【モンゴル】夏が近づくと恋しくなる、身も心もハーブの香りに包まれる癒しの大草原
ほのかにハーブの香りを含んだ風がそっと肌をなぜて渡ってゆく。前も後ろも、360度、どこを見渡しても、見えるのは新緑の大草原と吸い込まれそうな青空だけ。青々とした草原の上に走る轍は、あまりにも遠くまで続いているので、最後まで目で追うこともできない。あの先にはなにがあるのだろう、と思うけど、きっとあの先も、そのずっと先も同じような草原が果てしなく続いていることを体が感じる……。
そんな夢の中のような場所が、実は結構近くにあったりする。日本から飛行機でたったの4時間半。
空港に降りてからの移動が大変なんでしょ?なんて思いきや、空港から車で2時間ほど。日本を出発してたった半日ほどで、大草原の中にぽつんとひとり降り立つことができてしまう。あまりにも拍子抜けする近さに存在するのが、モンゴルの大草原。そもそも、首都ウランバートルを一歩でも出たら大草原、といった表現の方が正しいのかもしれない。大草原のなかにある国なのだ。
モンゴルの草原に降り立った瞬間に押し寄せてくるのは、瑞々しいハーブの薫り。足を一歩ふみだすごとに、ふわっとハーブの薫りが立ち上がってくるのが嬉しくて、気づくとずいぶん遠くまで歩いてしまっている、なんてことも。
朝、太陽が顔を出すと、朝露のついた小さな葉が照らされてキラキラときらめく大地が眩しい。光に目を細めながら、少し遠くを見れば、羊やヤギ、馬などがのんびり草を食んでいる可愛らしい姿がちらほらと。そう、この大草原の天然ハーブだけを食べて、のびのびと育った家畜たちが美味しくないわけがない。
モンゴルの遊牧民たちは、自分たちで家畜を育て、それを自分たちの手で屠畜して食べる。料理方法は基本的に塩で味付けすることがほとんど。煮たり焼いたり蒸したり、保存用に干したり。屠畜方法も独特で、血一滴まですべてを無駄にはしない。「ホルホグ」と呼ばれる羊を塩で味付けするシンプルな料理を、生きた羊を捕まえて屠畜するところから作ってもらった。羊のくさみをほとんど感じないどころか、お肉からもハーブの薫りが漂ってくる。
お腹がいっぱいになったら、そのまま草原にゴロン。聞こえるのは雲の流れていく音だけ。草原が鮮やかな緑で覆われるモンゴルの夏は一瞬で終わってしまう。モンゴルの夏は誰にとっても特別だ。
※羊スープが食べたくなった方は、スープ作家・有賀薫さんのレシピをどうぞ。
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