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交指連40年の歩みと新たな展開を語る


出席者
渡邉  修(道交指連5代会長)      コーディネーター 萩原  亨
西岡 資純(道交指連顧問)        (北海道大学大学院工学研究院教授)
小玉 俊宏(道環境生活部長)       事務局 加門 清(道交指連事務局長)
磯部 哲志(道警本部交通部長)                 (文中敬称略)

■  道交指連創立40周年記念座談会要旨
 日 時:平成29年8月21日(月)午前10時30分~
 場 所:第二道通ビル2階会議室2B

○事務局(加門事務局長) 本日は、ご多忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 私は、北海道交通安全指導員連絡協議会(以下「道交指連」という。)事務局の加門でございます。
 本日の座談会の進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 ご案内のとおり、道交指連は、来年で創立40周年となりますので、これまでの40年を振り返り、また、これからの展望について、座談会形式で語り合っていただきたいと存じます。
 この内容は、来年5月の道交指連創立40周年記念式典後に作成します記念誌に掲載する予定でございますので、よろしくお願いします。
 本日の座談会のコーディネーター役は北海道大学の萩原教授にお願いし、北海道からは小玉環境生活部長、北海道警察本部からは磯部交通部長をお招きし、私どもの道交指連からは渡邉会長、西岡顧問に入っていただいております。
 それでは、萩原コーディネーター、よろしくお願いいたします。
○萩原コーディネーター 萩原と申します。よろしくお願いいたします。
出身は札幌です。北海道大学工学部土木工学科を出まして、道路交通関係の研究をさせていただいております。研究室の先輩には、国道36号の弾丸道路を設計した方もいらっしゃいます。
 自分は、昭和59年から研究職として交通安全に関係する研究をずっとさせていただいています。冬期の滑りによる事故、カーブ区間での事故、正面衝突事故などの分析などをやってきました。最近では、夜間の横断歩行者事故や右折車と横断者との事故についての分析をしています。
 一方で、道路施設に関する技術開発もしております。吹雪時の視界評価技術の開発、交差点事故を記録する装置の開発、視線誘導灯の開発、リアフォグランプ・ヘッドライトの開発、プロビーム照明の開発などをやってきております。
 長く北海道の交通事故の分析にかかわらせてもらっています。今日は皆様からいろいろなお話をお聞かせいただけるのかなと思いまして、楽しみにしてまいりました。
 簡単ですが、以上で自己紹介にさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、今、私から簡単に自己紹介させてもらいましたが、まず渡邉様から自己紹介をお願いいたします。
○渡邊 私は、道交指連の5代目会長の渡邉と申します。
 本日は大変お忙しい中、この道交指連の座談会にご出席いただきましたことを厚くお礼申し上げます。
 道交指連ができて来年で40年ですが、来年5月24日、滝川で40周年記念事業の開催を決定いたしました。まず、道交指連の発足と経緯について若干触れたいと思います。北海道交通安全指導員連絡協議会が設立される前の昭和49年に札幌市で開催された交通安全道民大会において「交通安全指導員の全道組織を設置して交流を深めてはどうか。」という提言があり、この年、第1回の交流会が函館市で開催され、昭和50年に第2回を苫小牧市、昭和51年には第3回を旭川市、昭和52年に網走市で第4回の交流会が開催され、昭和53年10月に釧路市において、北海道都市交通安全指導員連絡協議会総会を開催し、規約を決定するとともに、役員を選任し正式に設立されました。 
 昭和54年5月には、それまでの都市のみの加盟で発足したものを町村をも含めた全道ぐるみの組織とし、発足当初23市が加盟してスタートしたこの協議会も平成28年12月1日現在、178市町村と市町村合併による旧市町村の8地区186市町村指導員会等で、約5,300人の会員を擁することになりました。
 初代会長の旭川の伊藤さんに1期務めていただきまして、次に、ここにいらっしゃる交通に大変熱心な函館の西岡顧問に10年務めていただき、その後私の先輩の中西さんが会長を受けて、途中で体を悪くしたので降りまして、次に矢野さんに会長を受けていただきました。発足して以来、時代がどんどん変わっていますが、私たち指導員だけでは交通整理ができないということで、やはり、警察当局と連携をとりながら、警察の補助という立場でお手伝いをしたいと考えております。
