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役者出身○○の弊害

以前こんなことがあった。

とある朗読劇、3日間公演でリハーサルも含めれば朝から夜まで丸々拘束されるというもので
予算の都合なのか私たち出演者のケータリングは無しでと事前に言われていた。

小さな主催の朗読劇・舞台ではよくある…というかあまり珍しくはないので、それ自体は何問題はないのですが
問題だったのは、出演者(役者)以外のスタッフには、お弁当がしっかり3日間配られていたということ。
そしてそれは出演者の目の前で「お弁当貰ってないスタッフの方いますか〜?」と平然と配り散らかされていたこと。

よほどの大スターや売れっ子でない限り、基本的に役者の扱いは雑なことが多いけれど、これは人として社会人としてどうにかならなかったのかととても憤慨した。

そもそも何が問題なのか。
一旦自分が出演者側だったということは置いといて考える。

そもそも主催側は「自分たちの作った作品を演じてください」と出演者にオファーして、自分たちの自己実現やビジネスに協力してもらってるという立場。
出演者は「身内」ではなく「取引先」に近い立場なはず。
それはもちろん出演者側も同じです。

だからこそ、ご丁寧な主催の方はきちんと食事や飲み物などは用意してくれます。
ですが今回のように、予算がなくて出演者の食事を用意できないことは多々あります。
しかしそれは役者として生きていると「そうだよね、儲からない業界だよね、一緒に頑張りましょう」という気持ちになるので全く不快感などはないのです。

しかし、今回はその主催側がちゃっかり弁当を食ってる。しかも出演者の前でガツガツと。

思いますね。その弁当代で出演者におにぎりとお茶のセットくらいは配れたよね?と。

普通の社会で考えても、取引先の前で自分たちだけ昼食食べるなんてことありえないですよね。
分かるんです。普通に考えたら分かるんです。


これ、なんでこんな事が平気で起きたかと言えば
「主催側が元役者の集まり」だったからなんです。

元役者の集まりなら、役者の辛さや大変さが分かるからこんな事起きないのでは?と思うかもしれませんが実は逆なんです。

おそらくですが主催側は悪気なく、自分たちがそうだったように「役者は後回しにされるもの」という価値観が刷り込まれているのだと思います。
そしてそれを誰も文句は言わないだろうと「当たり前に」思っていたからこそ、出演者の目の前で平気で弁当を貪れたのでしょう。

虐待を受けて育った人たちが我が子に虐待をしてしまう傾向が高いというのと似てるのでしょうか。
自分たちが当たり前に受けていた待遇だからこそ、何の疑問もなく自分たちも雑な待遇をしてしまう。

これは「元役者のマネージャー」にも同じ傾向があります。
役者はマネージャーに対して自ら積極的にアプローチして、アピールして媚びへつらっていくものだ。
これはまぁ役者の中では「そうだ、その通り」な概念なわけです。だから役者は必死にマネージャーに自らをアピールするために行動するのですが
その価値観が染み込んで奥までチョコたっぷりになってしまった人間が、役者を引退しマネージャーになると
「もっとアピールしなよ?仕事振ってあげないよ?」と言わんばかりに椅子に深く腰をかけ微動だにしないわけです。

忘れてはいけないのですが
マネージャーと役者は、上司と部下、先輩と後輩という関係ではなく
お互いの利益を共有するビジネスパートナーです。
役者側も能動的にアプローチするのは当然ですが、マネージャー側も積極的にいい人材を見つける努力、そしてその人材が現場に出るための努力は必須なのです。お尻と椅子が仲良しこよししてる場合ではないんですね。


まぁそんな具合に、奥までチョコたっぷりに役者時代のプライドや価値観が浸透してしまってると
新たな立場にジョブチェンジした際にその悪き価値観のまま仕事をしてしまうんですね。
転職したら元の職場は「弊社」ではなく「御社」だと。
「あぁあれ?俺の元カノ」みたいなスタンスでい続けてはいけないと。

意外とそれがわからず「元役者だからこそ役者の気持ちが分かる」と鼻息荒く声高々に言ってる人が多い。

もし目の前に「役者出身の○○」がいたなら、一度警戒した方がいいかもしれませんね(笑)

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