WFP2022年10月号 感想

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2022年10月号(第172号)の感想を書いていきます。

1.はじめに(p.2)

■ 新居浜太鼓祭り
お祭り楽しそう。
大道フェアリー詰将棋で一儲けする案が浮かびました。
…儲かるか?

2.玉が増える詰将棋(pp.3~4)

手順の途中から玉が増える作品が紹介されています。
併せて多玉詰の説明文が改訂されました。

手順の途中で駒にロイヤル属性が付与されるという特殊性は、様々な応用展開が期待できます。
私が特に興味を持ったのは、変寝夢作(WFP作品展72-4)のような「初形に攻方王がいない協力自玉詰」です。
この分野はまだ作例が少ないので研究しがいがありそうです。

また、神無七郎氏は

これを拡張すれば、酔象を複数持たせて、太子を大量生産する「多玉協力自玉詰」も考えられますが、発表例はありません。

と述べています。
これは氏からの宿題ということでしょうか。
太子に拘らなければ「ロイヤル属性を持った攻方駒を大量生産する多玉協力自玉詰」と抽象化することもできます。

3.第144回WFP作品展結果(pp.15~35)

WFP作品展鑑賞室:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html

■ 144-1 上田吉一作
中立BishopとPWCを使った香鋸。
香鋸自体もびっくりですが、こんなに明快に創れるものかという驚きの方が大きいです。

■ 144-3 神無太郎作
打った桂が斜めに2回動くのが印象的。

■ 144-4 神無太郎作
とにかく銀が動くのが楽しい作品。
一見無意味に見える5手目74銀~7手目76銀の味もいいですね。

■ 144-5 占魚亭作
Imitator+背面という猛烈に相性が悪そうなルール。
最近ではるかなん氏も発表していましたね(WFP作品展141-10)。
本作は背面色が強く単なるルールの足し算になっている印象。
Imitatorの貴公子の異名を持つ(すいません私が今勝手に名付けました)占魚亭氏をもってしてもこうなるということは、相当扱いにくい組み合わせなのでしょう。

■ 144-7 駒井めい作
自作。
Take&Makeは作る上で詰め上がりの制約が強い印象。
どんな表現ができるのか、もう少し作例を積み重ねる必要があると思っています。

■ 144-8 真T作
受方桂が4回跳ねる気持ちのいい作品。
特殊なフェアリールールを抜きにすれば、原理上11手が最短なんですね。

■ 144-9 真T作
受方の初手と合駒で攻方に金銀を計8枚を連続で渡す驚きの手順。
2種類以上の駒を連続合する場合、合駒する駒の順番を限定するのは特に難しそうです。
攻方王の存在を含む巧みな配置によって実現されています。
「す…すごい!」という貧弱な私の語彙力を見せつける感想しか出てきません。
作者も述べている通り”疑似”8連合ですが、これはもう気持ち的には8連合でいいでしょう。

4.今月の手筋(p.35, 95)

テーマは複王手。
両王手も含む概念だそうで。
こうして手筋を整理していくのは大事ですね。

5.協力詰・協力自玉詰 解付き #6(pp.63~67)

私の担当コーナー。
「作品の投稿が少ないよぅ…」とTwitterで私がえぐえぐ泣いていたら、優しいかいりゅー氏が2作も投稿してくれました。
springs氏の投稿はいつも本当に助かっています。

今回6-2かいりゅーになりたい作と6-3springs作の後半4手が衝突するという出来事がありました。
珍しい手順ではないのですが、流石に同じ号で衝突するのは珍しいでしょうか。
前半の4手で差別化がされているので大した話ではありませんが。
そんなことがあったので「私ならどう作るだろう」と考えていたら、今度は私が左真樹作と完全に正面衝突しました。
解説で言及している左真樹作は既に知っていたかのようにドヤ顔で書いていますが、実際は衝突して知ったというわけです。

ところで、今回試験的に創作課題を出してみました。
受方持駒なしの設定を活かした作品として、藤原俊雅作(WFP作品展136-7)が記憶に新しいです。
受方持駒なしをポジティブに活用するのは、そこまで開拓が進んでない領域だと思います。
是非挑戦してみてください。

6.第10回フェアリー入門出題(pp.68~71)

課題は透明駒。
フェアリー入門は担当募集中のようですが、今回単発で上谷直希氏が担当することになりました。

透明駒はどうしても難しい印象がありますが、理解できるととても面白いです。
どれくらい解答が集まるでしょうか。

7.実験室の悲劇(第10回)(p.72)

次の丑年までストックしておこうと思いましたが気が変わったので公開することにしました。

という文章を見て「次の丑年めっちゃ先ですやん!」と思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
ベテラン作家ともなると、私のようなせっかちなペーペーと時間の感覚が違うようです。

8.第9回フェアリー入門解答(pp.73~92)

