変わるもの、変わらないもの。

 少し離れたところにあり、今までも何度となく行ってきた温泉施設がもうじきリニューアル準備のため、半年以上お休みするとのこと。冬場を丸ごと改装に当てるとは経営陣も思い切った決断をするものだ。

 それだけの本格的な改装ということで、既存の浴槽などは総取り換えになるらしく、これまでとはガラッと趣が変わるようである。そこで、入り納めといこうじゃないかと、大雨の中そこへ行ってきたのだった。温泉に浸かったあとは日頃の疲れを徹底的に叩き出さねばならぬ。そこで寝ていたら夜になってしまった。半端に眠るとそれはそれでぼんやりするものだ。


 温泉施設のごときところは、なんとなく恒久的というか、数十年やそこらでは変わらないイメージがあるが、普通に変わってしまうのだなぁとしみじみしてしまう。
 改装される館内のいくつかを写真に収めたが、当然更衣室から先は撮影するわけにもいかず、ただ目に焼き付けるのみ。何度か浸かってきたこのなんか効能がアレコレ書いてある温泉も、なくなって新しくなってしまう。これこそ諸行無常の響ありというやつなのか。温泉に浸かりながら考えることでもない気がするが。

 温泉など放っておいてもそれなりの集客が見込めそうな気もするが、それはおそらく素人判断なのだろう。確かに、国内という点からすれば温泉はそう珍しいものでもない。いつまでも変わらない保養施設みたいな状態では、ほかの競合する娯楽にお客を取られてしまう可能性がある。なんとなれば、今どきは都市部のビジネスホテルですら大浴場などを売りにするところもあり、安く旅行気分を味わえてしまうのだ。

 そうなると、お客の増えるであろう秋冬を休みにしてまで全面改装に近いリニューアルを取り決めた経営者の判断は、なかなかの英断ともいえるのかも知れない。


 少しの寂しさもあるが、完全に新しくなる温泉施設がどうなるのかは、楽しみでもある。よくわからないが、流行りの様式なども採用するらしい。たぶんアレだ。ロウリュなんかも入るのだ。バサッ、熱気ブワァ~みたいなやつ。そして整う(解像度が低い!)。

 どこも生き残りを考えていて、それは時間の流れを意識させないような温泉地であっても例外ではない。事実、なくなってしまった温泉旅館などもあるではないか。ありのままでいるには、時代への適応が必要だ。

 露天風呂でわりと激しめに降る雨に打たれつつ、変わらぬものはないのだと思いを馳せた、そんな一日だった。



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