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魔法を掛けてやる!

魔法使いが誰かを見据えて「魔法を掛けてやる!」と言うとき
英語では Put a spell on you  ! という。
「spell」は例の単語のつづりのことだが、
魔法の呪文という意味が後ろに控えている。
確かにアルファベットをDOGと並べると、
犬のイメージがポンと湧いてくるし、
GODと並べ替えると、白い髭の杖をついたお爺さんの姿の
神様が目に浮かぶ。
言葉は魔法だという真理を突いている。
 
「Be spell」という5人編成のジャズグループがある。
ヴォーカルを担当しているのはNoriko Suzukiで、20年も前に、
オーガニックコットンの営業チームのスタッフとして
手伝ってもらっていたことがある。
音楽活動がメインなので仕事上の長いお付き合いでは無かったが
印象に残る人物だった。
帰国子女で英語のセンスがよく、新しい布地の名前を
考えてもらおうと生地見本を差し出すと
一瞬で言い表すのには驚いた。
毛皮のような布地に「キャッツベリー」、
ネコのお腹の柔らかい毛足からのイメージだろう。
短い糸のループの布地は「スリーピーシール」、
眠くてゴロリとしたアザラシと名付けた。
現在でもこの名前はそのまま大事に使われている。
この天才的なネーミング力は自身のバンド名の「Be Spell」魔法を掛ける、
でも遺憾なく発揮されている。
演奏者は如何に自分たちの世界に引き込むか聴き手に
魔法を掛けているのである。
 
古来、言葉には霊的な力があるとして人は「言霊」と呼び、信じて来た。
忌み言葉というのがあって
結婚式では、切れる、割れる、破れるは禁句。
葬式では、重なる、次々、続くは禁句。
また中華料理店で「福」という字が
逆さまになった看板を見ることがある。
これは、福が天から降ってくるようにとの縁起担ぎと聴いた。

名付けの天才ジャズシンガーNoriko Suzukiは
最近「存在の耐えられない軽さ」というアルバムを発表した。
心地よいスモーキーヴォイスで円熟さを感じる。


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