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有宮明哉の書籍レビュー『少女』

二冊目の書籍レビューになります。
本日最初から最後までぶっ通しで読んでしまいました。
ここから下はネタバレになりますので、お気をつけください。








最初の書き出しが素晴らしかった。
遺書の内容ではあったが、書いてあることは考えてみてもその通りやなって思うことばかり。なかなかに考えることが湊かなえさんはえぐい、それに尽きる。

遺書の始まりから、遺書に対する嫌な気持ちの独白、そこから物語は進んでいく。
主要の登場人物は桜井由紀、草野敦子の二人からなる。
どちらも子供の頃に剣道をやっており、敦子は特段特別な練習をしていないのに、全国大会で一位になる成績を残す。
由紀はどうやっても敦子に勝てないという軽くコンプレックスを抱いている。
そんな中、由紀は祖母へ虐待の仕返しをしたところ、反撃を受け左手に大きな傷を負ってしまう。
また敦子は大会の途中で跳んだ拍子に足を怪我してしまい、そのままお互いに剣道をやめる結果となってしまった。
由紀は祖母からの虐待の上、母親からも酷い言葉を投げられ、感情を表に出すことができなくなる。
敦子は、怪我したことによって負けてしまったので、友達からいじめまがいのことをされたり(学校裏サイトで悪口や死ねとかかれる)、重圧のせいか運動をしたり、跳んだりすることが恐怖へとつながり、脚立に上る行為だけでも過呼吸となってしまうこととなる。
そのまま敦子は感情をわざと出すことで周りとの協調を図るようになった。

そんな敦子を見て由紀は、バカらしいと思いつつも、とんだ姿が素敵だったのが脳裏に浮かんでおり、敦子を励ます小説を書く(物語の終盤にてその事実がわかる。途中まではバカにしている小説だと思われていた)。
その小説を学校に置き忘れたときに、運悪く、担任の教師がその小説を盗作し賞に応募してしまう。そのまま新人賞を取ったその作品の序文をみて、敦子は担任がかいた内容ではない、私のことを書いた内容ということに気が付き、由紀が書いたのではないか?と疑うようになる。そして、わざとらしく勘ぐってみると、死ねばいいと由紀は吐き捨てており、やはり由紀が書いたものだと確信する。しかし序文だけの内容しか見れず、本心がどのようなものかを確認することができなかったため、序文だけで自分のことをバカにした文章と内心傷ついてしまっていた。

その二人の関係が微妙になった時に、三人目が現れる。
滝沢紫織物語の最初の遺書をみて序章にていみわかんないと吐き捨てていた少女だ。この少女はこの序盤と、最終盤に出てくるのみでほとんど物語にはかかわってこない。しかしこの少女が最後の後味に非常に関係することとなる。
この少女は転校生で、良い学校からの編入だったそうだ。その雰囲気が気になり由紀が一緒にご飯食べようと誘う。
敦子は誰かとごはんを食べないと不安になる性格なため、いつも由紀と一緒に食べていた。その関係の中に三人目の少女、紫織が入ってくる。前述のとおり少し由紀との関係が悪くなっていたので、タイミングは良かったようだ。
その紫織がごはんを食べているときに話をする。
人の死体見たことある?
その言葉に由紀は衝撃を受ける。
人が死んだことをみただけなのに、非常に誇らしげな彼女に、死というものに興味をいだいたのだ。
そして由紀はこう考える。
私は死体ではなく、人が死ぬ瞬間が見たい
そして敦子も、こう考える
人が死ぬところを見られれば私は変われるかもしれない
と、

その二人がそれぞれ違うところで死を感じるストーリー
それぞれ全く違うところだったはずが、実は意外な共通点があり、その共通点から最後に和解することとなる。

一件落着って思いきや、ここから急転直下
終章の存在だ。
さらに言えば、序文の前の遺書は(前)となっており、遺書(後)があるのだ。

終章は10ページ足らずの内容であるが、ココが本当に衝撃だった。
自分は文庫本だったので、あとがきのところに書店員の解説がある。
そこにも書いてある通り、終章の衝撃を味わった方がここを読んでいると思います。というね。

全ての糸がつながっているってことを味わえる作品。
さらに因果応報ということもよくわかる作品でした。
終章はここに書いてもしょうがないって思うくらい、見ないとわからない衝撃です。

言葉が
おー、、、、おー、、、、ほおおおおしか出てこなかった。
さすがイヤミスの女王

最後の終章が無ければ、上手くまとまらせて、ただ少し視点移動が多く誰の部分だろう?ってわかりにくいなーって思うだけの作品だったと思う。
ただこの終章があるだけで、すべて因果応報であり、つながっている。
誰かが見ているんだよってことがわかる作品でした。
とてもいい後味。
この感情を持ったままどんどん湊かなえワールドに入って、自分のミステリーを書きます。

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