断捨離


 エアコンのフィルターをやっと掃除しました。フィルターの上に新しいフィルターができていました。ちゃんと掃除をして新品同然。心地のいい風を吹いてくれるから、暑くもないのにエアコンをつけてみたり、消してみたり。部屋の中では時間が止まるから、気分の入れ替えです。空気が綺麗だと少し前向きになれますね。

 気持ちがいいから断捨離をします。長く使っていなかったものをゴミ袋の中に入れていきます。本棚には手を触れません。全部大切な思い出のカケラだからです。床に散らばった服は洗濯槽に、ゴミはゴミ袋に。そんなことを続けていたら、次第に床が見えてきて、自分の部屋がいかに茶色かったかを再認識します。部屋にある黒色のローテブルには調味料だったり、書類だったりが置いてあったり、見るに耐えません。元の場所に戻してあげました。次第に机の全貌が見えてきて、自分の机がいかに黒かったかを再認識します。

 物を断捨離すると、入居段階の部屋に戻っていく様を見ることができます。大学2年生の時に今の家に引っ越してきました。そこから自分と一緒に歳をとっていき、今日、こいつだけ若返りしました。自分は老けていくばかりです。今日も自分は老けていきます。

 目新しくなった自分の部屋に新しい風が吹きます。ここはどこ。ここはどこでしょうか。昨日の自分の居場所がどこにもありません。

 本棚の前に立っています。大学の卒業祝いの意味も込めて自分の背丈くらいある大きめの本棚を買いました。昨日の自分の居場所がないから、懐かしい本を手に取りました。本は自分と一緒に歳をとってくれます。そして、自分も若返りさせてくれるそんな気がします。

 部屋は大学3年生の頃みたいな若返り方をしていたから、大学3年の時に狂ったほど読んでいた本を手に取ります。視界には大学3年の時によく見ていた風景があって、空気は大学3年の頃の空気。そんな気がします。今日だけ自分の心は大学3年生です。そして、この本を閉じた時、また修士1年のつまらない自分に戻ります。

 多分この家を引っ越す時には、部屋は入居前の姿になります。見たくないです。自分だけ歳をとった気がするから。でも早く引っ越したいです。自分の感情と共に育ったこの部屋と、もう1人の自分と決別できる気がするから。

この家と決別する時、入居してた時の自分からどれくらい成長しているのでしょうか。きっと綺麗になった部屋が、もっと汚れて醜い自分を映しだすのでしょう。置いて行ったはずの醜い自分をそのまんま新しい家へと連れていくのでしょう。

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