レジ待ち時間からの解放

 実店舗での買い物においてもっとも無駄な時間とはなんだろうか。
 3個200円のレモンと1個110円のレモンのどちらを買おうかと悩む時間だろうか。特売品の洗剤を他の買い物客と奪い合う時間だろうか。それともサッカー台に備付けてあるビニール袋を開こうとしても指が滑ってなかなか開けず苦闘している時間だろうか。

 どれでもない。

 買い物で無駄な時間は、レジ待ちの時間である。なぜなら、お客自身の意志に基づく選択によって発生する時間ではないからだ。
 大抵の場合、お客は買うものを決めたらできるだけ速やかに買って店を出たいと思っている。店内を見て回るのがメインのような趣味・娯楽関係の買い物ならともかく、食品やペーパー類など生活必需品の買い出しなら、よりそう思うだろう。

 それを阻害するのが、レジへと続く長蛇の列なのである。

 加齢により倫理観や認知機能の衰えた老人なら、レジで待つ時間が面倒で仕方がないために万引きを働くケースもあるかも知れない。ものを買いたいだけなのに、なんで待たなければならないのか、となるのだ。
 だからといって普通は盗まないが、無敵老人は無敵だからそのまま持っていこうとするのである。小さい子がスーパーに並んでいるお菓子を勝手に開けてしまうのに近い。

 ともあれ、レジに並んで会計をするのは「お金を払うこと」以上に煩わしい作業だ。お金は払うからとにかく待ちたくない、という人も少なくないのではないか。

 特に辛いのは、複数のレジ列のうち、同じくらいの待機列に並んだと思ったら隣のレジの列がガンガン進んでいくのを見たときである。自分の並ぶ列は一向に進んでいかない。前方を見てみると、なんか値引きクーポンの適用の関係で揉めているようだ。それが終わったと思ったら、次のお客の買い物ではバーコードが読み込まれず苦戦しているっぽい。

 こうなるともう、隣のレジに並んでいさえすれば10分前には店から出られていた、と思いながらひたすら待つしかないのである。虚しさを感じる瞬間だ。


 こうした問題を解決する手段のひとつが、買い物をしながら商品をスキャンできるシステムだろう。まだ部分的な店舗にしか導入されていないというが、実際、全店舗で採り入れられればよいと思う。なんならスキャンシステムとカードが連携されていて、支払いまで一括で済ませられればよいのだ。

 隣のレジばかりがハケてゆくあの辛さを味わわなくてもよい仕組みは、どんどん採用されていっていい。
 買い物の際はレジに並んで会計をするもの、という常識は、なくなってくれていいものだ。



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