 今、一番困っているのは、指導員になってくれる方がいないことです。そして、今、指導員になっている方も、ほとんどが高齢者になっております。そんな関係で、私が一番心配しているのは、高齢者の事故がどんどん増えていますが、交通関係の指導員たる者が交通事故に遭うことです。私は、ブロック会議等の席上で、まず、交通事故のないように、自分から進んで道路に出ることはやめていただきたいという話をしております。
 夜光反射材にしても、ただ、これをやりなさいと言うのではなくて、自ら付けてみせる、それから、今、問題になっている高齢者の事故をなくすために、やはりお年寄りには免許を返納していただきたいのです。私の身近でも家族、子どもたちが、おじいちゃん、おばあちゃん、もう免許を返したらいいのではないかと言うけれども、ほとんど言うことを聞いてくれないというのです。その中には、高齢者だけの生活などの理由があるわけです。
 私も免許を返しました。今年1月に車も手放し、2月には免許も返しました。自発的に返す人は少ないそうです。警察の方もそうだと思うのですが、各交通の団体の人たちにPRしていただきたいのは、買い物をするのに車がなかったら行けないという現状がありますから、運転を止めろではなくて、子どもなり家族の者が1週間に一遍は買い物に連れていくよ、こうしてあげますよということも踏まえて話をしていけばいいのではなかろうかと私は考えるわけであります。
  以上で、紹介を終わらせていただきます。
○萩原コーディネーター それでは、発足当初からこの会を指導されている西岡様、お話を伺いたいと思います。
○西岡 函館から参りました西岡です。
 交通安全運動にかかわったのは昭和36年ごろで、交通戦争という標語が盛んに使われたころからです。縁がなかなか切れなくて今日もまだ続けているわけであります。
 きっかけというのは、当時、函館自動車運転者協会といって、ドライバーの交通安全が非常に叫ばれ、それに対する関係機関からの指導がございました。その団体に頭を突っ込ませていただいて、かかわり始めてからやめる機会を失っておりまして、今日まで来ているわけであります。
 私ども函館市には、交通安全ためのボランティアとして活動している指導員の仲間が130名ほどおります。この方々は、今も腰を曲げながらやっております。これからも、各担当あるいは関係機関、行政の足手まといにならないように進めてまいろうと考えているところであります。
 以上でございます。
○萩原コーディネーター それでは、小玉様、お願いいたします。
○小玉 それでは、私からは、道の交通安全行政のお話をします。
 40年と非常に長い期間でございますが、この間、指導員の皆様方におかれましては、歩行者、自転車利用者に対するご指導など、地域における交通安全活動に真摯に取り組まれ、交通事故防止に大きな成果を上げられてきております。近年は、飲酒運転根絶見回り隊といたしまして、飲酒運転根絶の先頭に立って取り組むなど、北海道の交通安全行政にご協力いただいていることを、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 来年で40年ということでございますが、北海道交通安全指導員連絡協議会が都市交通安全指導員連絡協議会として発足したのが昭和53年と伺いました。私が高校を卒業した年でございます。そのころは、高度経済成長もやや安定的なものになりましたけれども、オイルショックの後でございましたし、バブル景気を控えている中で、社会構造も変革していました。ただ、私もそうでしたけれども、皆さん、マイカーを持って遠出をするのが憧れでございましたし、交通事故への安全対策というのはますます重要になっていった時代であったかなと思います。
 発足の6年前にはオリンピックが開催され、その少し前には定山渓鉄道が廃止されました。それから、道央道や札樽道、札幌市営地下鉄も開通しまして、交通体系も非常に大きく変化した時期だったことを思い起こしております。そして、誰もが当たり前のように免許を取得して保有台数がうなぎ登りに増えていく一方で、道路もどんどん舗装されてドライブしやすくなった時代だったかと思います。それに伴いまして、スピードの出し過ぎによる死亡事故も増えて、交通安全に取り組む行政としても課題対応が非常に多面的になっていった時代だと思っております。
 事故の死者数を振り返ってみますと、昭和45年には全国ワースト1でございます882人でした。次の年の46年には889人で、これが最多でございました。それ以来、北海道は、政策テーマとして全国ワースト1返上を旗印に頑張ってきたところでございます。
