WFP2022年9月号 感想

バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2022年9月号(第171号)の感想を簡単に書いていきます。

八十一日間世界一周(pp.3~4)

「元の位置に戻るのに最も手数を要する駒を作れ」
というのがここでのテーマ。
将棋盤は81マスなので、理論上の最大値は81手になるはず。
その実現例が示されています。
軌跡曲詰など駒の軌跡を用いた趣向をフェアリーらしい方法で実現するのは面白そうなテーマです。

第145回WFP作品展(pp.12~14)

■ 145-2, 145-3 駒井めい・羽毛布団合作
羽毛布団氏が初登場。
私から声をかけて合作しました。
非常に有意義な合作になったかと思います。

今月の手筋(p.14, 50)

テーマは持駒消去。
双方ミニにすれば持駒譲渡にならずに高い純度で実現できるようです。
「なるほど」と思わず頷きました。

第143回WFP作品展結果(pp.17~37)

■ 143-1 神無太郎作
桂がひたすらサイドステップするのがコミカルで面白い。

■ 143-4 真T作
受先で初手透明駒。
成立のロジックと可視化のタイミングが巧妙。
余詰は残念だが修正図があるようでよかった。

■ 143-5 真T作
角が一回転。
効率的に経路を限定するのは難しそうだが、33桂の配置で見事に制御している。

■ 143-9 たくぼん作
復活両王手。
狙いとは直接関係ないが、ミニ馬鋸が登場するのが印象に残った。

■ 143-12 青木裕一作
1手で詰むところを金で追い回して11手で詰ます手順。
理想的には金が67の地点まで戻ってくる方がよいが、それは流石に成立させるのが厳しかったのかも。

第4回フェアリー短編コンクール 出題(pp.38~50)

今回は私が担当。
19名の作者から計27作が出題されています。
ご投稿ありがとうございました。
解答を募集していますので、是非挑戦してみてください。

Fairy of the Forest #71 結果発表(pp.51~54)

■ 71-02 たくぼん作
桂2枚を入手する過程で、桂を一度受方に渡すのが不思議な感じ。

■ 71-03 神無七郎作
歩を4枚入手することが収束に入る条件。
飛車は最初右回りだが、歩を入手するために左回りに転換しなければならない。
そして、歩を4枚入手した後は右回りに戻さないと収束に入れない。
この方向転換が面白い。
69桂 同銀生の2手が序盤のあのタイミングでしか入らないのも凄い。

Fairy of the Forest #72 課題発表(p.54)

次回も自由課題の模様。
課題創作を復活させる方針ではあるようです。

第1回Imitator入門作品展【結果】(pp.70~83)

Imitatorの面白さが比較的低い敷居で感じられました。
そうは言っても十分すぎる歯応え。

5.神在月生作
盤上には攻方駒は1枚しかない。
それを初手で捨てるのは意外。

第8回フェアリー入門解答(p.92~104)

課題は非王手協力詰。
私は解答でも参加しましたが、後半が難しかった。

⑧ 原亜津夫作
飛角どちらかの利きを遮ることで、受方にもう一方の駒を捨てさせることが可能に。
ツインで見事な対比が実現されている。

⑨ 原亜津夫作
飛角のバッテリーを構築。
ツインでフロントピースとリアピースが入れ替わる。
作者の言う通りチェス・プロブレムでよく見かける手順ではある。
ただ、それだけ多くの人が面白いと感じる実績ある手順だとも言える。
本作は狙いが明快に表現されている。

⑪ 真T作
何と言っても27角~49角生が印象的。
手順、配置共に無駄がない。

⑫ 真T作
攻方がTempo move
Tempo moveが必要なのはすぐに察しが付いたが、受方が何を指せばいいかで悩んだ。

⑬ 原亜津夫作
これは本当に難しかった。
25角の睨みをなんとかしなければならないが、2手目36金の発見に時間がかかった。
利きの遮断・持駒入手・Tempo moveと複雑な構成になっている。

第10回フェアリー入門【透明駒超入門作品募集】(p.105)

長期・短期問わず担当者を募集していたフェアリー入門。
今回単発で上谷直希氏が担当することになりました。
課題は透明駒。
透明駒は複数の可能性が重なって存在しているところが面白さの本質。
一方で、それが敷居の高さにも繋がっています。
透明駒の面白さを残しつつ、どれだけ敷居を低くできるかに注目したいです。

あとがき(p.110)

中長編作品の減少が危惧されています。
フェアリーの中長編作家が少ないのもありますが、作品展を開催する上で担当者が不足しているのも大きな問題。
私も自分にできることをやって、少しずつ問題を解決していきたいと思います。