WFP2023年10月号 感想

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2023年10月号(第184号)の感想を書いていきます。


1.詰と必至

(pp.3-4)

前号(第183号)に引き続き「詰めろでない必至」のお話。
これはチェス・プロブレムのDirectmateにおけるKey moveに考え方が似ています。

Key move(白の1手目)にthreatがある状態では、黒がパスすればある手順で黒キングがメイトされます。
実際には黒はthreatを受けて抵抗することになります。

ただ、Key moveにthreatがないタイプの作品もあります。
この場合は黒がパスすれば、当然黒キングはメイトされないわけです。
実際には黒が何かを指さなければならず、黒が指したことでメイトされる手順が生じるという構造になっています。

「黒にとってパスするのが損なのか得なのか」という点で、両者に大きな違いがあるのが興味深いところです。

将棋における「詰めろ」「必至」の関係はチェス・プロブレムほど論理的にに定義されていないので、なかなか厄介な問題ではあります。
いずれにせよ、王手ではない着手を許容したときにどのような作品が創れるかは、考えてみる価値がありそうです。

2.今月の手筋

(p.13, 35)

フェアリー手筋カード集:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/FCard/CardList.html

今月のテーマは「非標準移動」。
第59回神無一族の氾濫における創作課題にもなっています。
これまで用語はありませんでしたが、フェアリーにおいて花形と言ってもよいでしょう。
詰将棋で用いられているフェアリールールは、チェス・プロブレムから輸入されたものが数多く存在します。

一方で、性能変化ルールのいくつかは、詰将棋から輸出されています。

非標準移動が頻繁に見られる性能変化ルールは、フェアリー詰将棋の魅力の一つと言えます。

3.第154回WFP作品展結果

(pp.14-35)

WFP作品展鑑賞室:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html

154-1 上田吉一作

龍鋸・飛鋸・角鋸と三種類の鋸趣向が融合した作品。
とても自然な仕組みで構成されていて、洗練された印象を受けます。

154-4 占魚亭作

点鏡とAll-in-Shogiの組み合わせが上手く機能しています。

154-7 駒井めい作

自作。
ステイルメイト誘致が狙い。
非王手可最善詰は開拓の余地があるルールだと思っています。

154-8 さつき作

「持駒の等価変換」という画期的な作品。
…のはずでしたが、残念ながら不完全でした。

154-11 一乗谷酔象作

「玉による玉追い」という変わった手順。
駒全マネ取禁にこんな使い方があったとは。

154-12 変寝夢作

単玉の協力自玉詰という面白い設定。
中立玉は攻方玉であり受方玉であるのが、複雑ながら興味深い性質です。
協力自玉詰にすることで、この二面性がより際立っています。

4.透明駒コンクール 出題

(p.36-38)

透明駒作品が9作出題。
解き始めていますが、いやはや難しい…。

5.推理将棋第165回解答

(pp.40-48)

165-2 るかなん作

先手が強欲ルール、後手が禁欲ルールで指す設定。
フェアリールールによって手順が巧く限定されています。

6.Fairy of the Forest #75 結果発表

(pp.49-53)

75-03 たくぼん作

楽しい銀鋸作品。
玉から離れるように銀を動かして、それに玉が追従する手順は新鮮。

75-04 神無七郎作

金を呼び出すための繰り返し手順。
協力自玉詰ではなく、協力詰で成立させているのがお見事。
初手から最終手まで無駄のない構成。

7.第18回フェアリー入門解答

(pp.54-61)

今回の課題は「アンチキルケ協力詰」でした。
アンチキルケのルール理解が怪しい方は、たくぼん氏やsprings氏の記事が役立ちます。

② 神無七郎作

攻方銀が邪魔駒ですが、攻方銀を消去するのに攻方馬が更に邪魔になっているという構成。
この2枚の消去を受方香1枚にさせるだけでなく、成・生の両方が出現するのも素晴らしい。

③ 羽毛布団作

ミニ金鋸。
41の地点まで動かさなければならない理由も、アンチキルケらしくて良いですね。

④ げん作

げん氏はフェアリー入門初登場。
受方龍の利きを遮るというはっきりした目的があって好感触。

⑥ 真T作

アンチキルケにおいて重要な51の地点が開け閉めされる。
なんと濃密な手順。

8.レトロ協力詰超入門

(pp.62-71)

次回のフェアリー入門の課題は「レトロ協力詰」。
「逆算する」というのが独特で、理解するのが結構大変なルールです。
ただ、本稿はとても丁寧に解説されています。

レトロ協力詰は最近fmzaで検討可能になったルール。
ルール自体は以前からありましたが、フェアリー入門をきっかけに今後作品が増えていくことでしょう。

9.協力詰・協力自玉詰 解付き #17

(pp.72-73)

私の担当記事。
作品の投稿がなかったので、私の作品を出題しています。
また、創作課題も出しているので、作家の方は是非挑戦してみてください。

10.第3回フェアリー杯 作品紹介

(pp.74-76)

私の担当記事。
課題は「安北協力詰3手」でした。

3-1 無い段作

攻方王への打歩詰を活かした擬似透かし詰。
かなり強引な作りですが、狙いははっきりしています。

3-2 moirogue作

玉vs玉という緊張感のある手順。

3-6 xzg17作

12香生と中途半端に遠くへ限定移動するのが妙手。

3-7 げん作

最終手54角は攻方飛を本来の利きに戻しながら、もう一枚の攻方飛を角の利きに変化させる性能変化ルールらしい着手。
安北の面白さが素直に表現された作品。

3-8 springs作

二歩禁を活かした詰みを目指す手順。
禁手を狙いとした作品はフェアリーでも数多くあり、それだけ多くの人を魅了してきたことの表れです。
本作も明快で納得の作品。

11.衝立推理の紹介

(pp.77-82)

衝立推理の存在自体は知っていましたが、今回改めて勉強させていただきました。
推理将棋というより普通のプルーフゲームに近い雰囲気で、とても興味が湧きました。

12.たくぼんの北海道旅行記

(pp.83-86)

北海道は私も何回か行ったことがあります。
美味しいものがたくさんあって楽しいですよね。
ただ、観光以外の目的でしか行ったことないですが…。
長らく旅行に行ってないなぁ。