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序章 30歳で仕事を辞めて英国で半年語学留学した話 (2018年2月から2018年7月迄)

2018年の話ですが、30歳の時に仕事を辞め半年間自費でイギリスに語学留学に行きました。

大いに悩みましたが、結果的に大成功だと胸を張って言えます。収入が劇的に増えた訳ではないですが、

その時に書き溜めた日記、現地で得られたちょっとした知識や経験等を、この場で少しずつ発表したく考えております。
同じように社会人になってから海外留学等を検討されている方の参考になれば幸いです。

まずは留学で得られた成果を箇条書きに

・英語力は大して伸びなかった
・友人は殆どできなかった
・海外生活、旅行はとても楽しく有意義だった
・精神的に成長し、自己確立ができた
・帰国後、1か月半で就職できた

以下、詳細。書き終わってから気が付きましたが、ですます調からである調に変わっていますが気にしないでください。

・英語力について


残念ながら期待ほど伸びず。字幕無しで英語ネイティブ向けの動画やラジオを労せず理解できるようになることを(一応)目標にしていたが、とても構わず。英語字幕付きで辛うじて大体は理解できる程度の英語力しか身に着けられなかった。

半年という期間は、語学をマスターするのは(30代という年齢もあるからか)難しいかもしれないが、一番の原因は留学3か月後くらいから、勉強へのモチベーションが露骨に落ちてしまい、自己研鑽を怠ったのが原因のため、もっと高い意欲をもって取り組み続けられれば今より高い能力を得られたかもしれない。
ただ何事に於いても、特に語学はモチベーションを長期間保つのが非常に難しいことを再認識。

一応、face to faceの会話では大きな支障はない。
顔の見れない電話で初めの人とのコミュニケーションに困難さはあるが、なんとか対応はできるようにはなれた。
面接や商談、トラブル時のクレーム対応くらいであれば、一応英語でネイティブ、非ネイティブともに何とかできるレベルにはなれた。

ただ何よりも英語でコミュニケーションを取ることに精神的な障壁が何らなくなったのは大きい。
変に身構えて萎縮せずに日本語と同じような感覚でやり取りできるようになれたのは留学の成果。

とは言いながらも、仕事で知らない番号から海外通知があると未だにドキドキして積極的に電話を取ろう、という気持ちには中々なれず。

楽しく積極的に英語を使う!という心持ちにはおそらく今後そうなることはないであろう。


人間関係の構築について

海外留学で異国の友人が沢山できた!
なんてことには全くならず。

学生時代に留学経験がある人間が沢山異国の友人を作りSNSで交流している姿に嫉妬していた自分としては、是が人も友人を作ろうと息巻いたものの、元来人見知り気性でコミュニケーションが低く日本でも大して友達がいない自分には海外で異国の友人を作るというのは、そもそも困難極まりない無謀な目標であったと言える。

加えて語学学校はティーンエイジャーが殆どであり、30代というオッサンに片足を突っ込んだ見栄えもしないアジア人男性である自分は完全に浮いており、興味関心を持たれない、それどころか寧ろ絡んでも楽しくない、できればあまり絡みたくない存在と認識されてしまい、人間関係の構築には大変な苦労をした。

ジェネレーションギャップ故に共通の話題がそもそも全くなく、頑張って話題を見つけて話しかけても、相手がこちらに興味を持っていないため会話が続かない。

当たり前の話ではあるが、ティーンエイジャーであれば異性とコミュニケーションを持ちたいと思うのが当然であるし、同性であれば価値観が似通っている同世代の人間とつるむ方が楽しいに決まっている。

これはもうどうしようもないことである。

稀に休暇を取って英語力を磨くために語学学校に入った、ある程度年を重ねた人もおり、彼らとは楽しくコミュニケーションを取ることはできたのだが、僕のように半年間も留学する、という人は全くおらず、大抵1、2週間で学校を卒業してしまうため、長期的に密なコミュニケーションを取ることはできなかった。

加えて彼らは英語の勉強兼リフレッシュを兼ねた観光という目的で渡英しているため、授業が終わった後は事前に計画した場所へ一人で観光へ行ったり、英国在住の知人と過ごす計画を立てているため、あくまで授業中に雑談をする仲間としか認識はされないのである。

また、留学するまで気が付かなかったことではあるが、語学学校では留学先である英国人と積極的に絡むことがほとんどない。僕は英国好き,所謂"anglophile"と呼ばれる人間であり、イギリスについては異常に知識と関心を持っている存在であると自負していたが、その熱意を伝えられる対象が語学学校では殆どいなかった。