 それから、いろいろな関係機関・団体の皆様にご協力いただきまして、スピードダウン運動や車両の早目の点灯運動、シートベルトの着用運動、その時代の交通を取り巻く環境の変化などに応じた様々な活動に取り組んできておりまして、最近の取組といたしましては飲酒運転根絶、その見回りということでご尽力をいただいているところであります。
 また、年間スローガンというのをつくっておりまして、この10年間を振り返ってみますと、平成19年ごろは「ストップ・ザ・交通事故死~めざせ安全で安心な車社会北海道~」でございました。その後、2年ほどたちまして、「ストップ・ザ・交通事故死~めざせ安全で安心な北海道」と車社会から北海道の安全・安心という目標にさせていただいております。4年前の平成25年からは「ストップ・ザ・交通事故~めざせ安全で安心な北海道」と交通事故死よりも交通事故そのものを減らす道民運動として取り組んでおります。
 それから、重点項目もいろいろと変わってきておりまして、10年ほど前はスピードダウン、高齢者の事故防止、シートベルト・チャイルドシートの正しい着用の徹底、飲酒運転の追放といった項目でしたが、平成23年からは高齢者事故防止、シートベルト全席着用、自転車走行マナーアップ、スピードダウン、デイ・ライト実践、飲酒運転根絶、居眠り運転防止の七つの項目でキャンペーンを行っております。
 こうした施策に取り組みまして、第8次北海道交通安全計画(平成18~22年)では死者数260人以下を目標として掲げ、平成20年には交通事故死者数は228人でございましたから、おかげさまで最終年より2年早く達成しております。
 それから、平成23年からは第9次北海道交通安全計画(平成23~27年)を5カ年計画で立てさせていただいて、死者数175人以下を目標にして取り組んだ結果、平成26年に169人に抑えて、目標年を1年早く達成しております。しかし、残念ながら、平成27年は177人と一旦増えておりますので、目標を達成することはできませんでした。
 現在、平成28年からの第10次北海道交通安全計画(平成28~32年)では、もちろん1人も出さないことが大事でございますが、死者数を着実に抑えていくという意味で、150人以下を目標として交通安全に取り組んでおります。残念ながら、その初年度には達成に至りませんでしたが、昭和25年以降、最も少ない158人まで減らすことができ、目標達成までもう一歩のところまで来ている状況にあります。
 先ほど全国ワースト1返上というスローガンを掲げていたというお話をしましたが、その後は全国ワースト1にならないぞということで頑張っております。ただ、平成29年に入り、6月以降、死亡事故が多発しており、7月には磯部交通部長と連名で死亡事故の抑止を呼びかける緊急のお願いの通知も発出しております。
 また、飲酒運転を伴う交通事故についても、発生件数、死者数ともに減少しておりますが、3月、4月に札幌市内で飲酒運転による逮捕事案が連続して発生したことから、飲酒運転根絶緊急対策を講じるなど、依然として根絶には至っておりません。さらに例年秋から年末に向け、飲酒運転の重大事故が多発する傾向にございますので、我々はこれまで以上に厳しく取り組んでいかなければいけないと認識しております。
 創立40周年を迎える平成30年は、北海道と命名されてから150年という節目に当たる年です。この節目の年に第10次北海道交通安全計画の目標である死者数150人以下に抑えるということを達成すべく、道交指連の皆様に引き続き大きなお力添えをいただきながら、交通事故、飲酒運転のない安全で安心な北海道の実現に向けて尽力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○萩原コーディネーター それでは、磯部様、お願いいたします。
○磯部 北海道警察本部交通部長の磯部でございます。
 本年3月末で交通部長を拝命しております。前任は苫小牧警察署長を2年務めさせていただきました。苫小牧も交通死亡事故が多く、私の在任中の2年間は全道ワースト1ということで、大変厳しい情勢の中で交通行政を推進してきたところであります。
 後で各論的な話になるかと思いますので、今は総論的にご挨拶をさせていただきます。
 北海道交通安全指導員連絡協議会が来年、創立40年を迎えるということで、心よりお祝いを申し上げますとともに、本日、本座談会にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。
 また、渡邉会長をはじめ、会員の皆様には、平素から警察行政の各般わたりまして、ご理解とご協力を賜っておりますことに、心から感謝を申し上げます。
