マーダーミステリーのジャンル分け

not for meに気付かせて

前からこう思っていました。

ことマーダーミステリーに関しては、プレイヤーが「ここが自分には合わなかった」と感じる点、"not for me"を具体的に説明出来ないせいで、個人の趣味による評価と、作品自体の完成度に対しての批評が混同されやすいのではなかろうか、と。

Twitterでシナリオ名指しの「つまらなかった」報告をたまに見かけますが、一方でそのシナリオを絶賛するコメントがあったり、自分がプレイしてみたらめちゃくちゃ面白かったり、ということが往々にしてある。

好みの違いで評価の分かれるような作品が多いのが、この「マーダーミステリー」というゲームだと思うのです。

そしてその悲劇は、一度しか遊べないという性質上、前評判で具体的なシナリオの特徴が分からないことに端を発している気がする。

マーダーミステリーは、ジャンル分けを行うべきではないだろうか?

ネタバレにならない程度のジャンル分けをすることによって、プレイヤーがnot for me作品を避けることが出来れば、もっと適正にシナリオの批評がされるようになるのではないかと思うのです。

ジャンル分け案

◇クローズ型orオープン型

あらかじめ決められた台詞が用意されていたり、プレイヤーに対してアクションの強制がある作品がクローズ型。

一方、現在日本で主流な、カードによる探索や密談などがあり、クローズ型よりも自由にプレイヤーが行動出来るタイプはオープン型と呼ばれます。

◇コージーミステリーorマーダーミステリー

マーダーミステリー作品の中には、「人が死なない」ものもありますよね。

人が死なない、日常の中の謎を解くミステリーを推理小説界隈ではコージーミステリーと呼ぶので、それに沿ってみませんか。

◇ゲーム性orドラマ性

オープン型orクローズ型、マーダーミステリーとコージーミステリー、という分け方は既存の考え方でしたが、ここからはわたしの考えた分類方法です。

プレイヤーの動き方によってプレイ感が大幅に変わる、ゲーム性重視の作品をゲーム性重視

プレイヤー間の難易度差が大きかったり、作品内で真相が分かるように(もしくは分からないように)作られていたりする、ゲーム性よりもドラマ性重視の作品をドラマ性重視、

と呼んで作品の特徴を表せば、not for meな作品を避けやすいように思いました。

ドラマ性重視の作品は誰がプレイしてもエンディングが一致しやすく、そのシナリオを体験するにあたって一定の質が担保されますが、一方でプレイヤーがどんなに頑張ってミッション達成を狙っても、それが実現出来ないような「捨てミッション」が設定されてしまっていることが多いです。

ゲーム性重視の作品は、そんなドラマ性重視作品の短所がカバーされ、プレイヤーが高得点を狙えるようになっていますが、一方でシナリオの全容をプレイ中に明らかにすることは困難となり、一緒に遊ぶプレイヤーのプレイスタイルによってプレイ体験の質が大幅に変わってしまいます。

◇論理or感情

ここもnot for meが起こりやすいと考えたポイント。

真相究明において、トリックやアリバイを検証する数学的な論理パズルの要素がメインになるのか、それとも国語的な読解能力によって動機や登場人物の思惑を紐解くことが重要なのか、という部分。

論理的要素の強い作品を好きな人が読解力重視作品をプレイすると「謎解き」の達成感を得られず納得しないし、読解力重視作品を好きな人が論理的要素メインの作品をプレイすると、ストーリーに没頭出来ず物足りないかもしれないですよね。

ブラックボックスの魅力

以上、4つの観点でマーダーミステリーのジャンルを考えてみましたが、実際に例を示したいと考えたところで、大きな問題が生じてしまいました。

マーダーミステリーの性質である、一回しか遊べないという重大な欠点のために発達した、「ネタバレ御法度」の文化。

これは、期せずしてマーダーミステリーにひとつの魅力を添えました。

ブラックボックスであることの魅力です。

前評判で想像が出来ないからこそ、プレイしてみたいと思う。

そんな心の働きを、我々は無視することが出来ないのです。

私は、マーダーミステリー作品のジャンル大別を行うことが、プレイヤーとシナリオのミスマッチを減らし、マーダーミステリー界の一層の隆盛を図ると信じていますが、中身の全く見えないブラックボックスである魅力を失うことのデメリットもまた否定出来ません。

そのため、自作シナリオ以外をこの場で勝手に紹介するのはやめようと思います。

そもそも、作者によって「ネタバレ」と感じる範囲はそれぞれで、犯人さえ知られなければいいという人もいれば、あらすじ以外はゲームシステムも含め全て秘匿にしたい、という方もいるでしょうから、今回は自作シナリオのジャンル分けのみ行います。

シナリオ紹介例

one for all,all for one

◎マーダーミステリー
◎オープン型←☆☆★☆☆→クローズ型
◎ゲーム性←☆★☆☆☆→ドラマ性
◎論理←☆☆☆★☆→感情

Jury sistem 

◎マーダーミステリー風ゲーム
◎オープン型←☆☆☆★☆→クローズ型
◎ゲーム性←☆☆☆★☆→ドラマ性
◎論理←☆☆★☆☆→感情

山椒大夫の水瓶

◎コージーミステリー
◎オープン型←☆☆★☆☆→クローズ型
◎ゲーム性←★☆☆☆☆→ドラマ性
◎論理←☆☆☆★☆→感情

おわりに

マーダーミステリーの更なる発展を願い、プレイヤーとシナリオのミスマッチを防ぐ目的で、ジャンル分けを提案し、例として自作シナリオの紹介を行いました。

もしマダミス作家さんが自作シナリオの紹介をなさる際の参考になれば嬉しいです。



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