Breton Adverse
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
チェス・プロブレムのフェアリーを鑑賞していたら面白いルールを見かけたので紹介したいと思います。
Borisas Gelpernas, Thomas Maeder and Jacques Rotenberg
Julia's Faires 2022 (version)
【 Helpmate in n 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングを詰ます。もしnが半整数なら、白から指し始める。
※詰将棋と異なり、白に王手義務はない。
【 Breton Adverse 】
駒を取ったとき、取られた駒と同種・同色の駒があれば一つ消さなければならない。該当する駒が複数ある場合、取った側が選択できる。
今回紹介するのは「Breton Adverse」というフェアリールール。
駒取ったときに取られた駒と同種・同色の駒があれば一つ消さなければならない、というルールです。
まずはBreton Adverseのルールがない普通のHelpmateとして眺めてみます。
実際は黒の手番ですが、白の手番だと仮定するとメイトする順があります。
f7の白ポーンでe8あるいはg8の駒を取ってプロモーションします。
黒はa5の地点に味方の駒を動かして退路を封鎖します。
あとはプロモーションした駒でメイト。
従って、黒は1手目で1.Ra1などと手待ちをすればよいです。
これが普通のHelpmateとして見たときの手順です。
Breton Adverseがルールに加わるとどう変わるのでしょうか?
実際は黒の手番ですが、先程と同様に白の手番だと仮定して見ていきます。
まずは1…fxe8=Sとします。
f7の白ポーンがe8の黒ルークを取ってナイトにプロモーションしました。
黒ルークを取ったということは、盤上に黒ルークがあったら一つ消さなければなりません。
対象となるのはa2の黒ルークしかないので、これを消すしかありません。
これで2.Ra5が指せなくなってしまいました。
困ったようですが、これを解決するのが黒の1手目。
1.f1=Rとf2の黒ポーンをルークにプロモーションします。
なぜルークにプロモーションしたのでしょう?
その意味は先程と同様に進めたときに分かります。
黒ルークを取ったので、やはり盤上に黒ルークがあったら一つ消さなければなりません。
ここで黒ルークはa2の他にf1にもいるのがポイント。
a2ではなくf1の方の黒ルークを消せば、a2の黒ルークが残るというわけです。
これで2.Ra5と退路を封鎖することが可能になりました。
最後はプロモーションしたナイトを動かしてメイト。
2解目の解説は割愛しますが、意味は同じで対照的な手順が見られます。
駒取りをした際に生じる問題をプロモーションで解決するという実に狙いが明快な作品でした。