 交通安全指導員の皆様におかれましても、それぞれの地域で児童や生徒の安全確保のため、交差点、通学路における交通指導や交通安全運動での街頭啓発活動など、地域における交通安全運動のリーダーとして、様々な活動にご尽力をいただいておりますことに深く敬意を表する次第でございます。
 交通事故死者数につきましては、先程、お話に出ておりましたが、全国的にも年間1万人を超えた交通戦争と称された時期もありましたし、道内においても、昭和46年のピーク時に889人もの尊い命が交通事故の犠牲となっておりました。
 その後、増減を繰り返した時期もありましたが、昨年の死者数は158人とピーク時の5分の1以下まで減少するに至ったところであります。これも貴協議会が昭和53年に発足されまして、会員の皆様方の先輩の代から、雨の日も風の日も交通安全のために献身的に啓発活動に取り組む強い精神が受け継がれてきた結果にほかなりません。本当に頭の下がる思いでございます。
 しかしながら、いまだ多くの尊い命が交通事故で失われていることには変わりありません。近年では、高齢者人口の増加のほか、シートベルトの着用率の頭打ちや、飲酒運転による交通事故件数の下げ止まりといったものを背景に、交通事故死者数の減少幅が縮小する傾向にあります。
 また、交通事故死者数全体に占める高齢者の割合とともに、交通死亡事故件数全体に占める高齢運転者による割合も増加しているなど、交通事故情勢は依然として厳しい情勢にあります。こうした中、本年3月に認知症への対策として改正道路交通法が施行されておりますけれども、今後は高齢運転者対策の推進が喫緊の課題と考えております。
 道警察といたしましても、飲酒運転を始めとする悪質・危険違反の取締りや、高齢者を対象とした街頭での交通安全への声かけ、赤色灯を点灯したパトカーによるレッド警戒活動など、警察官の姿を見せる活動を強力に推進し、交通死亡事故の抑止を図っておりますが、悲惨な交通事故を根絶するためには、警察による取り組みだけでは不十分でありまして、社会一丸となって交通安全対策を推進することが不可欠と考えております。
 道交指連の皆様におかれましても、くれぐれもご自愛をいただきながら、今後とも交通事故から一人でも多くの命を守るために、引き続き地域に密着した交通安全活動の推進にご尽力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
○萩原コーディネーター 一通りご紹介いただきました。
 やはり指導員の方は、地域に密着した交通安全活動が大事になろうかと思います。長くやられているかと思いますが、地域の方は交通安全に対する思いはどうなのでしょうか。
○渡邉 交通安全指導員は、道や警察ではなくて、やはり市町村に熱心にやっていただかなければなりません。以前は指導員会が事務局を持っていたのですが、今はみんな行政が担当しており、その行政が変わってしまうとやる人とやらない人が出てくるわけです。
 私のところも指導員が30名ぐらいいるのですが、滝川の場合は市長に委嘱され、学校の休み、日曜・祭日以外は毎日7カ所に交代で出ておりまして、今現在、交通事故件数はゼロ件となっています。
 それから、話は変わりますが、反射材はほとんどの人が持っているのですが、たんすの肥やしになっているのです。私は、うちの指導員には、「付けなさいではなくて、自分から付けてみせてください」と言っています。私も、靴のほかいろいろなところに反射材を付けています。そうすると、会員も、会長が付けているから付けないわけにはいかないということになります。やはり、そうやって広げていかないとだめです。こういうことですよと実際に自分が付けてみせる。例えば、夜に講習をするときに、こうやって見えるでしょうと見せるとびっくりするのです。
 また、いくつかの市町村に聞いてみると、予算の関係で指導員を委嘱していないところもあるそうです。委嘱したら金がかかるから、できないというのです。シルバー指導員という人も各市町村にいますが、そういう方は無報酬でやっているのです。腕章1枚もらって、何かあったときは交通安全運動のため出ているのです。私たちは、市長から委嘱され、そして、道や地元の行政から幾ばくかの援助をいただいているわけです。
 それから、もう一点、これはぜひ道にお願いしたいのですが、年に1回表彰があります。副知事に出てもらっていますが、できれば、知事に少しでも顔を出していただきたいのです。
○萩原コーディネーター 特に来年は40周年ですからね。
○渡邉 何十年も無事故無違反で協力して街頭に出ており、全道的に交通事故も減っているわけですから、知事にも年に1回ぐらいは顔を出していただきたいと思います。
