でない状況における養育
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

この3つのうちのいずれかだと考えられることとされています。これらが5歳以前に明らかになり、12ヶ月以上続いたとき、反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害と診断されます。

こうやってDSM-5の基準を見ていくと、一般的に「愛着障害では?」と言われている症例が本当に愛着障害であるかは怪しく感じますね。
次回は脱抑制型対人交流障害を見ていきたいと思います。

自分にできることが何かを模索しながら、とりあえずできること、発信できることから始めようと思います。少しでもリアクション頂ければ励みになりますので、よろしくお願いいたします。