僕が「クチコミ」に対して抱く違和感と、その違和感に対処するための仮説
ECサイトや、レストランの予約サイトなど、購買行動を伴うWebサイトやアプリには、おおよそ決まって「クチコミ」が存在する。
かのGoogle Mapsにさえも、場所に対してクチコミを投稿することができる機能がある。
ただ、僕は「クチコミ」を投稿させる、掲載するという手段が当たり前になっていることに以前から違和感を抱いている。今日はその違和感を言語化してみたい。
もちろん、食べログやRetty、それこそAmazonなど、クチコミを掲載していることを大きな特長としてスケールしたサービスもあるから、クチコミという仕組み自体は尊重した上で、現行のサービスで散見されるクチコミへの違和感を列挙し、それぞれへの対応策を述べていく。
本記事を契機に、もはや当たり前となっているクチコミ掲載について、再考し、よりブラッシュアップするサービスが増えると幸いであるし、僕自身もそのように心がけて開発をしていきたいと思う。
違和感① 評価者と自分の状況が合っているとは限らない
たとえば歯医者を探していて歯医者のクチコミを見たとき、「痛かったです。★1とします」と書いてあったとする。
大半のクチコミ機能は、その人がどういう状況でそのサービスを利用したり商品を購入したのかを明確に記載しなさいとは決めていない。たとえばGoogle Mapsは、★がいくつかと、フリーテキストでコメントを残すことしか書かれていない。
上記の例だと歯医者での治療は痛かったとコメントした人は、そもそも虫歯だったのか?親知らずを抜いたのか?といった症状がわからないし、その症状に対してどのような治療が提案されたかなどもわからない。
だから、「痛かった」のが誰に対してもどんな症状に対しても痛いような医者なのか、ということが読み取れない。または、今回自分が歯医者にかかろうとしている症状について対応が適切な医者なのかがわからない。
他にも家電のクチコミにも言える。「このパソコンを買ったのですが重いです。★1」と書かれていても、どのような用途でパソコンを使ったのか、がわからないし、そもそもそれまでの人生でどんなパソコンに触れてきたかが、あるパソコンを重いと感じるかどうかに影響するだろうから、このコメントでは読者がパソコンを重いと判断することは難しい。
もっとも、主観的な意見を表現できるのがクチコミの大きなメリットであるから、この場合は「重い」が曖昧であるという課題に向き合うのではなく、やはり、何をやろうとして重たいと言える状況になったのか、というコンテキストを掲載することが重要であろう。
違和感への解決策①
クチコミ投稿者が、評価の対象としている製品やサービスをどのような状況(目的)で利用したのかを明記する。投稿フォームで工夫してもいいし、投稿者の許諾の上、サービス上に保存されているデータを適宜クチコミとともに並べて掲載してもよい
違和感② クチコミ以前にユーザーの知識レベルを上げるのが先では?
この違和感は特に、家電製品など、【ユーザーが義務教育や日常生活で特段必要としない】が、【その気になれば多少学ぶことはできる】知識を持っていれば【より良い選択が可能になる】商品に該当する違和感である。
具体的に説明しよう。
デジタルカメラを購入するとき、画素数やISO感度、シャッタースピード優先オートモードなど、日常生活で特段必要としないが、購入する際の製品比較には必要となる知識が出てくる。
しかし、いちユーザーとしては普段学業や仕事に勤しむ中でオタクでもない限りデジタルカメラの勉強をする暇は無いし、なんだか難しそうだなあ、と思ったまま購入に進む人がマスだろう。
ここで僕が抱いたのは、製品について詳しい知識も無いのに、クチコミを参考にして決断できるというのは、無理があるのではないかという違和感だ。
クチコミが参考になるということは、前提として、知識レベルがほとんど同じであればあるほど望ましいはず。だから食べログはワークしたという側面もあると僕は分析する。単価数千円のレストランを選ぶのに専門知識は特に不要だからだ。
これが、単価2万円以上の高級和牛専門店に特化したクチコミサービスであれば、ちょっと毛色が変わってくるはずだ。そもそも和牛に関する知識をユーザーが高めていかないと店の違いも、クチコミを読んで理解することも難しいだろう。
