WFP2022年11月号 感想

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2022年11月号(第173号)の感想を書いていきます。

1.はじめに(p.2)

■ 皆既月食

しかし月食と言えば、伊藤正作「月蝕」でしょうか?初形丸の密集形から一旦駒が無くなり再び初形に戻るといった本当の月蝕の様なフェアリー作品は出来ないものか・・・をふと考えてしまいました。どうでしょう?

とたくぼん氏からネタ提供。
どうやるのかすぐには思い付かないですが、実現できたら面白そう。

2.不滅の持駒(pp.3~4)

不滅駒を初形で持駒にできるようにルール設定を変更するそうです。
確かに何で初形で持駒にできないんだろうとは疑問に思っていました。

不滅駒を積極的に活かした作品を考えてみたいところですね。
一旦盤上に出てしまうと消えることがない駒なので、少し扱いづらい印象を受けます。
何か巧い利用方法があるといいのですが。

3.第145回WFP作品展結果(pp.16~36)

WFP作品展鑑賞室:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html

■ 145-2, 3 駒井めい・羽毛布団合作
私と羽毛布団氏の合作。
好評だったようで安心しました。

■ 145-4 神無太郎作
7手目92飛が面白い手。
詰め上がりで攻方93飛の行き先を埋める意味があります。
93飛よりも92飛の方が手順上着手が先なので、後にならないと意味が分からないのもいい。

■ 145-6 真T作
香を4連続で合駒。
それが盤面4枚で実現しているのも驚き。

■ 145-7 上谷直希作
攻方と受方のどちらかが連続王手の千日手に抵触するか。
テーマだけでも面白いですが、序奏も含めて作者の拘りを感じます。

■ 145-8 伊達悠作
盤上に駒が増えていくステイルメイトはなんとも不思議な感じ。
特に興味深いのは7手目27桂。
桂自体は王手ではないですが、香のラインが切れるために金で王手がかかっています。
担当の神無七郎氏によれば

断言はできませんが、既に防がれているはずの王手で(別の駒による)王手を掛けるのは Isardam の新手筋だと思います。手筋の名前は「偽王手」でしょうか。

とのこと。
応用を考えてみたくなる手筋です。

■ 145-9 上田吉一作
受方と金を引っ張り出すために、受方銀を一度九段目まで運ばなきゃいけないのが面白い。

■ 145-10 青木裕一作
手番譲渡。
双方の駒がスイッチバックするだけでは手番譲渡は生じません。
スイッチバックは同経路で戻るという性質から、必ず偶数手数を消費するからです。
重要なのは2手目11金~4手目21金~6手目12金という3点のルントラウフ。
これによって奇数手数(3手)が消費され、手番譲渡が生じています。
ルントラウフは経路によって手数の偶奇を制御できるので、この性質は何かに応用できそう。

4.今月の手筋(p.50, 96)

フェアリー手筋カード集:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/FCard/CardList.html

テーマは手番譲渡。
第145回WFP作品展の145-10青木裕一作の解説において、担当の神無七郎氏が言及している通り、案外深堀されていない分野。

手番譲渡は、普通の詰将棋では実現できませんが、受先や非王手ルール等、王手・王手回避の枷から外れた着手が可能なルールであれば実現可能です。今月の「手筋カード」でもこの主題を取り上げたので参考にしてください。あまり深掘りされていない分野ですから、まだまだ開拓の余地が多く残されていると思います。

手番譲渡に限らず、手番に関するテーマは私も興味を持っています。
先の青木裕一作はもろに手番譲渡ですが、145-7上谷直希作も広い意味で手番が関係するテーマです。
色々と考えどころがあるテーマだと思っています。

5.上谷直希「透明駒自作ミニ作品集」(p.64)

これはオススメ。

6.協力詰・協力自玉詰 解付き #7(pp.65~70)

前号で

出題図で「受方持駒なし」の協力詰あるいは協力自玉詰を作れ。
この設定を活かした内容にすること。

という創作課題を出していました。
これに答えてくださったのが7-1青木裕一作と7-2せら作。
ありがとうございました。
創作課題を毎号出すのは難しいですが、今後も出していきたいと思います。

7-3かいりゅーになりたい作は「協力自玉詰の投稿がない」という私のツイートを見て投稿したくださったものです。
前号に引き続き本当に助かりました。

7.第11回フェアリー入門出題(pp.71~74)

課題は駒余り禁協力詰・限定協力詰。
第13回からは新担当者が就任するそうです。
これまで編集作業もある中でたくぼん氏が担当してきたコーナー。
なんとか継続できそうな形になって安心しました。

8.第10回フェアリー入門解答(pp.75~92)

課題は透明駒。
今回は上谷直希氏が単発で担当。
解答者24名に驚き。
すごい人気ですね。

チェス・プロブレムでは「Total Invisible」という所属すら不明の透明駒も開発されているんだとか。

Quatz 50号(2020年9月号)"From Variables to Total Invisibles" (pp.835-840) https://quartz.chessproblems.ca/pdf/50/Quartz50.pdf

(2) 占魚亭作
最初にこれが解けて一安心。
心が折れずに済みました。

(3) 上谷直希作
玉の位置を確定させる半透明駒。
透明駒が玉であることは確定していて、11の地点にいるはず。
透明駒に不慣れな私でも解図意欲が湧く作品です。
適度に紛れがあって良質な入門作という感じ。
いやー、巧い。

(4) 高坂研作
変同利用で3つのバッテリーが現れる。
透明駒の性質を存分に活かした作品。

(5) 竹内亮太作
初手55玉が反則のような手で印象的。
受方の透明角が受けに利いてくるために、最終手は22金に限定されます。
細かいところまで気を配っていて、ロジックが綺麗な作品。
これは結構私好み。

(10) springs作
一手で二枚の透明駒が可視化されて気持ちがいい。
応用を考えてみたくなる手筋で、とても興味深い作品。

(11) 青木裕一作
初形のインパクトが大。

9.最悪詰超入門(p.93~96)

第12回フェアリー入門の課題は最悪詰。
真T氏が単発で担当されるようです。
入門作はもちろんですが、何か新しい表現が出てくるかも気になります。

10.実験室の悲劇(第11回)(pp.97~98)

No.1
攻方と・受方角の背面対が二回出てくるのが面白い。

11.第2回最後の1ピース作品展(p.99)

最後の1ピース作品展の第2回が開催されるそうで、その作品募集。
前回に引き続き、このルールの提案者である馬屋原剛氏が担当。
使用ルールに制限が設けられたのが今回の変更点のようです。
前回はどんなものを作ったらいいのか、ほとんどの作家が手探りだった印象です。
今回は2回目なので、狙いをもった作品が増えるでしょう。

12.フェアリー入門 別館#0(pp.100~101)

担当者が一体誰なのか分からないのですが、読んでいくと伊達悠氏だと判明。
ってことで、伊達悠氏による新コーナー。
確かにこれは需要がありそう。

別館0-1 伊達悠作
3手で受方飛を龍に変換。
手順は明快。

13.あとがき(p.102)

いつもあった「あとがき」が遂に消滅。
解答募集一覧・作品募集一覧に私の担当コーナーが計3つもあるわけですが。
とりあえず次号のフェアリー短コンの結果発表は、皆さんに楽しんでもらえるよう頑張ります。