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1991年 SideB-4「LAST LOVE/杏里」

杏里作詞・作曲 小倉泰治編曲

・「結婚しないかもしれない症候群」(日本テレビ系 1991/10/19~12/21)主題歌

 日本テレビ系水曜10時枠10月クールドラマ主題歌。本人作詞・作曲のシングルは、書き下ろしとしてはこれが初めてである。そしてまた「結婚」。これでこの年5作目である(このあと「プロポーズ」も出てくる)。
 
 もし「結婚ブーム」なるものがあったとして、そのきっかけを探すとすれば、前年1990年の11月に刊行された谷村志穂のベストセラー「結婚しないかもしれない症候群」ということになるだろう。様々な独身女性からの聞き書きをまとめたエッセイ。これはそのドラマ化である。主演は麻生祐未、紺野美沙子、東ちづるの20代後半の3人。「HANAKOの結婚」の3人との年齢差はそのまま収入の差として現れている。

 「キャリア」「恋愛」「夢」「不倫」と、両ドラマで描かれるテーマは実はあまり変わらないのだが、最大の違いは「~症候群」の3人は男選びの条件に相手の収入を含んでいないことだろう。登場人物の一人は、不倫相手の慰謝料や養育費も自分が工面するとまで言い出す(このエピソードは原作にも出てくる)。経済的なことだけならば一人でも生きていける。そのことこそが「結婚しないかもしれない」という選択を可能にした要因であり、”バブル”という時代の反映だったのである(のちの考察ではこの頃すでにバブルは終焉を迎えつつあったのだが、渦中の当事者たちはまだそのことに気づいていない)。男女とも婚活全盛の今から振り返るとまるでファンタジーの世界だが、ドラマの方はもう少し地に足の着いた(言い方を変えると普通の)物語になっていた。杏里の主題歌も、結婚を前にして戸惑う女性の心情を描いたものになっており、これまた「Hanakoの結婚」の主題歌とは好対照、というかベクトルが正反対である。

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