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2019年11月の記事一覧

自尊心を傷つけられたよ。

自尊心を傷つけられたよ。



‪自尊心を傷つけられたよ。‬
‪子ぐまが言った。‬
‪クマが言った。‬
‪傷つけられたのは‬
‪きみの醜い方の自尊心さ。‬
‪きみの良い方の自尊心は‬
‪きみだけじゃなく‬
‪目の前のものごとが‬
‪よりよくなるように‬
‪苦労した中から育ってゆく。‬
‪醜い方は、大事にしなくていいよ。‬

魂の電気で走る電車。

魂の電気で走る電車。

‪子ぐまにクマが言った。きみが誰かに救われたとする。でも、そのうちそれを失うことを恐れる。救いは内にしかない。うたは、海は、内にしかない。きみはさざめく夜の海峡を魂の電気で走る電車に乗っている。きみの切符はうただけ。未明の食堂車。そっと出された皿には、冬の花びらがひとつ。‬

過去と今にバカでいよう。

過去と今にバカでいよう。



‪きつねは思った。
憧れて話すものと、
実際は反対の生活だ。
散らかって、
身体が動かなくて、
気持ちが沈む。
やるときはなんとかやるけど、
やらないときは0以下だ。
でもね、
バカでいよう。
過去とか今とかすぐ忘れて、
憧れの続きを夢中で話そう。
リボンのような
初冬の花のことだけを
夢見心地で。‬

普通という呪いを解く。

普通という呪いを解く。

ある女の子は、
大人になって普通のことができなくなり、
だめな女の子になった。
ある朝、女の子は枯れ朽ちる美しい葉を
じっと見つめた。
普通という呪いが解けてきた。
女の子はいびつで豊かな庭を
こころにつくり、
そこで自分なりに
勝手に真摯に生きることにした。
枯れ朽ちる葉が
かさかさと風に歌った。

なにを生きるか。

なにを生きるか。

世界の果てのある町のひとたちは、
今日のつらさだけを生きてはいなかった。
過去を生きてもいなかった。
その町のひとたちは、
つづきを生きていた。
だからうかつに悲しんだり、
みじめになったりしなかった。
その町のひとたちは、
つつましやかに、より良くなるように、
大きくたゆたう
つづきを紡いだ。

調子が悪い自分として。

調子が悪い自分として。

‪きつねは思った。調子が悪い時に、調子がよい自分として考えるのはやめよう、調子が悪い自分としてつつましく考えよう。いつも結論や結果がでてなくてもいい。だれもそれほど他人のことなんて気にしていない。はみ出した花のことを考えるのも今日はやめよう。‬

普通じゃないから、ぼくはダメだ。

普通じゃないから、ぼくはダメだ。

‪普通じゃないから、ぼくはダメだ。子ぐまが言った。#お洒落なオカマのキツネ が言った。あんたの普通ってただのイメージ。嘘なの。本当の普通は、忘れ物したり、後悔したり、体調悪かったり、家がごたごたしてるの。それが普通に生きること。ほら今日も翳る人生に朝陽が射すわ。美しいわね。‬

町が白いから夜明けが青かった。

町が白いから夜明けが青かった。



‪音楽って何?‬
‪子ぐまが訊いた。‬
‪クマが答えた。‬
‪オビドスという‬
‪小さな白い町へ行ったことがある。‬
‪夜明けに城壁の上を歩いた。‬
‪町が白いから夜明けが青かった。‬
‪城壁はいのちに関わる場所だから‬
‪霊感に包まれた。‬
‪音楽は白い町の青い夜明けに‬
‪城壁の上を霊感に包まれながら‬
‪とぼとぼと歩くことだよ。‬