○萩原コーディネーター 最初の話に出ました反射材ですが、かなりきらきらして結構目立ちますし、つけておくだけなので便利ですよね。夜になると、やはりドライバーは見えないのです。昼の事故と夜の事故は全然違うのです。
○渡邉 靴にも反射材を張っている人もいますが、皆さん踵(かかと)だけなのです。横が肝心なのです。私は、前と横にもつけています。そうすると、右折する車、左折する車から見えるのです。さらに、きょうは長袖の服を着ていますが、半袖のときは腕にも反射材をつけて歩いています。これはすごく効果があります。
 滝川で月に2件の死亡事故が出たときに、私は市長室に呼ばれて、会長、何とか事故を減らす方法はないだろうかと言うから、それを僕ではなくて署長と話をしたらいいのではないかといって、当時の見野警察署長と話をしたそうです。そうしたら、見野さんは松前の警察署長をしていたときに、反射材の効果について教えてくれたそうです。いまだにお年寄りは杖とかバッグにつけています。
○西岡 反射材とスポットライトの効果は、みんな十分わかっているのですけれども、張ると格好悪いので、なかなか張ってくれません。行政としてもう少し声を上げてもらえれば、交通安全に関心を持っている民間団体・組織の人は結構いるわけですから、そういう方々に普及できるのではないかと思います。
 きょうも、渡邉さんの靴を見て褒めたのです。年齢もありますけれども、若い人は恥ずかしいのか、なかなか反射材をつけてくれないです。
○萩原コーディネーター 冬に暗い中で家の前を除雪している人も結構見えないので、長靴とかに張るのはいいですよね。
○西岡 例えば、本官が非番のときは反射材をつけた靴を履かせるとか、何か模範を示さないといけないのかなと思うのですが、難しいですか。
○磯部 今までは、つけてくださいと一方的なものでしたが、先ほど会長が言われたとおり参加型というか、体験の場に来てもらって実際に見てもらって、これは効くと実感すれば広まっていくのかなと思います。効果について、実際によく理解していない方も多いのではないかと思います。先ほど言われた恥ずかしいというのもあるとは思いますが、効果自体も信じていないというか、認識していない方も多いのではないかという感じがします。いろいろな形でそういう場に引っ張り出してつけてもらうと、これはいいものだとわかっていただけると思います。そのような機会を多く作っていけばいいのかなと思います。
○小玉 今、いろいろといいヒントをいただいたのですが、反射材の取組について、どこの協会でも同じことをやれといっても、張り切ってできないのかなと思います。やはり、自分たちが考えたアイデアを実行に移すときに非常に頑張る人たちも出てくるし、地域の特性に応じた取組を広げたほうがどんどんレベルアップしていくような気がします。ですから、これにしても、格好良く、あるいは、面倒くさくないやり方で、地域によって違ってもいいのかなと思います。その地域によっては、ある週間で何かをつける、小学生にはこういうものを配るとか、お年寄りには敬老の日に配るとか、そういうものがあるのなら、そこと組み合わせることによって、抵抗感なく、コストも余りかけずに広げていけます。ただ、道庁が全道179市町村に同じことをやれといっても、余り意欲的にならないと思うのです。自分たちが考えたアイデアを実行するときに、北海道や市町村が応援するスタイルだと、活気づくし、長く続くので、良いのではないかと思いました。
 それから、先ほどシルバー指導員とありましたが、多分それは高齢者の関係で、交通事故に限らない人ですよね。コミュニティーの中で、防犯や消防、青少年育成など、地域の安全・安心を守るいろいろな役職がございますが、恐らく同じ方が帽子を変えながら頑張っておられるのかなと思っています。やっておられる方は結構同じ目線でいろいろな問題もわかっている方が多いと思いますので、なるべく負担を抑えながら、行政が縦割りになっている分、末端の町内会の中にいらっしゃる皆さんから、ここは無駄だよとか、この道路は段差があって危ない、見えなくて事故が起きやすいという助言をしていただくような横のつながりが重要かなと思います。
 ですから、地域の特性に応じたアイデアを具体化することと、地域の中で横断的に課題を結びつけていただくことがこれからすごく大事になってくるのかなと思いました。
○西岡 昔は法規講習なんかがあったりして、交通安全の話をする場がよくありましたよね。今はなかなかありませんから、免許更新時の講習とか、本当に交通安全のためにこうやっているのだよということが聞こえてこなくなりました。意識をもっと高めなければいけないのではないかと思います。
 私のところは、交通安全指導員が約130人います。隔週で定例会議を持たせたり、また、会全体として年に1回か2回集まりますよね。そういう席上においでいただいて、みんなご苦労だけれども、協力してくれというお声がけをしていただいております。
