音楽サブスク主流の総合チャートについて考える

2021年現在のBillboard HOT 100およびオリコン合算シングルチャートで最も影響力を持っているのはSpotify、Apple Music、LINE MUSICなどのストリーミング(音楽サブスク)のランキングになっています。オリコンの合算シングルチャートはCDのウェイトが高すぎるという意見もありますが、それについては別の機会に触れたいと思います。

1990年代まではCD売上ランキングでもきれいな山型(楽曲の人気が高まるにつれ順位が上昇し、ピークを迎えた後徐々に新しいヒット曲に上位を譲っていく)のチャート推移を描く楽曲が多く見られました。

楽曲人気の推移が点や急降下型ではなく山型の形状で的確に把握できるランキングこそがその時代のメインのチャート構成要素となるべきだと思っていますが、楽曲のダウンロード販売が始まった2000年代からは、それがCDチャートからダウンロードチャートへと移行し、さらに現在は、それがストリーミングへと移行しているのだと感じます。

ただ、多数派のランキングファンに呼応して「ストリーミングこそヒットの鏡。」と自分も手放しで賛同したいけれどできない自分がいます。それは、綺麗な山型…を越えて台形型のヒット曲があまりにも多すぎるから。

おそらくその理由は、今のストリーミングチャートが、1980年代当時のレコード売り上げの要素と有線放送リクエスト(カラオケリクエスト)の要素の両方の役割をひとつだけで担ってしまっているからではないかと推測しています。

「ザ・ベストテン」放送当時、長期間上位にランクインする曲、もしくは通常放送回では11位~20位で短く紹介されるだけだったのに年間チャートではトップテン入りする演歌勢のロングテール部分を支えていたのは主に有線リクエストでした。発売して間もない頃はレコード売上が、しばらくたった後はラジオと有線が順位を支える要因になっていました。でもあくまで有線はランキングのメインではなくサブの構成指標だったので、うまい具合に新曲との入れ替わりが起きるように調整されていたように思います。

それが今はストリーミング一つに混合してしまっていて、かつストリーミングが総合チャートのメイン要素に格上げされてしまっている(それ自体は時流として正しいと思います)ので、副作用としてロングテールが効きすぎてしまうのかなと思っています。ストリーミング自体が、最も再生されている曲がこれからも最も再生され続けやすくなる傾向を加速しやすいサービスになっているのもあります。今のアーティストは他アーティストの曲ではなく自分j自身の過去の代表曲が越えるべき最大の壁になっているのかもしれないです。髭ダンは「Pretender」を越えなければならないし、あいみょんは「マリーゴールド」を越えなければならない。

CDTV(ライブライブ)のオリジナルチャートがしばしば、ビルボードっぽいのにCDが強すぎるみたいだと批判的に分析されているのも、同じTBS系列で間違いなくザ・ベストテンのノウハウを引き継いでいるであろうことが背景にあるのではないかと予想しています(業界人ではないので外野から想像するだけですが)。


解決策はおそらく、サブスクに参入するアーティストがもっと増えて、その結果としてより多くの趣向をもったユーザの再生行動が反映されることしかないのかなと思います(あるいは米ビルボードのような日本版のリカレントルールを導入するか)。トップ50までのほとんどがあいみょん・髭ダン・米津の3組だけで独占されてしまっているという極端な状態からは改善されていますが、まだまだ上位が同じ曲の寡占状態になっていて、100位前後までページダウンして見ないと最新リリースのヒット曲のチャートアクションが観測できない状態なので、もっと活気が出ればいいなと期待しています。(そして私個人としてはロングテール楽曲に埋もれたとえ総合チャートで下位になっている中からも自分の心に刺さる曲を発掘し続けてオリジナルチャートに反映していけたらと思っています)。


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