見出し画像

渦中から君へ

夜のランニング。
いつもの道と一本違う道を走っていたら、思いもしない方向への迂回を迫られることになった。曲がってみると巨大なゴルフ練習場が出現した。存在すら知らなかったそのゴルフ練習場はぞっとするくらいに高い鉄塔に囲われ、もちろん人はいない。練習場の付近には同じかたちの団地が連なり、通りにはまったく車は通らない。ゴルフ練習場に沿った道をぐるりと走るうちに、今度は大きな煙突、複雑に絡まり合うメタリックな配管。こちらも練習場に負けじと広大な工場か出現した。しかも門が開いていた。稼働しているのだろう。工場の前には廃線路があるが、これは工業用に敷かれたもの。その廃線路に平行した道は新しくて広い二車線に加えて両側に歩道があり、車はまったく通っていない。だから本当に走りやすいのだけれど、あまりにも馴染みのない景色だったので、なんだか全く知らない工業地帯を走っているかのような感覚になった。みおさんに説明するならFF7のミッドガルみたいだとでも言うかもしれない。それに今日は音楽を聴いている。これまでならラジオの録音を聴いていることが多かったのだけれども、最近では昼間にいくらでも聴けるようになった。だから代わりにThe Strokesの新しいアルバムを聴いていた。これがすごくよかった。よかったけれど、ランニングに適しているかどうかは微妙かもしれない。なんだかお酒を飲んでたゆたっているような、もうすぐにでも眠ってしまえるような気分にもなった。もしかしたら穏やかないまの気候も関係しているのかもしれない。とにかくその見慣れない風景と、聴こえてくるたゆたうようなギターの音がとても心地よかった。

4月が終わり、例年ならゴールデンウィークが始まろうというこの時期なのに、旅行やら帰省やらの心配をすることもなく、ずっと書きたいと思っていたこれを書き始める。

いま君はみおさんと寝室で寝ているわけだけど、明日も今日と同じようにぼくの実家に行き、ばあばと遊ぶことになっている。もうすっかり実家の周りを歩くのが日課になっていて、ばあばが買ってくれた靴はあっという間に真っ黒になった。明日あたり保育園に寄って置きっ放しになっているもう一つの靴を持ってこようかな。右にうさぎさん、左にくまさんが描いてあるやつだ。二足あれば、片方を洗っておけるしね。

今朝は家にあるほとんどのぬいぐるみを持ってでかける勢いだったけど、なんとかごまかして4、5体ですませた。結局、キティちゃんとリュックにマジックでくっつくクマさんはばあばのうちにお泊まりしている。明日は何を持って行きたがることやら。

こんなたいへんなことになっているけれど、きっと君の記憶には残らない。
本当なら保育園での2年目を迎え、そこのお友達連中の輪郭が徐々にはっきりとしてくる年頃になるのだろうけれど、君だけじゃなく、ほかのお友達もすでに自宅でお父さんやお母さんと過ごしていることだろう。考えてみたらぼくも3才までは保育園など行かなかったのだから、別にそれ自体が異常ということはないのだし、考えようによっちゃばあばとともに豊かな日々を過ごしているとも言える。いずれにしろ、それがウイルスが広がった影響だということを知るのは、いったいどれくらい先のことなのか。

わからないけれど、これがどんな感じのことなのか、ちょっとでも君に伝わればいいなと思って書いてみたいと思ったのです。

果たしてどれくらの頻度で書けるかわからないけれど、なるべくたくさん書きたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?