ジェンダーレス制服
新年度を迎え、真新しい制服に身を包んだ中高生を見かける季節になりました。
かつては男子は詰襟、女子はセーラー服、近年ではブレザーの制服の学校が主流になり、男子はネクタイにスラックス、女子はリボンにスカートの学校が多くなっていましたが、男女の性差を問わないジェンダーレスという言葉が聞かれるようになるにつれ、教育の場でもLGBTQへの関心が高まり、多様性に配慮した学校が取り入れだした『ジェンダーレス制服』の導入が全国で活発になってきています。
個性を尊重するという意味合いから制服を自由選択できる取り組み自体は、数年前から少しずつ始まってきていましたが、ジェンダーの多様性という意味合いでの自由選択の導入は2018年ごろからにもかかわらず、2021年度に取り入れた学校は1,000校以上にも上り、この3年で2.7倍の増加だそうです。
制服というフィルターを通じて、徐々に広がりつつある教育現場における性的マイノリティへの理解と関心ですが、今後さらに広げていくためには、本当の意味で「自由に」制服を選択できることが重要です。
現状ではジェンダーレス制服を導入している学校の多くが、「基本的に」女子はスカートかスラックスを選べ、男子も「希望」すればスカートを選べるといった状況です。
選択の幅が広がったことについては歓迎すべきことですが、スラックスを選んだ女子を少数派と偏見の目で見たり、スカートを希望した男子がいじめの標的にならないように、少数派の多様性を周りが認める環境づくりも必要になって来きます。
よく見かけるタイプのジェンダーレス制服の広告などはモデルが3人構成で、ブレザーにスラックス姿の男子に、スカート姿の女子とスラックス姿の女子というものです。男子のスカート姿のモデル画像はまだ見かけたことがありません。
そういった広告による情報の力は絶大であり、女子のスラックス姿は「当たり前」のものとして認識されていきつつありますが、今後は、男子のスカート「希望」についても「選択」にし、環境として違和感なく「当たり前」にしていくことが必要です。
わざわざジェンダーレス制服という名前を付けずとも、制服モデルにスカート姿の男子の姿を「当たり前に」見かけるようになった時にはじめて、制服のスタイルが選択できることが自然で当たり前のことになり、自認する性に合った制服が当たり前に着られる環境になる。その時が本当の意味でのジェンダーレス制服導入の目的が達成された時となるのではないでしょうか。