WFP2022年12月号 感想

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2022年12月号(第174号)の感想を書いていきます。

1.第146回WFP作品展結果
(pp.9~32)

WFP作品展鑑賞室:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html

■ 146-1 springs作
対面+アンチキルケ。
11手目52角の限定打がルールを組み合わせたことで生じる興味深い手。
ルールの組み合わせが掛け算になっているのが良い。

■ 146-2 神無太郎作
現れた角がダイナミックに動く手順が2回繰り返される。
双裸玉からこんな趣向手順が出てくるのは驚き。

■ 146-3 真T作
持駒歩18枚の無仕掛け。
初形だけでもインパクトがありますが、玉が大きく2周する手順が面白い。
盤上に配置された駒がこんなに少ないのに、玉の移動経路が限定されるのがすごい。
玉は32の地点を通過しますが、初形でその地点は封鎖されているのも、手順の意外性を引き立たせています。

■ 146-4 駒井めい作
自作。同格成+属性変更。
「駒の利きは変わらないけど属性だけが変わる」という設定が本作の全て。
今回は不滅性の有無で表現しましたが、他にも様々な属性変更が考えられます。

■ 146-5 占魚亭作
盤上に駒が増えるステイルメイト。
しかも中立駒の存在が厄介で、受方が打った中立駒も攻方手番で動かす対象になってしまいます。
最終図で62n桂は受方手番では普通に動かせますが、攻方手番では一時的に行き所のない駒になっているのが面白い。
また、53n香・56n桂は攻方手番では攻方56桂が受方53香でピンされていることと同じ意味で、受方手番では受方53香・56桂のバッテリーと同じ意味なのも興味深い性質。
中立駒を単に「どちらの手番でも動かせる駒」として扱うのではなく、手番による意味の違いに着目して掘り下げていけば、何か作品が創れそう。

■ 146-6 るかなん作
初形に攻方王がいない協力自玉詰。
成るとロイヤル駒になる設定は、他にも様々な活用方法がありそう。

■ 146-9 上田吉一作
銀鋸ですが、2枚の銀が同じ経路を交互に動くのが驚き。
銀が動いた直後は、もう一方の銀を動かすための王手ラインを塞いでしまうので、2枚の銀は交互に動かさなければならないという仕組み。

2.第4回 フェアリー短編コンクール 結果発表
(pp.35~76)

第1番 藤原俊雅作
Forsberg twins+HOTF。
HOTFは創作難易度がだいぶ高そう。

第5番 真T作
最後の1ピースで七種追加。
言われてみれば確かに詰将棋作家ならやってみたくなるテーマですが、このテーマに気付いて、しかも高い完成度で仕上げたのはレベルが違いすぎます。

第6番 馬屋原剛作
第7番 kisy作

入れ子構造になっている最後の1ピース。
出題形式が物凄くややこしいですが、斬新なアイデア。

第9番 springs作
安南+複数解。
見事な対照性でお手本のような作品。

第11番 変寝夢作
安北なら4手詰むのが驚き。

第12番 駒井めい作
自作。背面+複数解。
複数解で表現したことに十分な意義を見出せたと思います。

第13番 伊達悠作
Messigny+ツイン。
少ない駒数で見事な対照性。
上手くいきすぎているくらい洗練されています。

第17番 真T作
桂の四段跳ねがAll-in-Shogiだと、こんなにも無理なく実現できるのかと感心。

第23番 上谷直希作
Qが四隅を移動。
視覚的にも楽しいですが、複数のラインを潰しておかないといけない意味付けが明快で納得感が大きいです。

第25番 羽毛布団作
Imitatorの有無というツイン設定が面白い。
この設定にするとどうしても解が等価になりにくいように思えるので、「よくこのレベルまで仕上げたな」と感心。

第27番 占魚亭作
Koko+全Andernach。
孤立禁をめぐる攻防において駒の所属が変わるのが面白い。
他にも色々と作品が創れそうなルールの組み合わせ。
続編を楽しみにしてます。

3.Fairy of the Forest #72
(pp.77~81)

■ 72-01 上谷直希作
徹底して取らず手筋。

■ 72-02 駒井めい作
自作。
「打った駒が後で取られる」という少々マニアックなテーマ。
もっと面白くできるテーマだと思っています。

■ 72-03 たくぼん作
歩を三枚設置。
48歩の設置が難しい。

■ 72-04 たくぼん作
入手した桂を使った後に再度入手するのが意外な展開。

■ 72-05 神無七郎作
歩/と金がぐるっと合計3周。
度々出てくる13歩生は後に1筋から2筋へ切り返すためのもの。
初手の成生選択が最終手と関係しているところが深い。

4.第11回フェアリー入門解答
(pp.101~112)

①② 伊達悠作
二作で良い姉妹作になっています。
易しいのもあって、この二作の存在は嬉しい。

③ るかなん作
a), b)では角を取らせて飛で詰まし、c)では飛を取らせて角で詰ます、いわゆるZilahiになっています。
a)駒余り可→b)駒余り禁→c)限定と段階的になっているツイン設定に、まさかこんな対照性が隠れていようとは。

④ 駒井めい作
Double pin-mate+Place exchange。
作意と紛れの関係性を重視しました。

⑥ 真T作
Pelle moveによる合駒を動かしをシンプルに実現。巧い。

⑩ 神無七郎作
初形から攻方13馬を消去した代わりに持駒飛のある局面を作る。
馬→角→飛と入れ替わっていくのが面白い。

⑪ springs作
駒余り禁をもろに活かした持駒歩の消去。
入門にはこれくらいの難易度があると嬉しい。

⑫ 真T作
歩消去のサイクルを桂香の連続合駒で繋いでいるのが面白い。
持駒を入手しながら持駒を減らしていく流れが良い。
しかも盤面の駒数がたったの4枚。

5.第13回フェアリー入門(禁欲協力詰)
(pp.113~116)

担当がたくぼん氏から伊達悠氏に交代。
たくぼん氏は編集長でもあるので、なんとか新担当が見つかって継続できる形になってきて安心しました。

第13回の課題は禁欲で、作家側からすれば単に作るだけなら簡単なルール。
ただ、面白くしようと思ったら大変で、それは作家の腕の見せ所でしょう。

例題2 上谷直希作
禁欲では合駒を取るのも一苦労。
合駒を取れるような状況を作るために、角を最遠移動するのが面白い意味付け。

6.あとがき
(p.128)

まさかの128ページ。
私が担当したフェアリー短コンのページ数も一因ですね。
盛り上がっているのは良いことです。