WFP2023年2月号 感想
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2023年2月号(第176号)の感想を書いていきます。
1.はじめに(p.2)
100号記念のときには「1人1作作品展」などが催されたようです。
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/WFP100.pdf
2.作者は「誤記」(p.3)
科学の発明でも人的ミスがもたらした偶然がきっかけになることがあるようです。
人的ミスは当然減らした方が良いですが、そういった偶然もまた大事にしたいですね。
3.今月の手筋(p.15, 99)
テーマは「邪魔駒設置」。
作家的には「どう創ると面白いのか?」は当然考えてみたいところ。
「設置した邪魔駒が一見すると邪魔駒に見えない」みたいな普通詰将棋における邪魔駒消去と同じ方向性が一番シンプルでしょうか。
他には「詰を先延ばしにするために邪魔駒を設置したいが、何らかの理由によりそれができない」みたいな多重構造は?
4.第147回WFP作品展結果(pp.17~44)
WFP作品展鑑賞室:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html
■ 147-3 駒井めい作
自作。
銀を動かせば飛車で、飛車を動かせば銀で王手がかかります。
2つの委託王手が共存した構造です。
■ 147-4 占魚亭作
最後にNightriderが消える作品。
a図では角、b図では飛車を手順に発生させて取らせます。
ツイン作品として対照性が高く、素晴らしい出来です。
■ 147-6 上田吉一作
いわゆる再帰的手順の作品。
臣の整列機構に角の移動が組み合わさっています。
複雑な機構になりそうですが、論理的かつ明快に実現されているのが本当にすごい。
■ 147-7 伊達悠作
盤上に攻方玉がない協力自玉詰で、手順に二玉を発生させる作品。
以前誌面で神無七郎氏が言及していたテーマです。
単に実現するだけなら、それほど難しくありません。
ただ、本作は盤上の駒数がたったの4枚で、攻方持駒を含めても6枚という効率的な初形で実現されています。
更に詰め上がりも二玉らしい形。
一号局として素晴らしい出来と言えるでしょう。
駒の成で攻方玉を発生させる場合、特殊なルールを導入しない限り開王手を利用することになります。
そこが表現上の制約で、別の発生機構を考えてみたいところです。
■ 147-8 springs作
持駒を消去するために、合駒で持駒が増えるのが面白いところ。
しかも合駒の種類は複数に渡り、その意味付けも実に複雑です。
禁欲でこんなに複雑な機構が創れることに驚き。
■ 147-9 springs作
持駒歩の消去に銀鋸が組み合わさった作品。
楽しい趣向手順。
■ 147-11 変寝夢作
Zeroは使い勝手が悪い駒ですが、こんな活用方法があったとは。
■ 147-12 真T作
最悪詰最長手数作とのこと。
攻方は相手玉がなるべく詰まないように角を成る選択をするのが不思議な感じ。
5.第13回フェアリー入門(禁欲協力詰)結果(pp.49~65)
① 上谷直希作
禁欲では邪魔駒を消去するのも一苦労。
③ 神無七郎作
禁欲詰でも最終手が香短打の限定なのが面白い。
禁欲詰で無駄合は簡単には成立しないというわけですね。
すぐには思い付かないですが、何かに利用できそうな仕組み。
④ 駒井めい作
自作。
例えば、本作で持駒金を持っていたら、2手目25角に対して3手目34金が優先されるので、その持駒金を予め消去しておく必要がある…というロジックになります。
持駒消去との組み合わせは全く考えていませんでしたが、面白そうですね。
⑤ 上谷直希作
禁欲で不利先打が表現できるのは「なるほど」と思いました。
⑧ たくぼん作
色々な趣向が見られる楽しい作品。
⑨ springs作
チェス・プロブレム用語を借りるならConsecutive Umnov。
本作は金と飛ですが、同種駒でやるのも面白そうなテーマ。
⑩ たくぼん作
周回しながら一つずつ課題をクリアしていく構成。
解答時に受方桂を動かして周回コースを作る手が見えず。
6.第15回フェアリー入門(All-in-Shogi協力詰)(pp.69~73)
次回の課題は「All-in-Shogi」。
相手の駒を動かせるので、かなり特殊なルール。
例題3 変寝夢作
詰め上がりで攻方馬を動かすと背後の攻方香で王手がかかります。
この潜在的な開王手が興味深いです。
7.協力詰・協力自玉詰 解付き #9(pp.90~94)
フェアリー雑談
「アナグラム」というルールを取り上げました。
作例が非常に少なく、創作の自由度も正直低いです。
ただ、パズル的な面白さがあるルールです。
神無七郎氏が公開している「NoCheck5.exe」で機械検討が可能です。
9-2 北村太路作
受方開王手2回。
協力詰とは思えない緊張感がある作品です。
8.第2回最後の1ピース作品展(pp.97~99)
「最後の1ピース」というルールの作品展で、今回が第2回。
前回好評だった作品展で、今回も楽しみです。
9.あとがき(p.100)
尿路結石とは…お大事に…。