○萩原コーディネーター 事故がすごく減ってきたことはよいのですが、マイナス面として交通事故の注目度が下がったことです。以前は身近に事故が多く、みなさま事故を減らそうと努力されていました。別の会で、まだまだ交通事故を減らさないとだめですと発言したのですが、そのとき、交通事故は一部の違法性のあるドライバーや高齢ドライバーが起こすものだと言われました。それはおかしいですよね。今だって普通のドライバーが普通に事故を起こすことがいっぱいあるわけです。その辺の認識がすごく低くなっています。もっと普通に事故は起きるということを知っていただき、どうすればよいかを考えていただくことが必要と思っています。
○西岡 そういう事例発表を聞く機会を何とか考えなければいけないかなと思います。
○萩原コーディネーター マスコミの関係者もよくないのです。異常なドライバーの事故ばかり毎日繰り返し報道します。あれを見ていると、異常なドライバーでなければ事故は起こさないと逆に思ってしまうのです。
○西岡 それだけ交通安全というのは難しいのですよね。
○萩原コーディネーター 先ほどから話が出ていますが、道と道警は、免許証の返納について、どんなふうにお考えになっているのですか。
○小玉 私は、父親を説得して返させました。やはり、家族も心配ですが、加害者になってしまうことがすごく心配ですから、返納してもらいました。ただ、地方行政全体を見たときに、返した後に地域の中できちんと暮らしていけるのか。移動の弱者になってしまいますので、そこは市町村によって違うかもしれませんが、移動のためのバスの優待、タクシーを使うということもありますし、民間にも買い物のサービスで回っていただけるというようなこともいろいろとセットで、地域ぐるみで環境が整わない中で返せというのはなかなか難しいと思います。そこは地域全体で、返しても住みやすい社会づくりを一緒に考えていかなければいけないのかなと思います。
○渡邉 高齢者が免許を返したくないという一番の原因は買い物です。スーパーがほとんどなくなってきていて、過疎化になってくると買い物に行くのが大変なのです。そんなことを言うのだったら買い物をしてきてくれるのかと始まるのです。子どもは寄りつかないので、結局、高齢者が運転していくことになります。
○萩原コーディネーター でも、買い物に行くのは楽しみですよね。そんなにたくさん買うわけではないけど、行くのが楽しいのですよね。
○渡邉 私も、車の維持費がどの位かかっているか、年間トータルをとってみたのです。2,000ccで、1カ月にしたら燃料代、保険料、税金などで7万円ぐらいかかっていました。今年車を止めて1カ月のハイヤー代を計算してみたら1万2、3千円です。また、ちょっと歩いていこうという気になったり、車を無くした後のことから教えていく、ただ、止めろでは反発してきます。
○小玉 健康とお財布に優しいですね。
○渡邉 車代だけで納まりません。ハイヤーは本当に安いです。だから、事故のことを考えたら、私は娘でも息子でも隣近所にも車を無くして良かったよと言っています。
 何とか自発的に止めるような方向に持っていくよう指導する良い方法はないでしょうか。
○萩原コーディネーター ハイヤーの方が安いというのは、返納を進めるには効果的な体験談と思います。
○磯部 運転免許証の返納者は年間約1万人で、これは増えてきています。返納した理由を聞くと、一番多いのは必要が無くなったからです。これは、今年の道交法改正前からもそうですけれども、この比率は同じです。昔から必要が無くなったというのが9割ぐらいです。3月の改正以降、認知検査が厳しくなったという理由も過去と同じパーセントです。要は、もう必要が無くなったということが出てきていると思います。
 でも、本当に必要が無くなったという人は、それだけのサポートがある人です。さらに、今言った損得勘定をよく理解されていて、タクシーの方が良いとわかればそうなるでしょうし、やはり、必要が無くなったという背景にはきちんとしたものがあります。それがないと返納には結びつかないのかなと懸念します。
 先ほど小玉部長が言われましたが、今年、私も義理の父から車を取り上げたのです。うちの女房がいくら言っても返さない、頑固になって反発するだけでした。一番良かったのは、私が交通部長になったことで、「交通部長に迷惑をかけられない」と言って返したのです。
○小玉 動機づけのアイデアはすばらしいと思います。
○萩原コーディネーター いいですね。
○渡邉 私は街頭に出ても、こうやりなさい、こうしなさいとは言わないで、とにかく街頭に出たら、おはようございますなど言葉をかけてあげる、例えば自転車の方にこうだよと言っても言うことを聞かなかったら、そこでやめなさいと言うのです。それをいつまでもしつこく言うと、口論となってしまいます。
