めいのぼやき18 チェス・プロブレムの入り口
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
今回は詰将棋ではなく、チェス・プロブレムの話をしたいと思います。
といったチェス・プロブレム初心者を対象にした内容になります。
「チェス・プロブレムも面白いぞ!」ということを伝えたくて、その入り口的な内容を書こうと思い立ったわけです。
1.チェス・プロブレムとは
チェス・プロブレム(Chess problem)とはチェスのルールに則ったパズルのことです。
チェス経験者が「タクティクス(Tactics)」と混同しているのを時々見かけますが、両者は異なる物なので注意してください。
チェス・プロブレムとタクティクスの違いは、Wikipediaのチェス・プロブレムのページにある"概要"の項目に書かれているので、知りたい方はそちらを読んでください。
出題形式にいくつか種類があるのですが、一番分かりやすいのが「ダイレクトメイト(Directmate)」です。
「オーソドックス(Orthodox)」と呼ぶこともあります。
これは「白(White)から指し始めて指定された手数で黒(Black)の王様(King)を詰ます(メイト, Mate)」という設定です。
このとき、黒は詰まされないように抵抗するものとします。
一旦ここでは「将棋の必至問題みたいなものだな」とイメージしておいてください。
詰将棋みたいなものじゃないかって?
必至問題に例えた理由は後の説明で分かります。
厳密には必至問題とも違うのですが、無理矢理に将棋で例えるとこれが一番近いと思います。
とにかく将棋経験者にとっては一番理解しやすい出題形式なので、まずはここから入るのがオススメです。
2.チェスのルールを覚える
チェスのルールを知らないことには始まりません。
私がオススメするのは下記の「チェス入門」というサイトです。
3.チェス・プロブレムを解いてみる
チェス・プロブレムのダイレクトメイトを鑑賞していきましょう。
入門的な本やサイトを紹介していきます。
3-1 チェス・プロブレム入門
一番良いのは「チェス・プロブレム入門」という本を買って読むことです。
これを買って読めば、正直今回の話はここで終わりです。
ただ、この本はいつ入手不可になるか分からないので、違うルートで学ぶ方法も続けて紹介していきます。
3-2 OzProblems
「OzProblems」というサイト中の「Problem World」というコンテンツが丁寧な解説で読みやすいです。
もしチェス・プロブレム入門を買わないor買えないなら、このサイトを活用することを強くオススメします。
3-3 Try, everybody!
「Try, everybody!」という連載中(2021年3月22日現在)のチェス・プロブレム入門企画も面白いです。
詰将棋と絡めた話も時々登場するので、詰将棋ファンは必見でしょう。
4.躓きやすいポイント
チェス・プロブレムを知り始めた際に躓きやすいポイントを少し書いていきます。
4-1 先手
チェスでは白が先手で、ダイレクトメイトでも白から指し始めます。
将棋経験者にとってここが混乱しやすいところです。
4-2 王手義務
「要は詰将棋でしょ?」と思った方が躓くのが「王手義務」です。
チェス・プロブレムには王手義務、つまりチェック(Check)する義務はありません。
4-3 出題形式の表記
局面図の下などに書かれた「#2」という謎の表記に困惑した方もいるかもしれません。
これは「Mate in 2」つまり「2手で詰ませ」という意味で、ダイレクトメイトとして出題する際の表記方法です。
手数の数え方が将棋とは異なることに注意してください。
「#2」と書かれたら、将棋的に手数を数え直すと「3手詰」になります。
また、出題形式が変わってくると「H#2」「S#2」などと表記も変わってきます。
4-4 Key・Threat・Try
解説を読んでいると、「キー(Key)」「スレット(Threat)」「トライ(Try)」といった用語が山ほど出てきます。
・Key
キー(Key)あるいはキームーブ(Key move)は「解の初手」のことです。
ダイレクトメイトの場合は「白の1手目」に該当します。
・Threat
スレット(Threat)は「仮に相手が放置したときにこちらが詰ます手順」のことです。
将棋でいう「詰めろ」みたいなものです。
・Try
トライ(Try)は詰将棋でいう「紛れ」です。
「詰みそうだけど相手に防がれて詰まない手順」のことです。
4-5 ナイトの棋譜表記
ナイト(Knight)の駒は棋譜上では通常「N」と表記されます。
しかし、チェス・プロブレムでは「S」と表記されます。
これは変則ルール(フェアリー, Fairy)で登場するナイトライダー(Nightrider)という駒に「N」の表記が用いられるためです。
4-6 意味不明な用語
意味不明な用語が出てきた場合はWikipediaを活用しましょう。
チェス・プロブレムのページはかなり充実しています。
5.コンピュータ解析を活用する
誌面の都合などで解説が不足している場合も考えられます。
「この手じゃダメなの…?」という疑問が生じたときはどうすればよいでしょうか?
その場合はコンピュータによる解析を活用しましょう。
将棋だとShogiGUIなどにエンジンをインストールして解析している方が多いと思います。
チェスの場合は対局サイトにコンテンツとして実装されていることが多いので、そちらを活用するのが一番楽です。
但し、対象とするプロブレムはダイレクトメイトに限られます。
そもそもの用途が違うのでプロブレムの正確な解を返してくれるとは限りませんが、それでもかなり役立ちます。