語学学校の生徒たちの殆どは英語を学びたい、という意識は勿論あるのだが、目的はリンガフランカである道具としての英語を身に着けることであり、英国文化については僕ほど興味関心を持っている人は残念ながら全くいなかった。

学校の先生が英国について色々話をすると僕がツイツイそれに乗っかった発言をしてしまったのだが、その結果、興味を持っていない人からすれば全くもってつまらない、事前知識がないと全く分からない話に授業が脱線してしまうことが多々あり、結果的に場の空気を乱す異分子として排斥される原因を何度も産み出してしまい、余計に孤立することになってしまった。

これは勿論自分にも原因があるのだが、語学学校では留学先の人々と密な交流を持つのは難しく、現地の文化慣習にどっぷり浸かることは容易ではない特殊な環境である、ということは結構見落としがちだが重要な事実であると思う。語学学校ではなく現地の大学にストレートに入ってしまえばそんなことはないのであろうが。

そうは言いながらも折角の貴重な機会を無駄にはしたくなかったので、色々と知恵を捻り、行動をし、何とか自分に興味を持ってくれるような日本好きの英国人一人と知り合い、彼と友達にはなれた。留学して4年たち、季節の挨拶くらいしか交流はないが、それでも彼と友達になれたのは自分にとって貴重な体験であったし、彼のような存在と知り合えたのは本当にラッキーとしか言いようがないと思う。

何を言いたいかというと、30代男性で留学先で友人を見つけるのは死ぬほど難しい、ということである。

現地での生活について

当たり前の話だが、日本とは勝手が違い色々と苦労はしたが、総合的には楽しかった。
何よりも一度社会人になり、責任から解放されて半年間自由に振る舞うことができたのは本当によかった。心の底から楽しかった。
元々旅行がが大好き、特に海外旅行を毎年何よりの楽しみにしていたため、毎日が大好きな旅行という気分でいられたのは精神的にも大きかった。

この高揚感と解放感は一度社会人経験をし、自分で稼いだお金を使い、裁量を持って行動できたからこそ得られたものだと自負している。
裁量のない環境に押し込められていたからこそ、自由気ままに動けることのすばらしさを大いに感じられたのである。

結果的にお金はかかったけどね!まぁ、そのために死に物狂いで働いたわけなので

精神的な成長について

語学力云々よりも精神的に大いに成長できたのが留学最大の成果だった。
留学する前は恒常的に鬱気味であり、常に後ろ向きな人間であった。あれやこれやと他人と自分を比較し、嫉んだり自己嫌悪に陥いることが頻繁にあった。
だが留学後は全くそんなことがなくなった。
自己肯定感をもって今は生きていられる。

これはコンプレックスが解消されたのが大きい。

自分が所属していた大学は在学中に留学する人間が非常に多い所であり、自分も当然留学するものであると思っていたのだが、経済的な事情と大学生活が学生時代は留学が叶わなかった。結果なし崩し的に望まぬところに就職してしまったのだが、そこが悪しきコンプレックスとして心にひっかかりを持って生きていた。

仕事で留学経験のある溌剌とした人々と出会う度にコンプレックスを刺激され、鬱々とした気分にさせられた。
またSNSでキラキラした人生を謳歌している留学経験者の知り合いを見るたびに、今の自分はなんて無能で不幸でどうしようもない存在なのかと思い悩んでいた。

留学ができなかった自分は劣っている存在であり、決して幸福になることができない、とまで考えるようになってしまった。

だがいざ自分が留学してしまうと、そのようなコンプレックスを感じることが全くなくなってしまった。

身も蓋もない話になってしまい、このトピックとそもそも矛盾する内容になってしまうが、留学したからと言って劇的に優れた存在に自分がなれる、なんてことがない。

前述したとおり、語学力は大して伸びなかったし、留学後に誰もが憧れるような超有名企業に入り、社会的地位の高い存在となり、物理的にも満たされた人生を送れているわけではない。

ちょっと海外に暮らした程度で人間が劇的にポジティブな方向に進化することなどない。

勿論、海外武者修行でしか得られないものを求めて、野心的に行動した結果、社会的な成功を収められた人は沢山いるだろう。単純に自分がそこまで大それた人間ではなかった、ということかもしれない。
だが自分がそこまでの人間ではない、ということを自覚し、そこに何らうしろめたさを感じることがなくなったのである。