○萩原コーディネーター それはもめますね。
○渡邉 今、自転車は、子どものほうがマナーをちゃんと守っています。小学校のうちから教科に入っていますし、高校生だって中に1人や2人はいるかもしれないけれども、大人のほうが悪いと本当に思っています。
○小玉 高校時代にイエローカードを切られたりしているので、すごく真面目で、後ろに乗せるなんてことは全くしないですよね。
○渡邉 横断歩道で降りる高校生や中学生がいるのです、あんた、真面目だね、偉いねと逆に褒めてやるのです。そういうことがつながっていって、1件でも減っていけばいいなと思います。日本人は、こうやれと言われたらやらないし、やめなさいといったらやるし、そういう習性を持っているから、余り言うのではないということです。
○萩原コーディネーター 褒めてあげるというのはすごいですね。褒めるのはなかなか難しいです。
○小玉 結局、子どもの時代からきちんと教え込むと効果を発揮するのでしょうね。環境教育なんかもそうなのですけれども、上の人のほうが省エネとかごみの問題に対して関心が低いというケースもあるのです。
○西岡 難しいですよね。やはり、本気でやらなければならないということでしょうね。本当にどうすれば安全運動を徹底して行えるのだろうか、こういうことはどうかとお気づきのことがあったらヒントを与えていただきたいのです。我々民間人は、役所の方々ができないことができると思います。
 私は、40年もやってきていますが、まだ悩んでいます。
○萩原コーディネーター 大体、お時間かなと思います。
 皆さんから、楽しいお話、なおかつ、課題となっているお話をいろいろとお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 これらのご意見は紙になるということですが、それだけに留めず、さらにこちらで実行していただくようなこと、また、協議会でも内部でいろいろと検討いただいて、これからこんな課題をやっていったらいいのではないかということにもお使いいただければいいなと思いました。重要な視点もあったかと思っております。
 短い時間でしたが、本日はどうもありがとうございました。
○事務局(加門事務局長) 萩原コーディネーター、どうもありがとうございました。
 小玉部長、磯部部長、貴重なお話をありがとうございました。
 本日の座談会は、これで終了させていただきます。
                         (出席者の敬称略) 


【参考】

Ⅰ  交通安全指導員の沿革
   1   交通安全指導員の発足について
     昭和30年代後半から、自動車が急速に普及するようになり、交通事         故も必然的に増え社会問題となり、交通安全の問題については、警察や         一部の民間だけに頼るだけでなく、総合的な観点から行政がこれに取り         組むべきであるという情勢になりました。
     交通安全指導員は、もともと地域の交通安全協会や運転者協会の会員         など有志が地元の警察署長、市町村長や交通安全協会会長等の委嘱を受         けて、昭和32、3年頃から自主的に活動していましたが、昭和42年         に自治省から、「学童園児の交通事故防止の徹底に関する当面の具体的         対策について」の通達が各都道府県知事あてに出され、この通達では             「通学路等において学童園児の通学通園時に、学童園児の誘導等に当た        る警察官、交通指導員等の配置、これらの者による学童園児の誘導方法        等についてその適正化を図ること」として、交通安全指導員の設置がふ        れられました。
    さらに、同じ年に同省から「地方公共団体における交通安全対策につ          いて」の通達が都道府県知事あてに重ねて発出され、その中に職員によ        る交通指導を行う場合の留意点として、「その職務は学童、幼児等の指        導にとどめ、警察官の行う交通整理とまぎらわしい行動をとることのな        いよう留意すること。主として交通指導に従事する職員を特別に行く場        合においては、非常勤の特別職として登下校(園)時のみの勤務とする        等適切な運用を図ること。」が示されました。

   2  本道の交通安全指導員制度について
   こうした通達等に基づき、北海道における交通安全指導員の行政の制         度的な取り組みは昭和43年からになります。
