#20 映画「神在月のこども」感想

母を亡くしたトラウマを抱える少女が冒険を通じてそれを克服していく物語。オリジナル長編アニメ。制作会社はライデンフィルム。原作・コミュニケーション監督に四戸俊成氏がクレジットされているが、「コミュニケーション監督」とは何なのだろうか?制作総指揮みたいな意味だろうか。

ジャンル:SF
要素:日本神話、走、家族
キャッチコピー:「出逢ったのは神と鬼――」「その島国の根に在る場所へ。駆ける少女のものがたり」

【脚本】
三宅隆太、瀧田哲郎、四戸俊成の3人による共同脚本。
面白くない。登場人物のあらゆる行動の動機がよくわからない。言い換えると、都合が良すぎる展開の連続。その割にテンポが悪い。作品のプロットは「出雲に到達するという目標を掲げた冒険物語で、その道中で主人公が成長していく」というお決まりのものである。プロットは悪くないと思う。が、突然うさぎが喋り出したり、ツンデレな鬼が出てきたり、よく分からない龍に試練を与えられたり、あまり魅力のかけらもない敵に洗脳されたり。見ていて退屈だった。
この作品における成長とは、走る喜びを思い出すこと。ならば、ここをたくさん描写すべきなのでは?この成長のシーンは最後の方にちょろっと描写されるだけで印象が薄い。ここの演出も微妙。音楽の力で強引に盛り上がりを作る「感動の押しつけ」技法である。あれは、新海誠の専売特許で、彼以外にうまく使いこなしている例が思い浮かばない。
あと、説明セリフが多すぎる。というか、セリフの大半が説明。ある程度の説明は必要だと思うが、もっとコンパクトにできたのではないだろうか。さほど複雑なプロットではないのだから尚更そう思う。
私なら、時間制限を活用した脚本にする。話の軸を「時間との戦い」にする。その方がテンポが良くなると思う。トラウマ克服→時間がない→走る→間に合わないという図の方がよっぽど面白くなったと思う。

【演出・作画】
上でも少し言及したが、微妙。「走る」というアニメで表現するのにもってこいの題材なのに印象に残ったシーンがない。残念。脚本のせいでもある気がする。新海誠の『天気の子』の帆高が走るシーンの方がよっぽど「走る」を印象付けていた。
作画も劇場用作品の割にあんまり良くない。作画崩壊とかではないが、映画館で見て良かったと思わせるほどのものはない。

【音楽】
市川淳、NAOKI-Tの両氏が担当。
この映画唯一の救い。サウンドトラックは良かった。

【総評】
アニメーション監督は白井孝奈氏
厳しい評価をせざるを得ない。神話や家族をテーマにするのならもっと面白い作品に仕上げられると思うのだが。オリジナル作品ということで、筆者は勝手に期待のハードルを上げていた。それゆえ、期待はずれで、とにかく残念。
あと、この作品はどの層をターゲットにしていたのだろうか。どちらかというと、子ども向け作品な気がするが。持論だが、大人が楽しめない子ども向け作品は、子どもが見てもつまらない、と筆者は考えている。

【満足度】
50点

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