メロンとココナッツのスープ
果房 メロンとロマンがメロンを使ったお家で楽しめるレシピを発信する企画、「メロンのレシピノート」。
第17回も前回に引き続き、果房 メロンとロマンが位置する東京・神楽坂で日本茶と日本の四季折々の食材を用いたフレンチベース料理を、自身の経験や感性を存分に活かしながら提供し人々を魅了する「HASABON」の小坂孝弘さんがレシピを一緒に考えてくださいました!
店名の「HASABON」とは禅語の「破沙盆」に由来する。壊れたすり鉢の意味だが転じて「円熟した境地」というよい意味で用いられる言葉。お店では、日本茶をテーマに、四季折々の料理のほか、日本各地の作家による陶芸作品のギャラリーや日本文化を感じるワークショップを楽しむことができます。
➖今、お店のメニューを考える際に大切にされていることは何ですか?
まず1つ目に季節感。旬のものを使うことです。これは日本料理の経験が活かされていると思います。
2つ目は「ありそうで無い組み合わせ」です。美味しいことは大前提で、お店にいらしたお客さまに発見や驚きをしていただきたいと常に考えています。
➖食材の組み合わせはどのように思いつくのでしょうか。
食材を多面的に見ること、です。例えばメロンだったら「メロンはどのような要素で構成されているんだろう、メロンの魅力って何だろう」と考えてみると、香り、甘味、旨味、ウリ科特有の青い香りがする皮に近い部分、美しい網目模様、などの要素がありますよね。その中でどの部分を引き立たせようか、どうしたらひとつひとつの要素がより美味しくなるかを考えますね。だからこそ、食材の成分を知ることも重要になってきます。「この食材はグルタミン酸があるから、イノシン酸と相性がよさそうだな」と考えたり。
あとは、日常にあるものからもたくさんヒントが得られます。例えばメロンといえば生ハムメロンはよく知られたレシピですよね。そこで、「生ハムの代わりになる食材は何かな」と考えるんです。
相性の良い食材同士の組み合わせは経験から、感覚的に分かる部分もあるので、その感覚をベースに理論を組み合わせて考えていきます。
「HASABON」に来てからは、料理をする機会がさらに増えて、食材の組み合わせを脳内でイメージする力がさらに鍛えられた気がします。常連のお客さまがたくさん来てくださるので、なるべく毎回違う料理を味わっていただきたいという思いで試作を重ねるうちに、頭の中でシミュレーションしたレシピの味と、実際に試作・試食してみたときの味にブレがあまりなくなってきました。これも経験のおかげですね。
➖「HASABON」で日本茶を扱ってみて新しい発見はありましたか?
このお店に来ることが決まってから茶道を習い始めて3年が経ちますが、料理に少なからず影響を与えていると思います。
掛け軸があって、器があって、お茶がある。たくさんの美しいものに囲まれた空間で、良いもの触れる機会はとても大切ですね。
あとは、茶道を初めてからお皿を割らなくなりました。茶道では道具の扱いや所作を非常に大切にします。器を美しい姿勢でしっかりと持つことで、器を割らずに大切に扱うことができます。
器を置く際に、置いてすぐに手を離すのではなく、ゆっくりと手を離すようにと言われたことがあります。茶道の用語で「残心」という心の状態なのですが、動作が終わった後も、意識を器に向けると器を倒したりすることは絶対にないんですね。茶道では一つ一つの所作が理にかなっているんです。
➖今回のレシピは「メロンとココナッツのスープ」ですね。このレシピはどのような経緯で生まれたのでしょうか?
メロンについて調べていたら、「マスクメロン」の「マスク」とは「香り」を意味することを知りました。
そこで今回二つ目のレシピは、メロンの香りに注目して考えました。
皆さんに作っていただくときにはなるべく日常的な食べ物にしたいなと思いついたのがフルーツポンチでした。メロンの甘い香りを邪魔することのないフルーツポンチの構成を考えていたときに思いついたのが、インドのデザート「パヤサム」です。パヤサムは通常、揚げた麺やフルーツ、カルダモンなどのスパイスを入れて牛乳で甘く煮込んで作ります。
➖インドの料理が登場するとは驚きです!
