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"のんのんびより"の世界より

一人の中学生が品川駅の改札前に佇んでいた。いや、佇んでいた、というよりは呆然と立ち竦んでいた、という表現が正しいかもしれない。彼は驚愕と畏敬の視線をもってしばらく行き交う人々の並みを見つめていたが、やがて決意をその表情にうかべ、改札機へと歩んでいった。

「カード残高が 不足 しています。」

自動改札を知らぬ、彼は未だに駅員が手で切符をきる唯一の未開の地、徳島県出身だったのである…。

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(著者近影(ラインスタンプ)です。笑顔が素敵なのが自分、リンク貼り付けときますので良ければどうぞ)

どうも、こんにちは!法学部2年・鷲野良海と申します!

皆さんにご覧いただいた怪文書、これは僕が修学旅行で実際に経験したことであり、クラスメイトの数人も無惨に改札で門前払いを受けておりました。SuicaやPASMOが何かわからないのなら切符を大人しく買えって話ですね。
後から担任に聞いた話なのですが、中には「チャージが不足しています」
という文言のチャージをcharge(馬などの突進)という風に解し、改札口に体当たりをかまし、結果駅員にお説教をいただいた人もいたそうな。

事実、徳島には自動改札がなく、前述のようなことはよく起こることなんです。もっと言うと、電車もございません。単線で汽車が走っているのみです。もちろん本数も少なく、一時間に1、2本。

追加情報ですが、家の庭にはハクビシン、アライグマ、タヌキ、イタチをはじめとしてうり坊、猿、カモシカまで出ます。怖いですね。裏山で子連れ猪に遭った時は病院行きを覚悟しました。
余談ですが、猪にあったときは尻をむけて逃げるのではなく、相手の目を見ながらじりじりと後退し、相当距離が空いたところで脱兎の如く逃走すれば安全らしいですね。逃げ傷に絆創膏を貼ってるときに祖父から聞きました。

ここまで読んで頂いたら、察しのよい方ならこう思うはずです。

「あれ?うちって田舎に住んでるのん?」

そうです。徳島って田舎なんですよね。田舎すぎてなんにもやることがないから、独自の遊びも発達しました。

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(これはうちの庭の木の根っこ、大きい!!)

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(これが近所の渓谷、怖い!!)

独自の遊び1.靴飛ばし

これは皆さんもやったことあるとおもいます。近くの山に登り、じゃんけんで負けた奴の靴を跳ばす。そして見つかるまで帰れない。うちの学校は指定靴だったので皆血眼です。四時にスタートして八時半までかかったこともありました。

独自の遊び2.山田さんゲーム

徳島限定かも知れませんが、同じ名字が兎に角多い。だから、山田さんとか、山本さんとか、適当な名前を決めて、人混みに向かって呼び掛ける。振り向いた人が多ければ勝ち、というものです。
正直迷惑そのものなので、これが許されるのは中学生までですね。読者諸兄はくれぐれも実行なさらないようお願いします。

独自の遊び3.川遊び

インフルエンザが流行っておるとき、この鷲野、またその友人達は馬鹿でしたので風邪を引くことができませんでした。そのため、しんしんの降りしきる雪の中、川泳ぎをしたことがございます。冬の助任川は極寒を極め、足の感覚のなくなった私は足元の岩に気付くことがかなわず、五針縫う怪我を負ったのでした。怖いね。

こんな土人が、東京の大学に行くのです。大変な苦労をいたしました。

苦労その1.乗り換え失敗

徳島の列車は単線で、一時間に2本程度で、車両も基本一つで、自動改札がなく、なによりそもそも汽車です。複数の路線があって、数分に1本あって、自動改札で、なにより電気で動く東京の電車なぞ乗りこなせる訳がありません。
原チャしか乗らない人間をF1マシンに入れるようなもんです。案の定乗り換えミスを連発し、遅刻連打しました。

苦労その2.口座凍結

何故かクレカから金が下ろせなくなりました。バイトしたおちんぎんも生活費も動かせず、文字通り死ぬほど困ってしまった私は、サークルの先輩から金を借りてなんとか糊口をしのぎました。S先輩には頭が上がりません。

苦労その3.口座凍結

何故かクレカから金が下ろせなくなりました。(3ヶ月ぶり二度目)
バイトしたおちんぎんも生活費も動かせず、文字通り死ぬほど困っていた私は、仙台に帰省するクラスメイトに寄生し、口座復活まで居候しました。ごめんね、M君、そしてその御家族。

苦労その4.娯楽が多い

前述のような謎遊びばかりしていたために、東京の娯楽の多さに驚き、どっぷりはまりました。そして案の定、GPA(大学の内申点みたいの)も低空飛行。皆も気を付けようね。

これらの苦労を乗り越え、二回生に上がった鷲野が目にしたものに一同驚愕。「よし、東京に慣れたぞ!」というところで件の疫病が蔓延し始め、実家に帰省せざるを得なくなり、のんのんびよりの生活に逆もどりです。なかなか人生ままなりませんね。

4時に寝て11時に起きる生活から、23時に寝て6時に起きる生活へシフトしました。
申し遅れておりましたが、我が鷲野家は国分山勢見院東海寺という高野派真言宗の寺社であり、毎朝読経をしなければならないんです。クソでございますね。

読経したあともあとで、庭の手入れの為に十キロ位の砂利を運んだり、卒塔婆(そとうぱ・墓とかにたてられてる木の板)をもやす焼却炉を組み立てたりしなきゃなりません。
やっとこさ外出しようとしてもそこは原野!原付きでも転がさにゃコンビニに行くのも一苦労です。
つまらないし、つまらない。
しかし、ここで再発見したこともいくつかありました。

再発見1.三食出てくる

これは、デカイ。独り暮らしでは一日一膳(誤字にあらず)の食事がしっかり出る。安楽な暮らしが約束されます。ことおじまっしぐら

再発見2.自分の時間がもてる

大学の授業やらなにやらで追いたてられるような一回生とうって変わって、娯楽がないぶん、今度は逆に自分の内部に目を向けたりする時間が増えました。バイク免許とっちゃったりしたりね。

再発見3.感謝

地元を歩くと名前も知らない柑橘系の果物をもらいました。文旦というらしいです。別名ボンタン、知らねー。
実家に帰ると訳のわからないくらい上等なお菓子が差し入れされていました。両方実家の仕事を手伝って経を上げていたために、檀家さんからその返礼に頂いたものです。
ボンタンは渋かったし、高そうな和菓子の味はよくわからなかったけれど、なんだか涙が出るほど嬉しかった。

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(デカい卒塔婆。使い道のない画像を供養するのも仏門の道……)

とりとめの無い話になりましたが、実家って結構いいものですね。文字通り実家のような安心感。
私みたいに、東京夢の独り暮らしを追いたてられ、実家にこもらざるを得ない人多いんじゃないですかね。意外とできることがあるもんです。
受験期を駆け抜けた皆さんは一息ついて、去年おたのしみでしたねの皆さんは、ジモトミリョクの再発見!みたいなノリで、このコロナバカンスを楽しんでみては?

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