初級者のための詰将棋創作Tips(1)

詰将棋創作の初級者に役立つ情報を書いていきます。

【 今回のテーマ 】
作意手順を具体化するための条件整理

下図はYouTubeチャンネル「夫婦DE将棋ちゃんねる」で2023年6月28日に行われたライブ配信「無知から創る詰将棋 #01」において登場した局面を少しいじったものです。

創作途中図

ここで想定しているのは

33桂、同X、32金寄 迄3手

という手順です。
受方51角がいなければ初手32金寄の1手で詰みます。
受方51角が攻方24王を間接的に睨んでいて、攻方42金を自由に動かせない状況です。
この状況を解決するために33の地点に受方駒を挟もうというのが、本作の主眼です。

【 問題 】
下に示す盤面に受方駒を一枚追加して、「33桂、同X、32金寄 迄3手」が作意手順の完全作にしてください。

問題図

正解は一つではないので、余裕がある方は可能な配置を全て挙げてみてください。




再掲問題図

【 解答 】
追加駒:受方32歩 or 受方31香 or  受方41桂

33の地点に何の駒を挟む?①

それでは解説していきます。
作意手順が成立する理屈を確認しておきます。

■ 指したい着手
詰ますために盤上の金を寄る。
■ 障害となる要素
受方角が攻方王を間接的に睨んでいて金が寄れない。
■ 解決方法
受方角の利きが当たらないように予め受方駒を挟む。

理屈上は問題ないので、具体的な手順を考えていきます。
逆に言うと、理屈を考える段階で破綻していてはいけません。
理屈の時点で破綻していたら、何をどう試しても実現不可能です。

さて、既に配置や手順を具体化しているので、33の地点に何の駒を挟むかを決めるのが今回の問題。
挟む駒は何でもよいのでしょうか?
何でもよくないなら、どういう駒を選べばよいでしょうか?
詰将棋創作に慣れている方ならパッと条件が整理できるはず。
しかし、そうではない方には難しいでしょう。
実際に駒を置いて動かしながら考えていくのがよいと思います。

試しに受方44銀を追加してみます。

問題図に受方44銀追加

「33桂、同銀、32金寄 迄」という手順は成立するでしょうか。
初手から33桂、同銀と進めた局面をご覧ください。

2手目33銀迄の局面

次に32金寄と指したいわけですが、攻方24王に王手がかかっています。
王手を放置して32金寄とは指せません。
「33桂、同銀、32金寄 迄」という手順は成立しないわけです。

ここから分かることは何でしょうか。
それは

条件①:
33の地点に挟む受方駒は、斜めに利きがある駒ではいけない。

ということです。
従って、「龍・角・馬・金・銀・成銀・成桂・成香・と金」はダメです。
そうすると候補となる駒は「飛・桂・香・歩」となります。

33の地点に何の駒を挟む?②

問題図に戻ります。

再掲問題図

では、問題図に受方35飛を追加してみます。

問題図に受方35飛追加

「33桂、同飛、32金寄 迄」という手順は成立しているでしょうか。
初手から33桂、同飛と進めてみます。

2手目33同飛迄の局面

今度は攻方24王に王手がかかっていません。
これなら次に3手目32金寄が指せます。

3手目32金寄迄の局面

この局面で受方玉が詰んでいてほしいのですが、果たして詰んでいるでしょうか。
当然4手目32同飛で王手を解除されてしまいます。

4手目32同飛迄の局面

ここから分かることは

条件②:
33の地点に挟む受方駒は、後ろに利きがある駒ではいけない。

ということです。
そうすると飛車は候補から外れ、「桂・香・歩」が候補として残ります。

完全作になる配置

「33桂、同X、32金寄 迄」の手順で完全作になる配置は下図の通りです。

問題図に受方41桂追加
問題図に受方31香追加
問題図に受方32歩追加

「受方32香追加」も前述の条件①②を満たしていますが、

問題図に受方32香追加

初手32金上以下の余詰があるので不完全作です。

初手32金上迄の局面

配置を工夫すれば完全作にできますが、今回のテーマから逸れるので割愛します。