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ユーロ2020を終え


 イタリアの優勝で幕を閉じたEURO2020。
決勝トーナメントでは延長戦を戦う事もあったが、それでもグループステージから1敗もする事なく無敗優勝をし、大会中には同国の記録であった30試合負けなしという記録を更新した。優勝後の記録は34戦無敗と、スペインとブラジル代表が持つ35試合無敗という世界記録まであと1試合というところにまでたどり着いた。圧倒的パフォーマンスを見せつけたイタリアであったが、筆者は開幕前、優勝候補にすら入れていなかったのが事実である。
 マンチーニを監督に迎え、イタリア本来の伝統的な戦術である、カテナチオ(堅守・速攻を重視した戦術)に加え、同監督のサッカー哲学であるボール保持を混ぜ合わせた新たなる武器となる戦術をイタリアが繰り広げていたのは、ユーロが開幕するまでの試合の過程で知っていた。しかしながら、筆者はそれに伴えるようなタレントが不足しているのではないかと考えていた。しかし、いい溢れた言葉になってしまうかもしれないが、キエッリーニを筆頭とするベテラン選手の経験値や闘争心や頭脳プレーに加え、ドンナルンマなどの若手選手のアグレッシブさや大胆なプレーがうまく融合していた、そしてさせていたのがマンチーニだったかなと思う。(ドンナルンマにしろロカテッリにしろ、よくよく考えてみたら若い頃から経験を積んできた、いい選手が若手にもたくさんいますよね。笑)
イタリア代表の対応力も絶賛したいと思う。ポゼッションサッカー(ボールを保持し相手を支配する戦術)を得意とするマンチーニ率いるイタリアは、準決勝までは自分たちの得意な形で試合を進められていた。カウンターを喰らうことがあっても、キエッリーニやボヌッチ、ロレンツォがうまくコースを切りながら相手を潰すか、シュートを打たせドンナルンマが対応し再びボール保持を繰り広げるゲーム展開が多かった。
しかし準決勝の相手はスペイン。イタリアが得意とする”それは”、スペインが最も得意とする形であった。前半からスペイン代表がボールの保持する時間が続き後半に入ってもその流れが続いた。しかし一瞬の出来事だった。攻めでの決め手を欠いていたスペイン代表は、サイドバックのジョルディ・アルバの軽率なクロスをドンナルンマがキャッチすると、近場にいたベラッティにボールを渡し少し持ち運び、サイドへ開いたインシーニェへいい縦パスが入る。裏へ抜け出したインモービレへ、インシーニェらしいスールパスが入り、一度はラポルテのいい対応でカットしたが、それをすかさず狙っていたキエーザのゴラッソでイタリアが先制する。完璧なカウンターであった。先制した60分から20分後にはモラタとダニオルモの華麗なワンツーから一点返されたものの、最終的にはPK戦で勝ち切り、イタリア代表は勝負をモノにした。
120分トータルでポゼッションはイタリア代表30%、スペイン代表70%と普段の武器であるポゼッションサッカーを展開できなかったものの、粘り強さ、マンチーニの状況判断、それに対応する選手達、この試合でイタリア代表は一皮剥けることが出来たと筆者は考える。
 決勝のイングランド戦ではキックオフ早々に失点するものの、本来のポゼッションサッカーを継続させ同点に追いつき、PK戦までもつれこんだものの、見事に勝利を収めた。
 伝統的なカテナチオな戦術にマンチーニが得意とするポゼッションサッカーが融合することにより見事な結果を残した今大会でのイタリアのサッカーは、今後しばらくはサッカー界の流行的な戦術になるだろう。それを体現できるだけのポテンシャルを持つチームがあればの話ではあるが。大きな期待を持たせてくれるイタリア代表は黄金時代に突入できるのか。そして記録をどこまで伸ばしていけるのか。今後のイタリア代表から目が離せない。

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