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1993年 SideA-10「Show Me Your Firetruck(映画「バックドラフト」サウンドトラックより)/Hans Zimmer」

Hans Zimmer作曲・編曲

・「料理の鉄人」(フジテレビ系 1993/10/10~1999/9/24)テーマ曲

 USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の人気アトラクション「バックドラフト」を見ていると、今にも鹿賀丈史が出てきてパプリカを齧りだしそうな気分になる。それくらいこのハンス・ジマーのメロディーは「料理の鉄人」の映像と一緒にわれわれの体に染み付いている。特に印象的なオープニングのBGMとして使われていたのが、この「Show Me Your Firetruck」である(ほかにも番組の随所に「バックドラフト」のサントラからの音楽が使われている)。

 「料理の鉄人」は、それまであった料理番組というジャンルを劇的に拡大した革命的番組であった。すなわち料理そのものではなく、料理を作る過程をエンタテインメントにして見せた。それも「世界の料理ショー」のような予定調和的演出ではなく、一流料理人たちの技と独創を戦いとして楽しむ、という視点はそれまでにない全くあたらしいものであった。“美食アカデミー”や“キッチンスタジアム”といった大仰な舞台設定や、主宰の鹿賀丈史、実況の福井アナ、解説の服部幸應、審査員の岸朝子ら、各ポジションのキャラ立ちの絶妙さから、プロレス的演出と形容されることも多かったが、個人的には一流料理人たちのパフォーマンス合戦に、バンドマンがしのぎを削るジャズ・セッションの趣を感じた。

 そしてもうひとつ。構成の小山薫堂や演出の田中経一など「カノッサの屈辱」チームが多く参加していたこの番組にフジテレビ深夜番組群のDNAを感じた人は多かったと思うが、主に低予算であるが故に編み出された深夜番組の方法論の妙が、こうした予算も手間もふんだんにかけた番組でも違和感無く発揮され得たということもフジテレビにとっては大きかったと思う。ある意味この「料理の鉄人」こそ、80~90年代をリードしてきたフジテレビ的バラエティーのすべての要素が結集した頂点だったといえるかもしれない。

 この番組の“超虚構空間における即興の真剣勝負”という虚実のギャップを埋めていたのはなにより豪華食材のリアリティーであり、そのリアリティーと料理人たちの真剣さが「美味しそう」を超えた快感を視聴者に与えていた。大きな予算と手間をかけなければ成り立たない番組だったし、そうした番組形式自体がこの時代でなければ実現しないものだった。2013年の復活版「アイアンシェフ」が失速したのも無理はなかった。

(次回からは、SideBです)

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