ということで、冒頭に示した条件を満たす製品・サービスを扱う場合は、クチコミを掲載する以前に、ユーザーが購買行動を起こすにあたって必要な知識のサポートをコンテンツの提供などで価値提供することが望ましい。
Amazon等のプラットフォーム型ビジネスの場合はそこのサポートに手が回らないと言える分、特定分野に特化したD2Cサービスなどはユーザーの知識レベルに寄り添っていく工夫にコストを投下しても良いはずだ。
※医学知識などは逆にコンテンツの提供程度で収まる話でもないため【その気になれば多少学ぶことはできる】と記載させていただいた
違和感への解決策②
第三者評価の提供を行う前に、そもそも自社サービスがユーザーの知識レベルに合っているかを見直す。
コンバージョンまでのフロー、サイト内に専門用語が散りばめられていないか、ユーザーが比較する基準は明確か、ユーザー自身で比較検討しやすくなっているか、などを見直す。
違和感③ 利害関係のあるステークホルダへのクチコミ掲載は運営側へのリスクになるため中立性を欠く
たとえばホテルの予約サイトの場合、特定のホテルに悪い評価をするクチコミが殺到した場合、サイト運営会社としては、そのホテルとの関係値を保つのが大変そう。と感じる。
もちろんクチコミを勝手に消すことを運営会社が簡単にできるとは思えないのだが、とはいえ、クチコミを消してほしいとクライアントとなるホテルから連絡が来る可能性もある。
ということは、クライアントと密な関係性を築いている運営会社の場合、悪い評価のクチコミを書かれる可能性はどの程度あるのか、書かれた場合どのように対処するのか考えておくに越したことはない。
よくあるのは、クチコミを書かれた会社がコメントを返信できる機能である。App Storeから配信されているアプリへの酷評コメントに、運営会社から丁寧な返信がついていると、ああ、このコメントをした人がちょっと過激だっただけなんだな、などと思ってしまうフシは確かにある。
もちろんこの機能にもデメリットはあって、返信が間に合っている会社とそうでない会社が生まれるはずなので、営業やサポートのコストが増大するだろうが、そのデメリットを差し置いても、クチコミ自体はユーザーとクライアントがやり取りできる体に落ち着かせておけば、運営会社が介入するのではという不信感も多少は打ち消せるし、悪くない方法だと考えている。
違和感への解決策③
酷評するクチコミが殺到するリスクを検討する。
リスクがある場合、クチコミにはクチコミされた相手が返信できるようにして、運営会社が介入しなくても済むように。
クチコミはそもそも不要?
僕がクチコミに対して抱いている違和感を3つ挙げ、それぞれに対して思いついた解決策を列挙してみた。
いちおうクチコミを養護する内容にしているが、根本的には、僕は、クチコミは要らない世界になってほしいと思っている。
サービス提供者の視点で見れば
クチコミを載せることで、違和感②で載せたようにそもそもサービスそのもので提供するべきコンテンツが不足していることを誤魔化せてしまうため、サービス全体の価値の低下につながる
というデメリットが有ると思っていて、
ユーザーにクチコミを見せる意味という視点で言えば、
今のご時世、薄い繋がりがSNSで大きく広がる世の中においては、SNS経由でクチコミを収集できる可能性が高く、わざわざ自社サービス上でクチコミを収集することによる価値提供が小さいのではないか、ということ、
そして、あらゆる購買行動は最後は自分の意志で決めるべきであって、クチコミによって流されてしまう、製品を比較する軸がぶれてしまうことがむしろマイナスなのではないか
というデメリットが有ると考える。
ユーザーが適切な知識量を提供された上で、適切な比較検討の軸を各自見つけることができて、その上で必要十分な情報を提供するサイトやアプリを通して購買するというバランスを実現できれば、後悔のない購買行動は実現できるのではないか。
前半の適切な知識量、適切な比較検討の軸、という点がもちろん難しいのだが、僕個人としてこの課題に興味があって、近頃、人が家電などを買うときにどうすれば適切な知識量、適切な比較検討の軸を見つけられるのだろうかというのを考えたり話題のネタにしている。
何かインサイトが見つかればまたnoteにまとめたい。
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