⑦⑧ シナトラ作
と飛・と角のツインが2作。
ツインにするアイデアは私も考えましたが、まともなものが作れず。
本作を見て「やっぱり巧いなぁ」と感心しました。
⑧については52とと65桂の配置が巧い。

⑩ るかなん作
解説中のと玉協力自玉詰に強い興味を抱きました。
後述のように私もと玉は考えていました。
ただ、協力自玉詰に展開するところまでは考えませんでした。
るかなん氏の豊かな発想力に感心しました。
WFP作品展でと玉多玉協力自玉詰が出題中ですし、氏の研究成果を楽しみに待ちたいと思います。

⑪ 駒井めい作
自作。
今回も作品を投稿していますが、出来は大変不満です。

最初に取りかかったのが「と玉」。
そりゃ標準駒を端から機械的に当てはめていくと、成って一番面白いのは玉ですからね。
担当のたくぼん氏的には想定外だったようですが(②の解説参照)。
ただ、多玉詰ルールを追加することになる上に、多玉詰ルールの説明文を改訂する必要があることに気付きました。
こりゃ入門の枠を超えるなってことで投稿を断念。
この問題については、今月号の「玉が増える詰将棋」で神無七郎氏が言及していたので解決済み。

次に取りかかったのが「と不滅歩」。
これはWFP第170号の「今月の手筋」を読んで思い付きました。
とは言え、入門で不滅駒を使うのは流石にやりすぎだと思いました。
アイデアを形にしてWFP作品展に投稿(第146回で出題中)。
これ以上書くと出題中の作品の内容まで書いてしまいそうなので、この話題はここで切り上げることにします。

色々と紆余曲折はありましたが、最終的に「と角」にしました。
本作について36歩から始めたい気持ちは当然強かったです。
攻方王を使えば36歩から始められることは創作段階で分かっていました。
しかし、2手目37同歩生のときに見かけ上「攻方王に王手をかけないように生にする」という意味付けが混じってしまいます。
これは私の中で生理的に無理だったので却下しました。

⑫ 伊達悠作
角5枚で玉を空中捕獲。
視覚的な面白さがあって、こういう遊び心がある作品は好きです。

色塗りされた詰上図を見ながら、「映画とかに出てくる赤外線センサーを避けるあれみたいやなぁ」とどうでもいい感想を抱きました。
いやまぁがっつり赤外線センサーに当たってますが。

⑬ 真T作
二歩禁を回避するために歩から歩に成る。
同格成の応用展開は私も考えていたので、目から鱗の発想でした。

⑭ springs作
無仕掛けからあそこまで玉を引っ張り出すのは意外な展開。

⑮ 北村太路作
歩を成成生で突いていく楽しい趣向作。
歩を端から順番に突いていくわけではないので、それもいいアクセントになっています。

⑯ 神無七郎作
本当に巧くできているなと思いました。
解けば分かりますが、重要なサイクル部以外は紛れがほとんどないんです。
そして、サイクル部については適度な難易度で、解答者をキレイに裏切る結論になっています。
長編入門として素晴らしい作品。

その他
最後に誘い水氏の三作が紹介されています。
左真樹氏と同一人物という噂も。
ここまで来ると都市伝説の雰囲気すら漂ってきますが真相や如何に。

9.駒余り禁・限定協力詰超入門(p.93~95)

第11回フェアリー入門の課題は駒余り禁・限定協力詰。
作りやすいルールなので、たくさん投稿がありそうな予感。

紹介されている神無七郎作は凄まじい作品ですね。
凄まじすぎて私にとっては参考にならんのですが、とてもいいものを見せていただきました。

10.Lortapの紹介(p.96~99)

私が書きました。
Lortapルールの紹介。

fmzaにはだいぶ前から実装されていたようです。
誰も作らないのを不思議に思って作ってみることにしました。
調査してみると結構面白く、発展性のあるルールだと分かりました。
それで詰将棋メーカーに例題を投稿し、紹介記事を書いたという流れです。
記事の執筆に際し、金少桂氏にご協力いただいたおかげで分かりやすい内容になったかと思います。

11月号のWFP作品展でLortap作品を出題させていただく予定なのでお楽しみに。
入門作品展の方も作品の投稿をお待ちしています。

11.作品募集一覧(p.100)

■ ちょっと早い2023年年賀詰作品展
この時期がやって来ましたあああ!!!!
と声だけは大きい私ですが、実は前回は投稿してないんです私。
なんなら年賀詰自体まともに作ったことないですね。

■ 協力詰・協力自玉詰 解付き
あれ?私の担当コーナーの作品募集が抜けてる?
とこの文章を書いているまさに今この瞬間に気付きました。
スペース的に書くところないし、本文にはちゃんと書いてあるからまぁいっかw
忘れなかったら次号の原稿送るときに指摘しよう。
あー、忘れそー。