お店でも料理を考えるときは、国籍は関係なく参考にしていますね。プライベートで食べてみて美味しかったものからレシピを思いつくことも多いです。フレンチじゃないとダメ、とは全く考えず、自分の食べたいものを軸にしてメニューを考えていますね。
今回はパヤサムのレシピをベースに、メロンと相性の良いココナッツミルク、スパイスには青い香りがあるものや甘いものと相性が良いスターアニスを用いました。
タピオカとアーモンドはよりメロンの甘い香りを長く楽しんでいただくために咀嚼の回数をふやす役割をしています。白玉を代用しても良いですね。
メロンは彩りを考え、青肉と赤肉を使用していますが、赤肉の甘味や香りに特に合うのでおすすめです。
➖ちなみに、このレシピに合わせるおすすめのお茶があれば是非教えてください。
メロンやココナッツの香りに相性の良いジャスミン茶がおすすめです。華やかな香り同士とても合うので是非試してみてください。
今回は2回にわたり、HASABONのシェフ小坂さんのお話をお伺いしました。
一皿一皿の背景に、食材への深い理解や、食べる方々へ向けて考え抜かれたレシピがあることを知ることができました。メロンを成分の面からも分析していただき、大変勉強になりました。小坂さん、どうもありがとうございました!
HASABON・小坂さんが教えてくださったレシピ:
メロンとココナッツのスープ(1人分)
材料
メロン(赤肉)…1/4玉
ココナッツミルク…200g
牛乳…200g
グラニュ糖…60g
塩…ひとつまみ
スターアニス…1個
ミニタピオカ…適量
アーモンド…適量
ミント…適量
※メロンは赤肉がおすすめだが、青肉と赤肉両方使うと彩も鮮やか。
事前の準備:
つくりかた:
1.ミニタピオカを10分茹でる。
2.ココナッツミルク200g、牛乳200g、グラニュ糖60g、塩ひとつまみ、スターアニス1個を鍋にいれる。スターアニスは手でかるく砕いてから入れる。
3.2.を火にかけ、沸騰直前になったら火を止め、5分間おいておく。5分間おいておくことで、スターアニスの香りを抽出することができる。
4.8分の1にカットしたメロンを丸くくり抜く。くり抜き器がない場合はお好みのサイズに乱切りでもOK。
メロンは赤肉がおすすめだが、青肉と赤肉両方を使うと彩りも鮮やか。
5.3.が5分経ったら、すべてミキサーにかけ、スターアニスが見えなくなるまで攪拌する。攪拌した後、ざるでボウル濾して残ったスターアニスを取り除く。
6.5.を氷水にあてて粗熱をとる。1.で茹でたタピオカもあわせておく。
7.6.が冷えたら、適量をお皿に注ぎ、メロンを浮かべ、砕いたアーモンド、ミントをのせて完成!
HASABON(ハサボン)
〒162-0831
東京都新宿区横寺町30
神楽坂茶ノ木テラス101
tel 03-6427-5448
[火〜金]
11:00~14:00
17:00〜23:00(コースL.O.21:00)
[土・日]
11:00〜23:00(コースL.O.21:00)
定休日
月曜日、月2回(隔週金曜日)ランチ営業休み
※営業時間が変更となる場合があります。
詳しくは店舗(03-6427-5448)にお問い合わせください。
photo:Takashi Sato
text:Mayuki Tsujihara
(果房 メロンとロマンのディレクターとして働きながら、ライターとして日本の島々をはじめとして、地域と食をテーマに取材を行なっております。好きなメロンはタカミメロン。)
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