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『月曜日のたわわ』に腐女子の私が思ったこと。

どうも、めらさんです。
2021年5月に息子を出産し、
育児に追われている30代です。
そして私は、10年以上活動を続けている
腐女子でもあります。

件の「たわわ」の広告について考えてみた


少し前に話題になった、『月曜日のたわわ』の日本経済新聞広告。
あの件について、
今更ながらどんな出来事だったのかと気になり、
広告本体をみてきました。

この広告の女の子自体が目に触れることすら
女性蔑視だという意見もあるけれど、
何でそんなに燃え盛っているのか?
不思議に思ったので、電子書籍で試し読みもしてみました。

結論、
不快になったこと、
そして腐女子として思うところがありました。
不快ポイントと腐女子として思ったことを書き記しておきます。

そもそも月曜日のたわわって?

『月曜日のたわわ』(げつようびのたわわ)は、漫画家の比村奇石によってTwitter上に毎週月曜日にアップロードされるイラスト群である。2016年・2021年にWebアニメ化されている。
Wikipedia

現在は週刊ヤングマガジンにて連載されており、4巻が既刊されているそうです。
今回は電子書籍で1巻分が立ち読み可能だったので読んでみました。

1.男性目線の妄想キャラクター設定

広告にもなっている、電車の中で自分の「たわわ」をネタにする女子高生が、
こうであったら嬉しいな
という男性目線のキャラクター設定で作られている。

電車の中で好機の目に晒されたり、
偶然を装って触られた経験を持つ自分の身からすると、「んなわけあるか」とツッコミたくなった。

2.男性が女性の胸元を凝視するシーンが多々ある

男性登場人物(モブも含め)が、頬を赤らめ鼻の下を伸ばしながら女子高生(と新人OL)の胸元を凝視するシーンがたくさんある。
女子高生に関しては、彼女が通う高校の男性教員が
「胸元をみていた」
と別の生徒からと指摘されるシーンまである。

こちらも、1.と同様、
同じように見られる経験をしたことがある身としては、
凝視することが当然であるかのような表現
に感じたし、
それについて「不快感を表さない女性」の偶像具合を不快に思った。

3.女子高生がアラサー会社員に恋心を抱いているような描写

恋心自体は悪いことではないし、
若い女性が自分より少し年齢の高い男性に憧れを抱くこと自体は
そんなに珍しいことではないと思う。

ただし、10歳近く年齢が離れているとなると話は違うように感じる。
「自分より年上」の「年上」は私の実体験では2歳~3歳
を指していて、
5歳離れたとなると、珍しい例だった。

この作品では、
「電車で知り合った可愛くて『たわわ』な女子高生が、
冴えないアラサー会社員に恋心を抱いている」
という設定なのだが、
正直、結構な妄想具合だなと思った。

4.たわわOLが「若い花嫁候補」として見られている

この作品には女子高生のほかに、
「たわわ新人OLさん」が登場するのだが、
彼女が所属する会社の男性陣が、
平然と「若い花嫁候補」として彼女を見ている描写がある。

いや、仕事仲間としてみろよ。
仕事場なんだから、仕事のこと考えとけよ。

社会人経験がある身として、職場恋愛が絶対にダメだとは思わない。
けれど、就業時間内は仕事のことを考えておけ、と切実に思った。

また、OLは「新人さん」らしいので、
誰よりも職務上の地位が低いのは明白。

セットで描かれているのは教育係の先輩男性。
OLさんが先輩男性に特に「懐いて」いるような表現がなされている箇所があるのだが、
「恋愛関係につながる好意」にも捉えかねない雰囲気で描写されている。

仕事を教えてくれる先輩を 尊敬する・慕う というのは、
社会人にとって理想的な環境だと思う。

異性同士であることにより、それが恋愛感情であるかのような錯覚を読者に抱かせる可能性がある。

男性が職務上の地位を利用することが可能なのも、また不快だった。

5.「こうだったらいいな」の男性的願望が盛り込まれまくり

女子高生・OLどちらも現実にありそうなシチュエーションであり、
そんな、
日常生活で「あるかもしれない」シーンで、こんなことが起こったら夢のようだ
そう感じるような設定とストーリー展開がなされてる。

