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#2 初めての英国での朝で早速遅刻確定 30代からの英国語学留学記 2018年2月12日 その1


一睡もできず朝を迎えた。
時差ボケ特有の疲労感はあるが全く眠くない奇妙な感覚に苛まれる。

同居人のシナン曰く朝食は朝8時から。
いの一番にダイニングに行くことは躊躇われたので、部屋の外でガサゴソと人が動く音を確認してから階段を降りてダイニングへ向かう。

一般家庭の英国式朝食を初体験


朝食は留学生だけで食べる


既にアブドゥルとシナンは席についていた。
てっきりホストファミリーと一緒に朝食かと思ったのだがどうやら留学生だけで食べる仕組みらしい。
ホスト達は隣のテレビや調度品が揃ったリビングルームで朝食とのこと。
結局この日の朝はホストファミリーの姿を一切見なかった。

二人とも朝が弱いのか全く会話をしない。黙って黙々と朝食にありつくのだが、ガタイの良い中東系の二人は中々威圧感があり、落ち着けず。

テーブルの上にはコーンフレーク、楕円形の硬いパン、バナナ、そして紅茶が並んでいる。質素ではあるが品目は多い。

ちゃんとしたホテルで出るような豪勢なイングリッシュブレックファストではないが、これが一般庶民の英国人が普段取る普通の朝食なのだろうか。
こういう経験ができるのもホームステイならではある。

wikipediaより Full English Breakfast
半年英国に滞在したが、この写真のような朝食は一度も食べる機会はなかった
Joadl, CC BY-SA 3.0 AT <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/at/deed.en>, via Wikimedia Commons


コーンフレークとバナナは予想通りの味。
日本のそれと変わらず。そもそも両方ともイギリス発祥ではないし、Made in the UKではないしね。

パンはやっぱりイマイチ


そして主食とも言える硬いパン。昨日唯一イマイチと感じた食事である。

はっきり言って美味しくない。

外が異常に硬い。顎は強い方だが中々嚙み切れない。
そして中はモサモサしており、口の水分を全て吸収してくる

味は全くない。そして香りもない。

おそらくトースター等で焼くことなく、スーパーで買ってきたそのままの状態で出されているのが原因なのだろうが、味が全くなく食感も悪いのでいい所が何もない。

不味いというより美味しくないのである。
味がないから味云々を語るレベルに達していない。

一応、パンに塗るためのピーナッツバターとマーガリンはあり、それらを塗ることが前提なんだろうが、塗る先が酷いのでいくら塗りたくっても全く美味しくないのである。
そもそもパンが硬すぎて、乾燥も酷いので、ペーストをいくら塗りたくっても中に浸透しない。
調味料と食材のハーモニーがないのだ。

パンの消費に苦戦している僕を見て、「これを塗ればよいよ」とシナンがヌテラを差し出してくれた。

ヌテラとはカルディや成城石井などオシャンティーな食料品で売っているチョコレート風味の甘いマーガリンのようなものである。

ヌテラの写真 Wikipediaより
-donald-, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, ウィキメディア・コモンズ経由で

シナン曰く、この家の朝食のパンが毎度美味しくないので、自分でヌテラを買って何とか食べられているらしい。そこまでしなければいけないのか。

英国料理が不味いと評される理由が何となく分かった気がした。

一応、擁護すると、このホームステイ先の朝食のパンが極端に質が悪いだけであり、イギリスには美味しいパンは沢山ある。

外で食べる分にはパンはどこも美味しかったし、ネットで調べる限りでは在英日本人の多くが英国のパンをかなり高く評価していた。

まぁお金をさら払えば何でも良いものを得られるのがこの国の特徴なので、英国のパンが総合的に美味しいかどうか、それは半年程度しか滞在しなかった僕からは何とも言えない。

ただ後ほど旅行したフランス、オランダのパンが英国のそれとは比較にならないほど美味しかったので、まぁきっといそういうことなんだろう。

安いものは良くない、高いものはよい、というのがイギリスなのである。
多分。

紅茶の国の異名な伊達ではなかった


パンは残念ではあったが、良かったところが一つ

紅茶が本当に美味い!

イギリス料理は原則不味いが紅茶とお茶請けだけは美味しい、と噂では聞いていたが、その通りであった。
流石紅茶の国。インドとアフリカを血眼になって植民地化した国だけある。

だが想像と異なったのは紅茶が注がれる入れ物。

てっきりイギリス人は、ウェッジウッドみたいなソーサー付きの優美な陶器に注いだ美しい茶色のストレートティーをチビチビ飲むのであろうと思い込んでいたが、

今回出てきたのは500mは入る程の巨大な、しかも相当使い込まれた無地のくたびれた分厚いマグカップ。
こんなデカいマグカップ、日本では売っている所すら見たことない。

しかもストレートティーではなく砂糖入りのミルクティー。

麦茶感覚でがばがば飲むことを想定しているかのようであった。
件のパンでダメージを負った僕の口をこのミルクティーが大いに癒してくれた。

最初はこの家だけの風習化と思ったのだが、どうやらイギリスではデカいマグカップにミルクティーをドバドバ入れて飲むのが主流とのこと。

英国での紅茶体験は中々衝撃的だったので、後ほど別のエントリで長々と綴りたく考えている。

登校時点で遅刻確定


黙々と朝食を食べる。だがここで懸念事項が頭をよぎる。

初の登校日はガイダンスや諸手続きあるため、8時45分までに登校するよう、事前に通知されていたのだが、8時からの朝食で果たして間に合うのだろうか。

この家から学校までバスを使うことは先日聞いたが、具体的にどのくらい時間がかかるのかわからない。
それに朝は渋滞で道路が混む可能性を常に孕むため、余裕をもって登校した方が良いのではないだろうか。

初っ端から遅刻、というのも情けない話である。
だが自分一人では学校の行き方が分からない。
先日シナンが俺についてくれば大丈夫、と頼もしいことを言ってはくれたが、在英歴が長い彼は、新入生の初日は早めに登校しなければいけないことを忘れているのではないだろうか。

勇気を振り絞ってその旨を彼に伝える。

「no problemだ! 俺たちについていけば間に合う」

機嫌悪そうに答えるシナン。俄然不安になる。

大体家からどのくらい時間がかかるのか問うと「20分くらい」とのこと。

時計を見ると8時20分。

超ギリギリではないか!

本当に間に合うのか?内心穏やかではいられずソワソワ。
そんな僕を見て今までずっと無言だったアブドゥルも「no problem. Everything is OK」と不機嫌そうに回答。

露骨に焦る様子を見せ続けると彼らの機嫌を損ねるかもしれないし、二人とも問題ないと言っているため、大丈夫だろう。

初回から遅刻というのは嫌ではあるが、これは仕事ではない。
無事学校までの通学することと、今後共に過ごす二人との人間関係を重視する方が良いと判断。

腹を決める他ない。

朝食を終え直ぐに登校準備を整える。時計を見ると8時25分。
もう猶予は殆どない。焦る。

だがついて来い!と宣った二人は全然姿を現さない。

結局彼らが姿を現したのは8時40分。


遅刻確定である

狼狽する僕見て、二人はまた不機嫌そうに「don't worry」と答える。


いやいやどう考えてもworryする状況だろ。

しかしながら彼らについていく以外、他に方法はないのである。一人でコミュニケーションが取れないホストファミリーに行先を聞くよりも、同じ学校に通う親切な仲間と行動した方が良いに決まっている。

そう自分に言い聞かせながら3人で家を出た。
初登校からこれとは。先が思いやられる。


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