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2021年1月の記事一覧
樋口直哉 小説『美しい味』─第2章-1
第2章
それから一年を待たずに房次郎は千坂を辞めた。房次郎の頭にあったのは「金が欲しい」という切実な気持ちだった。はじめは金を貯めることも考えたが、義母が毎月給金をとりにくるので、それも叶わなかった。
このままここで丁稚をしていては、いつまで経っても画学校にはいけない。それで彼は思い切った行動に出た。年内一杯で千坂を辞め、家に戻ったのである。
「なんで戻ってきたんや」
面を食らったの
第2章
それから一年を待たずに房次郎は千坂を辞めた。房次郎の頭にあったのは「金が欲しい」という切実な気持ちだった。はじめは金を貯めることも考えたが、義母が毎月給金をとりにくるので、それも叶わなかった。
このままここで丁稚をしていては、いつまで経っても画学校にはいけない。それで彼は思い切った行動に出た。年内一杯で千坂を辞め、家に戻ったのである。
「なんで戻ってきたんや」
面を食らったの