先にも書いた通り、女性として生きている私自身からすると、
「んなわけあるかい」という場面が多々ある。
もちろん創作物の中でのことなのだが、

「もしかしたらこんなことが起こるかもしれない」

という希望的観測を抱かせてしまうのではないか、と心配になった。

6.この作品の広告が「日本経済新聞」に掲載されたこと

私の認識では、日本経済新聞は「日本にいる多くの一般的な大人」が読む新聞だ。
そこにこの作品の広告が掲載されたということは、すなわち

「日本にいる多くの一般的な大人」に向けて広告を打った

と私は受け取った。

広告を打つということは、その広告が読者に影響を与えるものになると判断したのだと思うが、
どんな「影響」を与えたかったのだろうか?と大いに疑問に思った。

補足

ここまで、6つ不快ポイントを書き記してきましたが、
初めに書いた通り、私は「腐女子」として10年以上活動を続けてきました。
作品に関する「不快」をいくつも挙げたのですが、
妄想も創作も個人の自由であり、その権利は侵害してはいけない
と、思っています。

ただし、自由といえど、なんでもやっていいというわけではなく
住み分けできる環境が必須だと考えます。

腐女子の私が思うこと

オタクは古くからいます。

創作ができるオタクたちは、
自らの性癖を「妄想」として作品に落とし込み、創作をしてきました。
そして、似通った性癖の人間と作品を交換し、
お互いの妄想を称賛し合い、
さらに次の妄想を創作にぶつけてきました。
このサイクルは、ずーっと、ずーっと続いていたはずなのです。

でも、このオタクのサイクルというのは

「オタクの間だけ」

で本来は行われてきたことでした。

オタクたちが集い、
「一般の」人の目に触れづらい環境で行われてきたはずだったのです。

それが、昨今はSNSが発達したことで、
創作物を発信するハードルが以前と比較してかなり低くなったと言われています。

TwitterやInstagram・noteなど、
様々な媒体でイラストや漫画・小説が
個人から直接発信されるようになりました。

発信が容易になったことに伴い、発信件数も飛躍的に増えます。
発信される量が増えたことによって、必然的に「一般の」人の目に触れる機会が増えたことは想像するに容易です。

これでは、「住み分け」が難しいのではないでしょうか。

話は少し変わりますが、

人間の価値観というのは、
自分では気が付かないうちに、自らが触れてきたものによって作られるものです。

書籍や映像、周りの人間の発言が、知らずしらず自分の中に溜まっていき、
いつしか自分の価値観が形作られていきます。

無意識に作られる価値観の例を一つ挙げてみましょう。

私にとって「餃子はおかず」です。
餃子に白飯を合わせれば、餃子定食になります。

しかし、国が変われば「餃子は主食」になるのです。

誰かが

餃子はおかずなのです!

と声高らかに宣言したことに、私が賛同したわけでも、

餃子はおかずとする

と法律で定められているわけでもありません。

ただ、幼少期から餃子がおかずとして食卓に並び、
町の定食屋で餃子定食を食べてきただけです。

それでも、私は「餃子はおかずだ」と確信しているのです。
これは、無意識に作られた価値観に他ならないでしょう。

話を元に戻します。

今回、創作自体は個人の自由の範疇であると考えつつも、
この広告による一連の出来事を私が「不快だ」と判断したのは、

この作品が、価値観を作る無意識の一つになりえると判断したことも理由に含まれるからなのです。

人の脳内で作られるものは制限をすることが難しく、
「考えるな」
といったところでそれは無理な注文だと思います。
だから妄想自体は制限できないし、
それを創作活動にぶつけることが悪だとも思っていません。

でも、その創作物がほかの誰かの目に触れた途端、
その「妄想」は作者だけのものではなくなることに加え、
見た人の「価値観」を構成するパーツの一つになってしまうのです。

つまり、今回この作品が広く広告宣伝されたということは、
それだけ多くの人にこの作品を広め、
この作品が誰かの価値観の一端となる可能性を高めることになった、ということです。

無意識のうちに形成される価値観というものは、
出来上がった後で変容させることは難しく、
別の価値観(例:餃子が主食であるという価値観)に触れたときに、
「そういう考えもあるよな」
と理性的に考えることはできるかもしれませんが、
「これからはこっちの考え方で行こう」
とすんなり考え方を変えることはなかなか容易ではないのです。

だからこそ、初めにどんなものに触れるかが重要だと思うのです。

価値観どうこう言ってるけれど、妄想と現実の区別くらいつく

こう考える、理性的な方もたくさんいらっしゃるでしょう。
もちろん、大多数の人間は妄想と現実の区別がつきますし、
創作は創作だと割り切れるでしょう。

私が懸念しているのは、そんな理性的でもまともでもない人間がこの世にはいるということです。

現実に、いるのです。
理性的でもなければ、まともでもなく、
想像力が欠如し、
妄想と現実の区別がつかず、

ほかの人はそうかもしれないけれど、自分だけは例外なんだ

そんな風に、自分の都合のいいように解釈して、
野蛮な発想で相手の尊厳を踏みにじる人間が。

このような人間は、自分の価値観が歪んでいることを知りません。

15歳の少女と成人男性が恋愛することを当然だと思い、
女性は男性に性的対象として見られることを喜んでいると思い、
凶器を使って脅したり、殴る蹴るなどの暴力がなければ、恐怖を与えるはずがないと思い、
「いやです」という言葉の裏には肯定の意があると思い、
自分の欲求を満たしたいときに目の前に女性がいたら、触っても仕方がないと思い、
自分にとって魅力的な外見の人がいたら、胸元やお尻なとプライベートパーツを凝視することは当然のことだと思い、
夫婦やパートナーであれば、性行為の同意は必要ないと思い、
自己防衛のため、男性を避ける女性に対して自意識過剰だと思い、

