小説『時計が、ちくたく。』
『エブリスタ』様の小説投稿コンテスト、『三行から参加できる 超・妄想コンテスト「3時」』の参加作品です。
テーマが『3時』ということで、時計の描写から始まる短編小説の執筆に挑戦させていただきました✿
『エブリスタ』様は退会してしまったため、そっとこちらに全文を掲載させていただけましたら、と思います💦
本編
時計が、ちくたく、時を刻む。
ぽーん、ぽーん、ぽーん。
ああ、もう三時。
ねじまき式の、もういつからあるんだかもわからない、大きな古時計。
畳の匂いに包まれながら、ちゃぶ台に突っ伏しているわたし。
お腹、空いたなぁ……。最近、いろいろ面倒で、あまり食べれていない。
お金がないわけじゃない。まあ、湯水のごとくあるかと言ったらあるわけもなく、雀の涙レベルの稼ぎだけれど。
『物書き』なんてデビューできても、最下層はこんなものだろう。
両親の遺したこの、古い古い家で、小説を書きながらひっそり暮らしている。
なにしろ田舎なのだ。
見渡すかぎりの、緑、緑、緑。
自然音やらの熟眠アプリなんてなくても、リアル大音量・ナチュラリズムBGM。夏なのでセミさんの婚活ボイスが、彩りを添えてはばからない。
お店なんて、30分も自転車を飛ばさなきゃ存在しえない……。
それでもなぜわたしが生きながらえて、ここで暮らしつづけるか。それはひとえに。
「こんにちはー。入りますよ、先生。鍵、かけましょうよ。女性の一人暮らしなんですから」
短く刈り上げた色素のうすい髪と、メガネが似合う担当編集くんのご登場だ。
「たいてい空腹で動けないし。そのせいでスズハラくん、前にガラスぶち割ったじゃん」
「うっ、あれは本当……すみませんでした。心配ですよ。120パーセント家に引きこもっているはずの先生の気配が、あまりになかったから」
「気配察知できるの? 忍者かな??」
「もー、まぜっかえさない。ほら、ご飯買ってきました。どうぞ貪ってください。あとは適当に買ったの、ここに置いておきますから」
「わーい」
がさがさっと、何個かあるビニール袋をはじに置いて、そのうちの一番小さいやつを差し出してくるスズハラくん。遠慮なく受け取って中身を広げると、生ハムとチーズのサンドウィッチに、上にクリームが載ったプリン。ミネラルウォーターも、普通のと桃の味付きのが入っていた。
「えっ、気が利く……『わたしがすき』のオンパレード……やっぱ、いろいろ読めちゃう忍者かな??」
「毎週のごとく使いっぱしらせといてよく言いますね。忙しくてあまり頻繁には来られませんけど、普段はちゃんと食べていますか? 栄養偏らせていませんよね? からだは資本、ひいてはメンタルまで食が作るのでありまして」
「えっ、私より若いのに……すでに達観オカンかな??」
「帰りますよ。そして一生来ませんよ」
「申しわけございません。粗茶でも用意しますのでなにとぞご容赦を」
「わかればよろしい」
……この家まで、めちゃくちゃ遠いのに。忙しいのに。お茶飲んで行ってくれるんだ。
よし、今日も、とびっきり丁寧に淹れよう。
あんなにひもじい気持ちだったのに、気づいたら鼻歌まじりでスキップしている。
今日の目標は時計が五回、ぽーんと鳴るまでだ。
【終】
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おまけ。
当時、『エブリスタ』様に掲載させていただいていたあらすじが以下になります。
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コンテスト用に書き下ろさせていただいた短編です✿
作中には出てきませんが、ヒロインの名前は『カナ』さんといいます。おまけとして、作品のキーアイテム(?)・古時計さんの心の叫びをこちらに載せさせていただきつつ☆
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古時計:「オンメー、スズハラ! ちょいちょいカナ坊のこと、ねっとりした目でチラ見してんの、ワシャ知っとるぞオ! 無理矢理ウチのカナ坊を手籠めにしようもんなら、警察まで轟き響く『ぽーん』、お見舞いしちゃるかんなァアアァ!!」
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本編、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです~!!
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超楽しそう(※書いている当人が)。
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というわけで、本日は以上です!
ここまで大切にお目通しくださいまして、誠に誠に、ありがとうございました🌸
あなた様にとって、今日がとっても素敵な一日になりますように💞
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