そして大した人間ではなくても心持ちとちょっとした工夫次第で人生をそれなりに満喫できる、ということを気づけたのが何よりの最大の成果である。

僕は僕なりに色々学び経験し、それなりに苦労して生きていた訳であり、他人にはない要素も一応持っている。留学で体験したことだけではなく、留学前の嫌で嫌で仕方がなかった前職での経験も自分を形成するための大きな糧であることに気が付かされた。

それらの積み重ねは他人と比べて極端に優れている、とまでは到底思えないが、劣っているとも思えない。

マウンティングを取る必要もないし、取られる必要もない。

良くも悪くも人それぞれ異なり、そこに優劣なんぞない。定量的に測れる要素で優劣らしきものを決めることは出来るかもしれないが、だからと言ってそれが絶対的なものである、と何故断言できるのだろうか。

良くも悪くも他人と自分を比較し、あれこれと悩み、悲観的になることは一切なくなった。

自分は他にはない経験、知識を持っているし、自分以外の他人も皆そうである。それ以外、何もない。

留学後の就職について

実は一番心配していたのが留学後、ちゃんと就職できるか、ということであったのだが、帰国後1か月半で無事就職できた。
半年以上も仕事せず、大きな目的もなく海外留学をしていたら世間体が悪く、再就職時マイナス評価になるのではないかと危惧していたが、全くそんなことはなかった。複数会社を受けたが大抵面接まで容易にたどり着けられた。

そもそも論として、30代で留学したことを咎めるような会社に仮に入社した所で意欲をもって働けるとは到底思えない。

自分の価値観とは根本的に合わない所で働いても互いに不幸になるだけである。だから30代で仕事を辞めて留学することが再就職の妨げになることは全くないと断言できる

ちなみに再就職にあたり、転職エージェントとハローワーク求人を併用し、最終的にハローワークで出会った今の会社に就職した。

なお、ハローワーク求人は碌なものがない、と主にネットで言われているが、そんなことは全くない。
転職エージェントの方が表面的なサポートは充実しているのは事実であるが、彼らも営利企業であり、早々に就職を決めて手数料を得ることが目的であるため、必ずしも就職希望者側に全面的に立っているわけではない。

彼らは口コミの操作が大得意であるため、ネット上ではあたかも転職エージェントを介さないと再就職が叶わないかのように誘導しているが、根気よく目的意識をもってよく探せばハローワークでも自分にあった求人はある。

誰もが知る超有名大企業じゃないと嫌!という場合は転職エージェントの方が楽かもしれないが、抜け道は色々あると個人的には思う。

別にハローワークを使わなくても知り合いの紹介だったり、入りたい企業と何とかつながりを持とうとすれば意外と何とかなる(僕はそこまではしなかったし、できなかったし、そもそもそこまで絶対入りたい会社というのがなかったが、そうやって転職している知り合いが何人かいる)

企業としても仲介業者にかなり割高の手数料(想定年収の5割とかそこら)を払うよりも、余計な費用をかからずに素性の知れた有能な人材を確保できた方が良いに決まっているのである。あまりエージェントの言うことを真に受けない方が良いと個人的には思う。

そもそもあいつら妙に居丈高で話していてイラっとくるのよね

実際、紹介する企業の風土や仕事内容を大して知らんのに恰もすべて知っているかの如く話をしてくるし、いかにも手助けしてやってますよ、という口調で丸め込んでこちらが悩む暇なく即決で決めようとしてくるので中々に厄介。

彼らのせいで一度転職に大失敗している、というバイアスがかかってはいるのだが

そもそも転職エージェントを使わないと碌な企業に入れない、ということは絶対にないと思う。

よくわからん他人に、それも自分を利用して金儲けしようとする連中に、自分の人生を全面的に委ねるのはリスキーであるので、こっちも利用してやる、という心持ちで先方からしか手に入らないであおる情報を入手し、総合的に判断して就職を決めるのがストレスなく再出発できる方法だと個人的には


最後に


すでに留学し4年は過ぎ、当時と比べて英語力は大分落ちているのが情けない話ではあるが、今思ってもあの時留学を決意したのは間違いではないし、お陰で人生が大いに拓けたと思っている。

全ての人間に当てはまる訳ではないと思うのだが、守るべき家庭がなく、漠然と海外留学に憧れがあり、現状が八方ふさがりで苦しんでいるのであれば、留学して一度人生をリセットし、精神的にリフレッシュした方が絶対良いと思う。

環境を劇的に変えるのはまさに劇薬ではあるが、自発的に大きな決断をするのは精神的に大きな糧になる。

少なくとも自分を見つめ直す機会は人生の半ばでは絶対に必要だと強く、強く僕は思う。



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