性被害なんて、滅多に起こることではないと思っているのです。

こんな歪んだ価値観も、それまでに触れた書籍や映像、周囲の人間の発言によって無意識のうちに構成されているのです。


今回、私が最も不快に感じたのは、
この作品が「日本経済新聞」で広告宣伝されたこと でした。
これによって、作品が広く知れ渡り、
一般の人々の目に触れることになってしまいました。

本来この作品は、
作者のニッチな妄想をニッチな読者に向けて作られたもの 
ニッチな性癖の者同士で、コッソリと共有されるはずだったものです。
広く一般に向けて発信されるべき作品ではないのです。

雑誌紙面への掲載や広告掲載に関する判断は
作者ではなく編集部や出版社、新聞社が行ったことでしょう。
本来、作者のニッチな妄想の産物である本作品が
編集部や出版社、新聞社の誤った判断によって全国紙に広告掲載されてしまいました。

この作品に触れた誰かの、価値観の一端になってしまうかもしれません。


また、全国紙に広告掲載されたということは、
この作品が、作者のニッチな妄想の産物ではなく、
編集部や出版社、新聞社によって 一般大衆に受け入れられる ものであると判断されたということです。

これこそ、歪んだ価値観による判断なのではないでしょうか。

「こういうこと、みんな思っているよね」

そんな価値観を持った何人もの「大人」を経由して、
この広告が掲載されたのだと考えると、ぞっとします。

そう、日本経済新聞に広告掲載されたということは、
2つの問題を孕んでいるのです。
一つは、一般の人の目に触れさせてはいけないものを触れさせてしまったということ。
二つ目は、そもそもこの価値観を「普通だ」と思ってしまった大人が大勢いたということ。


細々と創作活動を続けてきた腐女子は危惧しています。
今回の件で、
こういう作品があるせいで、歪んだ価値観が刷り込まれるのだ!
と考える人がいることを。

この考え方の先にあるのは、
作品の規制」「創作の規制
です。

たとえ、この作品が私にとって不快でも、
ニッチな性癖による妄想でも、

それが広く人の目に触れない限り、
ニッチなヤバいもので済んだのです。
もしも人に知られたところで、(表現は極端ですが、)こんなの好きな奴がおかしい、それで済むのです。

それを、全国紙に引っ張り出して、批判を受けても無視をした結果、
人目に触れさせてはいけないものを人目に触れさせ
さらには「このくらい、思ったって普通だろ」という考えを透けさせてしまいました。
ニッチな性癖ではなく、日本の一般的な考え方であると宣言したも同然なのです。

これでは、
「日本の男性は価値観が歪んでいる」
「女性を蔑視している」
「性犯罪を助長している」
そういわれても仕方がありません。
こうなったら次に続く言葉は決まっています。

「表現・創作を規制しろ」

それは本来、創作者や出版業界にいる者が最も避けたいことなのではないでしょうか。

今回の件は、あまりにも騒動が大きく、
影響する範囲が広大でした。
そのせいで、少なからず創作者たちは自分の作品が規制される可能性が高まったのです。
本来、不要な炎上や一般への影響を考えて、
自主的に防衛をするのが編集部や出版社の役割だと考えています。
それが、防衛はおろか、自ら火炎瓶を投げて着火したなんて、
本末転倒もいいところです。


結局何が言いたいのかというと

今回の件は完全に編集部・出版社そして新聞社の失策です。
自分達は歪んだ価値観をもっていると宣言し、
作者や作品に余計な火種を撒きました。
せめてひっそりと活動を、そう考えて活動してきた全ての創作活動者を、余計な戦火に晒しました。

良い面をどうにか絞り出して見い出そうとするならば、
今回の件に携わった編集部・出版社そして日本経済新聞社が、
女性に対して歪んだ価値観を持っているということがわかったことでしょうか。

歪みを強めてはいけない。
これ以上歪んだ価値観を広めてはいけない、という機運を高めるキッカケにはなったことでしょう。




こちらはひっそりと活動しているから!
皆さまの迷惑にならないように息を潜めているから!
地下深くにもぐってるから!

いらんことすんなよ!

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