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短いおはなし7

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2024年3月の記事一覧

今日も一日を繕いながら。

今日も一日を繕いながら。

クマは、取っ手がとれて、くっつけたティーカップで、アールグレイティーを飲んだ。緩んだボタンをつけなおしたコートで病院に行った。近くに良い本屋を見つけた。帰りに、出かけなくなった親に春物のピンクのセーターを買った。ちいさな庭でひっそり咲いた花の写真を撮った。今日も一日を繕いながら。

グレーのうさぎの女の子

グレーのうさぎの女の子

「グレーのうさぎの女の子」

世界の管理人が言った。
あ、この世界にはとくに
温情とか意思疎通とか礼節とかは
備わっていません。
まあ、あるのは、キッチンと
やせた庭と古いギターくらいです。

グレーのうさぎの女の子が言った。

期待してなかった。
それだけあれば、十分。

なにもないと、あとは希望しかない。

なにもないと、あとは希望しかない。

恵まれないきつねは思った。おれは天才でなくてよかったな。だって、天才ゆえの苦しみとかありそう。その点おれは、頑張るだけ。成功も幸福もあまりなくてよかった。失うの怖くなりそう。才能も成功も幸福もないって、自由だな。なにもないと、あとは希望しかない。光は今日も音楽みたいにきれいだな。

その先に、必ず良きものがある。

その先に、必ず良きものがある。

世界の果てのある国の人々は、やはり、困難な日々を生きていたが、なぜか、その先に、必ず良きものがある、と無闇に感じていた。そして、そのためにできる限りのことをした。体力と知力と無限の想像力と、怒りと冷静さと優しさで、挑戦を繰り返した。ときにさぼり、愚痴り、絶望しながら☺️

耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。

耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。

耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。座席は、薄暗い個室のティールーム。花と葉とアンティーク。ハンサムな猫の給仕がベルガモットのお茶を淹れてくれる。3段のお皿に焼きたてのお菓子達。長いソファに顔をうずめて大声で泣く。疲れて眠る。ハンサムな猫の給仕がそっと毛布をかけてくれる。