双方連続王手の千日手
今回のテーマは「双方連続王手の千日手」です。
「連続王手の千日手」は「千日手」に内包されるルールです。
まずは「千日手」及び「連続王手の千日手」の成立条件を確認していきます。
その後に「双方が連続で王手をして千日手になったらどうなるか?」という特殊な状況を考えていきます。
1.千日手
千日手の成立条件は日本将棋連盟HPで下記のように定められています。
「同一局面が4回現れた状態」を千日手と呼びます。
同一局面とは「盤面・両者の持駒・手番」が全て同じ状態を指しています。
千日手が成立した場合、その対局は無勝負という扱いになります。
2.連続王手の千日手
「千日手の場合は無勝負」と書きましたが、これには例外規定があります。
それが「連続王手の千日手」であり、扱いが変わって反則と定められています。
連続王手の千日手の成立条件は下記のように定められています。
千日手が成立したときに、片方の着手が全て王手の場合に連続王手の千日手となります。
このとき、連続で王手を掛けた側が反則負けとなります。
この反則の何がややこしいかと言うと、反則が成立する手番と反則負けになる手番の関係が必ずしも一定ではないことです。
二歩など他の反則は必ずこの関係が一定なので、詰みを判定する際に問題になりません。
「連続王手の千日手」は反則の中でも特殊な性質を持っているのです。
この点は縫田光司氏作の詰将棋「最後の審判」が発表されてから議論されてきた内容ですが、今回の趣旨から逸れるので割愛します。
3.双方連続王手の千日手
連続王手の千日手は片方が連続で王手した状況を仮定しています。
「双方が連続で王手したらどうなるか?」というのが今回の内容です。
「連続で王手を掛けた側が反則負け」という箇所だけ抜き出して文面通りそのまま適用すると、「両者が反則負け」という謎の裁定が下されることになります。
「ルールの不備ではないか?」と思われる人もいるでしょうが、将棋の局面として実現不可能と考えられているので、現状では何の問題もないのです。
ただ、既に問題が起きている分野もあります。
それが変則詰将棋(フェアリー詰将棋)です。
変則ルールを使えば、本将棋で不可能なことも可能にできてしまいます。
4.変則ルールによる実現
「双方が連続で王手をして千日手になる」という状況をどうすれば実現できるか。
上谷直希氏によって発表されている作品が、最も代表的なものと言えます。
受方玉の代わりにQueenを使ったもので、攻方の目的はQueenを詰めることです。
Queenはチェスの駒なので、将棋から見れば変則駒です。
それ以外は普通の詰将棋と同じで、たったこれだけの変則要素で「双方が連続王手をして千日手になる」という状況を実現したわけです。
本作は
という前提で成立しています。
あくまで変則ルールの範疇で定めたに過ぎませんが、連続王手の千日手という特殊な反則を考える上でも非常に価値のある作品と言えます。
「連続王手の千日手」という反則の特殊性は、縫田光司氏作「最後の審判」以降、数多く議論されてきました。
変則詰将棋の世界では変則ルールとして「連続王手の千日手」が整備され、作品が創られています。
実戦で現れることのない「双方連続王手の千日手」は、詰将棋の表現としてどのような可能性が眠っているのでしょうか。