   当時、北海道の交通事故は年々増える一方で、この事態に対応するた         め、北海道と北海道交通安全推進委員会の連名で、「市町村地域におけ         る交通安全運動特別推進要領」を作成し、市町村段階における交通安全         運動の取り組み方を初めて体系的にまとめ、各市町村に通知しました。
        この要領の中で交通安全指導員に関しては重要な事項として取り上げ         られており、委嘱については、「市町村交通安全推進委員会長の委嘱、         若しくは市町村長の連名委嘱とする。委嘱に当たっては町内会、交通安         全協会、婦人団体、PTA等との推薦によって行い、任期は2年。」、ま              た、報酬については、「原則として無報酬と考えているので、その設置         費に対する助成は考えていない。」とされ、職務について  は、「一般的       歩行者に対して正しい歩行指導をする。幼児、学童および老人等に対し         て安全な通行の保護誘導をすること。自転車の安全な運行を指導するこ         と。交通安全思想の普及に努めること。」等とされた。
         その後、色々と疑問点が出てきたため、翌年昭和44年に補足的な通          知が出され、その職務については、「指導員は歩行者の側に立って歩行        者を守るために街頭指導を行うものであって、警察官の補助員として職        務を行うものではない。」、また、権限については「車両に対する停止        権や指示権等は警察官の権限であって、指導員にこれらの権限はない            が、悪質な運転者に対しては注意を喚起することができる。」とされ、        その他、研修、身分、身分保障など前年に出された通知がさらにきめ細        かな内容のものとなりました。

    3  本道の交通安全指導員の現状について
         北海道の交通安全指導員数は、道交指連が設立された昭和53年末現         在で8,238人でしたが、平成19年12月末では、6,501人、平成29年1       2月1日現在では、5,102人と減少の一途となっています。
     また、交通安全指導員の報酬については、平成19年12月末の調査で      は支給されているのは約90%、無報酬は約10%であったものが、平成      28年12月1日現在で、支給されているのは約60%、無報酬は約4        0%となっており、報酬額は市町村によっては、年額報酬や業務回数に応      じた定額等、まちまちで差が生じている状況にあります。


Ⅱ  道交指連40年の歩み
   1    交通安全指導員会の組織について
    昭和44年に道から各支庁あてに「交通安全(婦人)指導員制度の運          営強化措置について」が通知され、その中で市町村交通安全指導員協議        会の結成促進が触れられ、「指導員相互間の連携の強化、指導方法の研        究協議等のため、指導員をもって組織する指導員協議会を市町村単位に        結成するよう今後さらに促進すること。」とあり、これに基づき各支庁        から市町村に交通安全指導員協議会組織の結成について指導され、今日        の市町村単位の組織設置の根拠になりました。

    2 道交指連の発足と経緯について
    北海道交通安全指導員連絡協議会が設立される前の昭和49年に札幌          市で開催された交通安全道民大会において「交通安全指導員の全道組織       を設置して交流を深めてはどうか。」という提言があり、この年、第1         回の交流会が函館市で開催され、昭和50年に第2回を苫小牧市、昭和         51年には第3回を旭川市、昭和52年に網走市で第4回の交流会が開催       され、昭和53年10月に釧路市において、北海道都市交通安全指導員         連絡協議会総会を開催し、規約を決定するとともに、役員を選任し正式         に設立されました。 
   昭和54年5月には、それまでの都市のみの加盟で発足したものを町         村をも含めた全道ぐるみの組織とし、発足当初23市が加盟してスター         トしたこの協議会も平成29年12月1日現在、178市町村と市町村         合併による旧市町村の8地区で186市町村指導員会等の会員を擁する         ことになりました。

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