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「人生は光と影」とは名言だ!

三段のいちばん上の戸袋は何年も開けたことがない。
脚立を持ち出して開けて見ると
「ビデオ類」とマジックインキで大きく書かれた
段ボールが3箱並んでいる。

開けてみると中のVHSビデオテープにカビが生えていた。
8ミリビデオもDVカセットもぎっしり入っている。

30年以上前の、もうそれぞれ家庭を持つ娘や息子たちの
幼少の頃に撮り溜めた映像である。
カメラもそのままバッグに収まっていた。
経年の劣化で二度と観られなくなるのではないかと思うと
なんとも惜しく、一念発起で調べると、
すべてSDカードにデーター化して収める方法があると知り、
早速機械を買った。
 
8月7日から作業を始めた。
VHSビデオはカビだけではなく、テープが切れていたり、
巻き付いていたりトラブル続きだった。
分解して修理して、だましだましなんとか済ませた。
VHSビデオデッキも画像再生に使ったビデオカメラも、
いつなん時、寿命を迎えるのか薄氷を踏む思いで操作したが、
なんとか最後まで付き合ってくれた。
日本の家電の真摯な姿勢に感謝した。
 
ビデオ映像は家族の顔の表情や動作や何気ない言葉がメインで
情景説明のための風景や花のズームアップなど
今となっては邪魔で、スキップしながら
ハイライトシーンだけを収録していった。

画面を見続けて、目が乾き、めまいがするほどの日々だったが、
ようやく10月1日に作業が完了した。
ワインで祝杯をあげた。
技術の進歩は有り難いことで、あの山のような量のテープ類が
SDカード6枚に収まった。
 
赤子の娘や息子が寝返りしては喜び、立ち上がっては喜ぶ
今は亡き両親の笑顔に出会える。
入学式、運動会、学芸会、お花見、ハイキングに旅行、
クリスマスにお正月、誕生会の歓声が昨日の事のようである。

人生は光と影とは良く云ったもので、ビデオ映像は
正に光と影を写しただけのものであるが、
その時その時の生きざまがリアルに映り出され、
空気感や体温や肌触りまではっきりとよみがえる。
 
人生というものは、
二度とない一瞬一瞬のまぼろしかと思い知らされ、
うら寂しい気持ちになったのも正直なところだ。


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