家賃25000円のボロ家に住んで⑬
このボロ家日記にほぼ毎回のように登場してくる下の階のおばあちゃん。
おばあちゃんと僕との血で血を洗う闘いを楽しみにしてくれる方が多く、もっとおばあちゃんとの絡みが読みたいという話を聞いたりする。
都会で忘れかけていた人と人との温もりをこのボロ家日記で享受できたという意見も少なからず頂いている。ありがたい。本来ならおばあちゃんの家でのティーパーティー編とかも書きたいのだが、元来の人見知り体質がそのステージまでの妨げになっていることはまずお詫びしたい。
さて、少し前に読者の方から
「おばあちゃんを大家さんと勘違いしていました!」
という意見を何件か聞いた。
おばあちゃんは僕と同じボロ家の住人であり僕たちの間に甲乙の関係は存在しない。なぜそんな勘違いを起こしたのだろうか?アパートに住む老人は大概大家さんだという潜在的な刷り込みからだろうか?さらに詳しく聞いてみると
「カラテカの矢部さんの「大家さんと僕」と混ざったのかも知れません!」
と言われた。
「大家さんと僕」は当然名前は知っていた。しかし勉強不足から読んだことは無く内容はまったく知らなかった。小説なのかマンガなのかも知らない。勘違いしたと言うことは「大家さんと僕」の大家さんがおばあちゃんなのだろうか?
僕はどこまでも追い掛けてくるおばあちゃんの家賃の回収からの逃走劇の話かなあと過激な方に想像を膨らませた。最近マイノリティリポートを見返した影響だと思われる。
そしてある日の配信中、視聴者のコメントでこんなことを言われた。
「メロディさん!あれ大家さんと僕のパクリでしょ!似すぎですよ!」
いやいやいやいや待て!
落ち着いてくれ。僕は引っ越しの時にお金が無くてたまたまこのボロ家にしか住めなかっただけ。そしてコロナの影響で家に籠もりきりなので、試しにボロ家日記を書きはじめて、たまたまおばあちゃんが下に住んでいたから頻繁に登場してくるだけ。おばあちゃんが出てくるってだけでパクリは可笑しいでしょう。
重箱の隅を突っついてくる輩が世の中にはいるんだなと思った。僕は「大家さんと僕」のようにおばあちゃんと家賃の取り立てで空中戦を繰り広げた事はないぞ。
僕の中で大家さんと僕のストーリーはバトル方向にドンドン進んで行っていた。
しかしそのように言われると読んでみたくなるもので、ネットで序盤だけ読めるようなので読んでみることにした。今後の執筆(と言えるほどたいしたものでもないが)の何か参考になるかも知れないし。話の大体の内容はこんな感じだった。
矢部太郎が引っ越した先は木造2階建ての一軒家。2階が矢部の部屋であり、1階には大家さんであるおばあちゃんが住んでいる。大家さんとの一つ屋根の下の2人暮らし。そんな「大家さん」と「僕」との交流を描くハートフルコメディ。
ほぼ一緒だ!!!!!
これはパクリと言われても仕方がないかもしれない。家の間取りまで一緒だ。
よく盗作疑惑をかけられているミュージシャンや作詞家が「たまたま似てしまった」と言っているのを見て「嘘をつけ!たまたま似るわけがないだろ!」と鼻をほじりながら思っていた。だが、信じてくれ!これは「たまたま似てしまった」のだ!盗作なんて地平線の向こうの世界で僕とは無縁な物だと思い込んでいた。
嗚咽が止まらなかった。大家さんであるおばあちゃんの上品な雰囲気や少し抜けているキャラクターの良さ。たった数ページ読んだだけだが類似点は沢山見つかった。しかも向こうのおばあちゃんの方が矢部さんの留守中に勝手に部屋に入って洗濯物を取り込むなど若干キャラが強い。
だが序盤数ページ読んだだけなので、ここから闇の大会でのトーナメント編や大家さんとの特殊能力バトルといった謎展開に発展するかも知れない。そう思い込むことで心を落ち着かせる事にした。あのキン肉マンも序盤はギャグ漫画だったのだから。
「法廷で争いましょう」
矢部さんにそう言われる夢を見てハッと昼寝から目が覚めた。財布の中を確認した。裁判の費用なんて持ち合わせていない。
憂鬱な気持ちを晴らすように窓を開けて外を見た。下から声がした。
「そろそろ雨が降るから洗濯物を取り込んだ方がいいわよ」
おばあちゃんがいた。確かに空は曇り始めてきていた。
「前に雨の中洗濯物出しっぱなしにしてたでしょ?また洗い直しになったら勿体ないから早くしまった方がいいわよ」
ボロ家日記⑧での蜂との戦いで洗濯物が取り込めなくなった時だろうか?おばあちゃんはあの時も心配してくれたのだろうか?
僕はお礼を言って洗濯物を取り込んだ。間もなく雨音がボロ家に響き始めた。
向こうの大家さんは留守中に洗濯物を部屋に入って勝手に取り込む。うちのおばあちゃんは雨が降るわよと教えてくれる。そんな2人に共通するのは人を思いやる気持ちだ。
この対応の違いを理由にパクリじゃないことを証明したいわけではない。どっちのおばあちゃんも其れ其れの優しさを持ったステキな人だということだ。
僕は、これからも世界に1人のボロ家のおばあちゃんのステキな所をこの日記でお伝えしていきたいと思う。
もしそれでもパクリだと言われたらおばあちゃんに必殺技を持たせてバトル日記に舵を切ろう。
本日は以上になります。いつもスキやサポートをありがとうございます。今回も良ければお願いします。
いざという時の矢部さんとの裁判費用に充てたいです。
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