見出し画像

1993年 BonusTrack「WE ARE THE CHAMP~THE NAME OF THE GAME~/THE WAVES」

Armath、J.Deja作詞・作曲 Dale Sandersラップ詞 羽田一郎編曲

・「プロサッカーJリーグ中継」(各局 1993/5/15〜)

 そして1993年といえば、サッカーである。サッカーというスポーツが、国民的規模で日本に根付いたのは間違いなくこの1993年だった。

 1993年5月15日土曜日に国立競技場で行われたJリーグ開幕戦(マリノス×ヴェルディ戦)は6万の大観衆を集め、TV中継の視聴率は32.4%を獲得。皆が海外の名選手たちのプレーに酔い、カズやゴンなど日本選手にも多くのスターが生まれた。以前からのサッカーファンは、そんな“にわか”サッカーファンの大増殖にいい気持ちはしなかったろうが、“にわか”が増えなくてはブームにはならない。

 そしてそんな“にわか”ファンたちの心のBGMが、この「WE ARE THE CHAMP」であった。「オーレオレオレオレ」という印象的なコールは、自然発生的にさまざまなスポーツで使われていたようだが、この旋律と歌詞がはっきりレコーディングされたものとしては、ベルギーの歌手ル・グラン・ジョジョが、RSCアンデルレヒトというベルギーのサッカーチームの優勝をたたえて歌った「アンデルレヒト・チャンピオン」という曲が最初らしい。その後、作者のひとりのArmathことローランド・ヴェルルーヴェンがFANSというグループ名で「The Name of the Game」という曲をリリース。「WE ARE THE CHAMP」はそのカバーである(このWAVESのCDシングルには、ご丁寧にFANSのバージョンがカップリング曲として収録されていて、ガレージ感に溢れた原曲が見事なスタジアムソングに生まれ変わっていることがわかる)。

 この曲どんなサッカー番組でも本当によくかかっていたが、厳密にはJリーグのテーマ曲ではなく日本代表チームの公式応援歌であった。Jリーグの公式テーマ曲はTUBEのギタリスト・春畑道哉の「J’S THEME」という曲で5月15日の開幕戦でも春畑によって生披露されている。ちなみに同日TUBEのボーカル・前田亘輝も会場で「君が代」を歌っている。すなわちビーイングはこの時期野球・サッカーの双方を制していたことになる(1993年 SideA-7参照)。

 この年、サッカーというスポーツを国民的な共通体験にした出来事がもうひとつある。10月28日木曜日のいわゆる“ドーハの悲劇”である。翌年のアメリカW杯のアジア最終予選最終戦(対イラク戦)で、日本代表はW杯初出場を目前にしながら、後半ロスタイムに追いつかれ出場を逃した。ブームに浮かれていた日本のサッカーバブルに冷水を浴びせたこの出来事が、長い目で見て、日本のサッカー人気を定着させるのに大きく寄与したことは疑いがない。サッカーとはこんなにもドラマチックなスポーツなんだという事実が、にわかサッカーファンの脳裏にもくっきりと刻まれたのだから。ちなみにこの試合はテレビ東京で生中継され視聴率48.1%を記録。当時のテレビ東京における歴代すべての番組の最高視聴率であり、サッカー中継全体で見てもW杯本番の試合以外では現在でもこの試合が最高視聴率の記録を持っている。

(次回からは、1994年です)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?